1938年、カナダの神経生理学者ペンフィールドはてんかん患者の了承を得て、開頭手術を行い、大脳皮質のさまざまな部位に電気的な刺激を与えて、患者がどのような刺激を感じているのかを聞き取りながら調査しました。

これは、脳のどの部分を刺激すると身体のどの部位が動くか(運動野)、そして、どのような感覚を感じるか(体性感覚野)を明らかにした貴重な人体実験です。

現在、このような実験は到底許されるものではありませんが、脳の働きを理解するための、脳治療の発展に直結する重要な基礎的情報として、医学生の教科書にも掲載されています。

手足を動かす領域は頭頂部と側頭部の上部側に存在し、下部側は顔と口の動きを支配していますが、その領域の割合は、ま半々になっています。体性感覚野(中心溝の後側)は全身からの感覚情報(冷、寒、痛、触など) の受け皿になつていますが、支配領域の広さも、運動野とほぼ同じ比率になっています。

脳の表面に描かれた奇妙な顔と手足を持つ絵はホムンクルス(「小さな人間」の意)と呼ばれ、脳が身体を支配する領域の大きさに応じて体の部位を誇張して描いたものです。

ホムンクルスの身体は相当ゆがみ、手指は大きく長く、顔や口も異常に大きく描かれています。とくに、運動野での咀嚼、飲み込み(膝下)、唾液分泌、発声などにかかわる部位の働きと体性感覚野での歯、上下唇、舌、のど、顔、鼻、目などの働きが連動している様子がうかがえます。

そして、これらの占める割合が運動野や体性感覚野のほぼ2分の1程度にもなり、噛むという行為が脳に与えている影響の多大さを示唆しています。さて、脳の血液量は、全体的に増えるのではなく、手が動くときには脳の手の領域で、足が動くときには脳の足を動かす領域で増えていきます。

口と関係する脳の部位は広いので、口を動かすと、効率よく脳の血流をよくすることができるといえます。つまりよく噛んで口を動かすだけで、脳の血流が増え、脳は活発に働き出すのです。口というのは、髪の毛がl本人ってきても感じるくらいに非常に敏感な器官で、岨喝して食物を飲み込むだけでなく、味を感知したり、舌や唇を動かしてしゃべったり、表情をつくつたり、実にさまざまな働きをします。

体性感覚野における口の占める割合が非常に大きいのは、人力される情報量が他の感覚器に比べて格段に多いからであるといえるでしょう。

「食べること=脳を活性化すること」なのです。歩くのが嫌い、車の送り迎えが好き、鉛筆も自分で削れない、体を動かすのが苦手( 体育が不得意)、コンビニエンスストアやファミリーレストランでやわらかくおいしいものを好んで食べる、いつでもどこでも間食する、そして肥満傾向がある、そんな児童は脳神経細胞の発達に不利な生活習慣が身についていると断言できます。

また、一度食べたものは味も舌ざわりも覚えているように、噛むことは記憶とも大いに結びついています。

たとえば、高齢の入院患者が口からものを食べられなくなつたとき、鼻から管を通して栄養を与える経管栄養や点滴に替えたとたん、認知症(痴呆症)になりやすいことは、噛むことと脳の働きのつながりが非常に強いということを示しています。

そこで、さらに一歩進めて私たちの研究グループが着眼したのが脳と岨噂の関係で、とりわけ脳の中でも記憶をつかさどる海馬という部位と岨噂の関係でした。

脳と岨噂の密接な関係を見出すことができれば、岨噂という刺激によって、脳の神経細胞を刺激して活性化させ、認知症を防ぐことができるのではないか、そう仮説を立てたのです。もし、日常、誰もが行っている「噛む」という行為によってそれが可能になれば、初期の認知症患者や予備軍にとって大きな福音となります。

人類が誕生してから400万年といわれていますが、それ以前、人類が人類になるずっと以前から、「嚙む」という行為は行われてきました。地球上の動物は、例外なく何かを食べなければ自分の生命を維持できません。

つまり、噛むことは、人類の生きるための本能として、悠久の時問の流れの中で、しっかり体の遺伝子に組み込まれています。

サルからヒトへの進化にも長い過程があります。その問には多くの環境変化がありましたが、食生活が脳の重量を400g 前後から1400g へと変化させたのです。人類の祖先としてルーシーという名前がつけられた350万年前の女性の猿人は、身長110cm、体重27kg、脳の重さ400gでした。

猿人は食物を牙で引き裂いて食べていましたが、その後、道具をつくり、火を使えるようになった原人は、火で焼いて細かく噛み砕いて食べるようになりました。

原人の脳は前頭葉がそそり立ち、猿人の2倍以上の1000~1200gになりました。さらに、器用に進化した手足を使ってさまざまな道具や調理法も編み出し、あごの微妙な動きと、舌と鼻からの味と匂いの情報を大量に脳に送り込むようになつたことにより、牙を食物をすり潰すことのできる歯に変化させ、現代人の1400g の脳への発達に拍車をかけました。

以上のように、進化の過程で「噛む」ことが脳の重さを増やしていった、ということです。

『高齢社会自書』によると、今から16年前の2003年10月1日には、65歳以上の高齢者人口は2431万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)は19.0% でした。

2050年には、35.7% (3人に1人) になるとの予測。いよいよ「超」高齢社会に突入しますが、同じ長生きをするなら、病身で生き永らえるより、健康で豊かな高齢期を迎えたいものです。

そのために今、求められているのは、自分自身の生活習慣の改善ではないでしょうか。そして、それは、誰にでも今すぐ実行できることです。そして健康で丈夫な老後を迎えるためにとても大切なことなのです。

生活習慣を見直すにあたり、まず考えたいのが食事。どれだけ楽しく食事をしているか、食べる量は適量か、この2点が健康のバロメーターになります。無理をせず、年齢に応じた自分なりの生活リズムを守る。そして、栄養バランスがとれた「おいしい」と思える食事を選んで、楽しみながら、よく噛んで食べているなら、あなたは最高の健康法を獲得している達人といえるでしょう。

人問は誰しも、加齢とともに「食べる機能」も徐々に衰えてくることは避けられません。高齢になるにつれて、

  1. 歯が悪くなり、うまく噛めなくなる
  2. ご飯よりお粥、やゎらかいものを食べたい
  3. 味を感じにくくなる(とくに塩味、甘味)
  4. 唾液の分泌が少なく食べにくくなる
  5. どに食物が残った感じがする

などの変化は、いずれも自然な老化過程の初期症状です。しかも、噛まないようになると、いっそう急速に老化が進み、認知症(痴呆症) へと至る可能性も高くなります。ですから、このような症状に気がついたときが老化防止のチャンスです。

早めに専門医や関連する専門家と相談しながら、これらの症状の改善に気を配ることが賢明です。神様が教えてくれる「初老の兆し」を放置することが「老化と病気の始まり」になります。

また、高齢期における孤独感や疎外感、生きがいの喪失などは、食欲低下の原因になり、食欲低下は筋力、気力の衰えへと進み、さらに食べることが困難な状態になるという悪循環に陥ってしまいます。

さて、「食べる機能」はすべて脳で統合されています。口は手や足と同様に、大脳を前後に分けている中心溝のすぐ前にある大脳皮質運動野の指令によって動かされています。

そして、中心姓溝の後ろにある体性感覚野が触覚、圧覚、痛覚などの感覚をつかさどり、さらに、食物を目で見て、匂いを喚いで、味を調べて、食べてもよいかどうかを判断します。

そして、食事を介した楽しい思い出や、おふくろの味を懐かしむ人問らしい情緒感、また政治や歴史、人生観についての議論などの高次精神機能も含め、このように口は、実に多くの脳神経細胞と連動する脳神経ネットワークを形成しているのです。

だからこそ、老化に気づいたら、「食べる機能」、とくに「噛むこと」を介して、自分の脳の働きに「喝」を入れることが必要です。肉、魚、野菜などの食物の持つ栄養といぅ面ももちろん大切ですが、食物が持つ固有の「歯ごたえ」や「噛みごたえ」を堪能(脳に入力) することが脳の活性化、すなわち老化や認知症の防止、記憶力の強化に不可欠であることが、科学的に証明されてきました。

若々しい活性化した脳の健康を取り戻すために極めて効果的な手法が「よく噛んで食べる」ことである、そういっても過言ではないのです。

て、みなさんは、食物はいつでも人間の味方だと思っていませんか? 残念ながら、どんな食物でも、人間にとっては基本的に「有害物質」なのです。

たとえば、牛乳はバランスのとれた栄養食品です。しかし、十数年前の不幸な症例ですが、牛乳を直接、静脈注射された患者さんの死亡事故が起きました。

牛乳に限らず、肉、魚などはいずれも大切な栄養源ですが、どんな食物でも人の体に直接侵入した場合、本来、人問の体に存在しない物質ですから、「異物」(人体にない物質) と判定されます。

すると、病原菌やスギ花粉が体内に侵入したときと同様に、異物の有害作用を消去する免疫反応が起こります。

しかし、免疫反応はいつも人の味方として、体を守ってくれるとは限りません。逆に、新しい病変の原因になる場合があります。これが不都合な過敏反応またはアレルギーと呼ばれる一連の病気で、

ときには命にかかわる重篤な症状を起こします。カニ、エビ、青身の魚などは、胃の調子が悪いときには、人によってはじんましんやアレルギー、アトピー性皮膚炎などの原因になります。

ここで、口から食べた食物が胃腸で消化・吸収される仕組みをみてみましょう。まず、口から入ってきた食物をよく噛んで細かくします。細かく噛み砕かれた食物は唾液という体液に包み込まれることによって、それぞれの食品が持つ特有の刺激性が和らげられます。

たとえば、塩味の濃いおかず(塩辛、つくだ煮など) もよく噛んで唾液と混ぜられることによって、口腔、喉頭、食道、胃の粘膜への過剰な刺激が和らげられるのです。

阻曝された食物は、すべてそのまま食道を通過して胃に入ります。すると、胃粘膜細胞から大量の胃液(1日平均2~3リットル)。

強酸性の胃酸や消化酵素などが含まれる) が分泌され、肉や魚などのタンパク質は低分子のペプチド(少数のアミノ酸が連結したもの)に分解されます。これら分解作用によって、食物は、体内においてほとんど異物として反応しなくなります。さらに、十二指腸や小腸上部、膵臓からの分解酵素によって、ペプチドはアミノ酸にまで分解されます。

この状態にまでなれば、血液中に吸収されても、安全な栄養素として自分の体づくりに使えるのです。一方、ご飯やパンに含まれるデンプンは、タンパク質の100 倍以上の大きな分子かなりますが、胃ではほとんど分解されません。

唾液や階肝臓から分泌されるデンプン分解酵素であるアミラーゼで分解されて小さな分子のブドウ糖となり、小腸から血液中に吸収されます。このように、食物を食べるという行為、さらには胃や腸での消化作用が、「有害な食物″」を「有益な栄養源」に変身させ、人間の免疫機能を守る重要なプロセスであるということがおわかりいただけたと思います。

あなたはよく噛んで食べていますか? 「あまりにおいしかったから」とか、「忙しいから」「時間に遅れそう」などの「いつもの癖」であまり噛まずに食べてしまってはいませんか?

ダンプカーから砂利やゴミを落とすかのように、食物を噛まないで胃に流し込んでいませんか?よく噛まないで飲み込まれた食物は、当然のことながら消化するのに時間がかかります。

すると、強い酸性作用を持つ胃液は食物を分解している問中、自分自身の胃壁にも負担をかけます。

これが胃弱や胃腸炎などの消化器疾患を引き起こす誘因となり、胃腸の働きを弱めてしまいます。よく噛むことは、食物を効果的に消化すると同時に、自分の「胃を守る」有効な方法なのです。

最近の若者は身長・体重こそ増え、見た目の体格はよくなっていますが、視力は衰えてきています。

平成15(2003)年度「学校保健統計調査」(文部科学省) によれば、裸眼視力1.0未満の割合は、小学生、25.6%、中学生47.8%、高校生60.0%。また、視力矯正が必要とされる「0.3未満の人」の割合も、年齢が進むにつれて急上昇していることが明らかになりました。

これについては、ここ数年、視力を調節する筋肉の問題、眼球が収まっている眼窩の骨の形の問題などからアプローチされており、両方が作用して、視力の低下を招いているのだと考えられています。

噛むことと視力の関係性は、一見、無関係なようですが、実は密接な関係があります。視力の低下はよく噛むことによって向上させることができる可能性が高いのです。

眼球のレンズである水晶体は、見る対象と眼との距離に合わせ、薄くなったりふくらんだりして、ピントを合わせます。そのピント合わせに大きな役割を果たしているのが毛様体筋という筋肉です。

水晶体は、毛様体筋の働きによって変形します。遠くを見るときは毛様体筋が緊張して水晶体は薄くなり、近くのものを見るときは毛様体筋が弛緩して水晶体は厚くなります。

噛むことと視力の関係について、この毛様体筋からアプローチしているのは、神戸山手大学の島田彰夫教授です。

子どもたちは噛まなくなっている、噛まないと顔の筋肉が衰える、すると水晶体が調節機能不全を引き起こす、その結果、視力が低下する、と島田教授は考えました。毛様体筋が、噛まないことで衰えているというのです。言い換えれば、噛むことで顔の筋肉が鍛えられ、水晶体の調節機能が高まり視力がよくなる可能性が高いというのです。

もう1つ、東京大学の比較人類学の遠藤万里先生のグループによる注目すべき研究があります。遠藤先生のグループは、よく噛んでいる人と噛まない人では眼窩の形が変わることに注目しています。

頭蓋骨の中で、眼球がすっぽり収まる穴が眼窩、眼窩の下の部分は上顎骨で、上は前頭骨や側頭骨など多くの骨でつくられています。

よく噛むか噛まないかで、これらの骨の形が変化し、眼窩の形が変われば、視力にも悪影響を及ぼすわけです。

さらに、京都大学再生医科学研究所の堤定美教授は、噛む力が弱くなると、あごの張り(「エラ」) が減少し、小さなあごになることを証明しました。

実際、最近の若者のあごは華著になり、歯並びが非常に悪くなってきました。しかも、これは下あごだけでなく、当然、上顎骨や頭蓋骨全体の変形にも関係します。すると眼萬の形も変化するので、近眼の原因になる可能性があるとも、堤教授は報告しています。

人間の体は全体が影響しあうひとつのシステムであることが、「噛むこと」と視力の関係にもおいても、顕著に示されています。食物をしっかり噛む習慣をつけて、よく「見える目」を取り戻してください。

噛むことで健廉を取り戻した実在の人物を紹介です。アメリカに住む富裕な時計商人、ホイレス・フレッチャー氏(1840 〜1919年)の話です。

彼は自らの実体験から発見した噛む健康法「フレッチャイズム」で健康を取り戻し、晩年は世界中を回って、この健康法を提唱しました。

彼は、体重が100キロ近くあったにもかかわらず、運動もせず、コックを5人も雇って世界中の美食を堪能するというぜいたくな暮らしをしていました。40歳のころになると、毎日だるいなど、体にさまざまな症状が現れてきましたが、それでもまだ、グルメ三昧を続けていました。

しかし、健康に不安を感じたフレッチャー氏が、ある日精密検査を受けたところ、医師からさまざまな病気になりつつあると指摘されました。そんな彼がある老人から伝授されたのが「噛む健康法」 だったのです。

それは、実にシンプルな2項目だけからなっていました。「本当にお腹が空いたときだけ食事をとる」「よく噛んで食べる」という2つだけだったのです。

フレッチャー氏は半信半疑で、一口で30回、食物がドロドロになるまで噛むことを心がけました。それが効を奏し、なんと5か月で30キロも減量でき、みるみる体力を回復しました。その結果、外で運動することにも意欲がわき、自転車競技に参加するほどになりました。

この噛む健康法は、大学の栄養学の権威者にも証明されて「フレッチャイズム」と名づけられました。フレッチャー氏のケースは学会でも発表され、のちに著書も出版した彼は世界的に有名になりました。

よく噛むこと」で全身の体力がついたり、意欲までわいてくるのはとても不思議なことです。噛むことがエネルギー代謝を促進し、全身の新陳代謝を促進させて、体力を高めているのです。それだけでなく、噛むこと自体が実際のさまざまな運動機能を向上させているのです。

ガムを噛む前としっかりと噛んだあとで体力測定をしてみるという実験を行ったところ、興味深い結果が出ました。背筋や握力などの数値がいずれも上昇するのです。脳の活性化についても同様です、脳中枢による運動ではなく、脊髄で行われている、いわゆる反射運動も大幅に向上します。

しんどいときには、「歯を食いしばってがんばろう」などといいますが、これは単に言葉のうえの話ではありません。実際に歯を食いしばることで、運動機能が向上し、いわゆる火事場の馬鹿力が出るようになるのです。歯を食いしばったほうが、よりがんばれるということです。

日本のアマチュアレスリング界の黄金期を築いた立役者である故・八田一朗氏は、かつて選手たちに割り箸にタオルを巻いたものを噛ませ、自分の持っている力を日ごろから最大限引き出す練習を取り入れたそうです。噛むことで運動機能が向上することを経験的に知っていたのでしょう。

もちろん、私たちはふだんの生活で噛むことにそこまでの効果は期待しないかもしれません。しかし、私は日々の食事を、短距離走の選手がゆっくりと時間をかけてジョギングをし、体つくっていく様子としばしばイメージをダブらせます。つまり、私たちが毎日の食事のときによく噛んで食べるのは、いざというときに全力投球ができるよう準備しているのです。

この「よく噛む」ことによるダイエットは、実際に臨床的にも応用されるようになっています。

糖尿病性肥満症患者の治療に実施している「岨噛法」がそれです。一般に、肥満タイプの人に共通するのは「早食い」、つまり「噛まないで飲み込み食い」をしていることです。単に口の中に食物を入れてから飲み込むまでの時間が短いというだけではありません。箸を動かすスピード、噛むスピード、飲み込むスピードも速いのです。当然、よく噛んで食べることもできません。

このような状態では、神経性ヒスタミンが量産されないため、満腹中枢は刺激されず、余剰エネルギーも消費されないので肥満になる、という悪循環に陥るわけです。

糖尿病と診断され、生活習慣の改善が迫られた場合でも、早食いの習慣を改善するのは至難の業です。いくら私たちが「よく噛むことが大切ですよ」「一口30回噛みましょう」と力説してみても、ふだんから早食いに慣れている患者さんが実際に訓回噛むのは、そう簡単なことではありません。

噛むことの効果を本当に理解してもらい、習慣化するように医療者が誘導することが必要です。その方法の1つが「咀嚼」なのです。

この咀嚼法というのは、食事の際に、1口ごとに30回噛めたら「○」、噛めなかったら「×」というように、1週間分の食事を記録してもらう方法です。

ほとんどの肥満症患者は早食いの傾向にありますから、余裕があって熱心なときには噛みすぎるほどですが、意識が集中できないときには、まったく噛まずに飲み込んでしまいます。咀嚼法導入の当初は、一口で口に含む量を多くするなどの工夫をしますが、もともと食事時問や咀嚼回数そのものが極端に少ないので意識改革からはじめる必要性があるのです。

最初は、「いつものスピードで食べたい」とか「あごが疲れます」といった訴えが多く、記録用紙には「×」が並びます。しかし、徐々に「○」の数が増えてきたことを自分の目で確認できるようになると、意欲的によく噛む習慣を実行するようになります。

すると、「不思議ですね。以前より少ない食事量でお腹がいっぱいになります」という驚きの声が聞かれます。咀嚼習慣が身についた段階では「薄味が好みになりました」とか「油っぼいものを食べたくなくなった」などの変化も生じ、糖尿病の食事療法のうえでも大変有効な連鎖反応が現れます。

また、食前にガムを5~10分間程度嚙んでから食事を開始すると、いっそう良好な結果が得られます。この記録は、糖尿病患者でなくても、ちょっと肥満が気になる高血圧や高脂血症などの生活習慣病予備軍の方にも有効です。

一口30回の岨噛を習慣づけるためにも、食事ごとに一口30回噛めたかどうかを記録してみることをお勧めします。

よく噛んで食べても食べ過ぎてしまったときは、

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「噛む」ことによる筋肉の動きやそれに伴う刺激などの感覚情報は、すべて脳に伝達されます。食物などを噛み始めると、それに伴う感覚情報が、まず歯を骨にくつつけている歯根膜などで捉えられ、脳の三叉神経中脳路核という中枢に人力されます。

すると、隣接する後部視床下部が刺激されて、大量の神経性ヒスタミン(脳内の神経と神経を連絡する化学伝達物質の一つ)という物質の生成が促進されます(。この「神経性ヒスタミン」という物質の生成が、肥満防止のカギです。

  1. 満腹中枢を刺激して、食べすぎを防ぐ この神経性ヒスタミンによって作動する神経回路が満腹中枢(視床下部腹内側核) を活性化することは、多くの研究者によって確認されています。したがって、食物を嚙むという行為そのものが満腹中枢を刺激しますから、よく噛んで食べれば「もう、お腹がいっぱいになった」という感覚が生まれ、食べすぎを防いでくれるのです。しかし、よく噛まない「早食い」をすると、この満腹中枢は作動しません。ですから、ファストフードなどをよく噛まないで腹がふくれるほど食べても、ズボンのベルトを凄めて、さらに食べ続けてしまうのです。やわらかい食物は、よく噛まないでも飲み込むことができますから、とくにこの傾向が顕著になります。「好物は別腹」、「脳がまだ食物を欲しがっている」とか「おいしくてどうにも止まらない」という状態は、明らかに満腹中枢が働いていない証拠なのです。一方、満腹中枢は、別のルートでも活性化します。やはり、噛むという行為により、肝臓や筋肉などに貯蔵されている糖分(グリコーゲン) がグルコースという形で血液中に放出され、血糖値が上がります。この信号が脳に届くと、満腹感をつくり出すさまざまな化学物質が増えて、脳の満腹中枢を活性化し、食べすぎをストップさせてくれるのです。ネコの満腹中枢を破壊する実験をしてみると、満腹感が得られず、食物を食べ続けてしまい、子犬ほどの大きな身体になつてしまいます。「満腹を感じる」ことの大切さを考えて欲しいと思います。
  2. 内臓の脂肪を分解する また、噛むという行為は、体に蓄積されている栄養、とくに体脂肪の分解を促進させ、活動のためのエネルギーに転換することを可能にする「引き金」として、肥満防止に有効であることがわかっています。激辛、アツアツの鍋焼きやラーメンを食べると、誰でも汗ばみます。食物の温かさやトウガラシのカブサイシンなどが体温を上昇させるからです。しかし、冷麺や冷やし中華などを食べても、体が温まる経験をしたことはないでしょうか?実は、どのような食事をしても、よく噛むだけで、酸素消費量が急上昇して、体が温たいねつさんせいまるのです。これを、「食事による体熱産生反応」と呼びます。噛むことによる感覚情報はすべて脳に伝達され、神経性ヒスタミンが量産されることはすでに述べました。この神経性ヒスタミンによって、交感神経の活動を調節している脳中枢が活性化され、全身のエネルギー代謝が促進されます。したがって、冷たいものを食べても酸素消費量が増加し、体温も汗ばむほどに上昇するのですパrト体内の脂肪が燃焼して消費エネルギーが多くなり、体内に蓄積されるエネルギーが少なくなりますから、贅肉が取れてスリムな体に向かうというわけです。ヵナダのケベック大学のダイアモンド教授らは、イヌを使って食事による体熱産生の実験を行い、食後1〜2時間にわたつて、大変興味深い体熱産生の変化を発見しました(。このエネルギー産生には咀嚼をしたことで急上昇する第1相(食後40分以内)と、食物が胃に到達してからゆるやかにエネルギー産生が増加する第2相(食後40分~12 0分) とがあります。とくに、第1相のエネルギー産生は、脳にある満腹中枢を働かせる信号になります。よく噛んで食べれば、体熱産生反応が高くなり、消費エネルギーが多くなります。噛まない、噛めない食事をすると、体熱産生は低く、消費されるエネルギー量が少なくなり、余剰エネルギーが体内に蓄積されて、肥満傾向になります。人間でも同じで、現代っ子の噛まない食べ方は体熱産生が低く、肥満になりやすくなります。また、反対に普通の食事( アツアツでない) のあと、30分程度で体が温まり、タオル、おしぼりで顔を拭きたくなる程度に汗ばんだら、それはしっかり噛んだという証です。

この原理を知っていれば、次のような応用もできます。 たとえば、山で食物を持たないで遭難した場合を想定してみましょう。

このようなと き、動き回りすぎて体力を消耗させないこと、体温の低下を防ぐこと、眠らないことが 大切だとよくいわれます。 そこで、私からのアドバイスです。食物がなくなったら、まず、ベルト、タオル、靴 ひもなど、噛めるものなら何でもいいですから、それを「懸命に噛むこと」です。すると、 「噛む」ことで、体熱産生反応の第1相を作動させ、自分の体内に備蓄している脂肪や 糖質を燃焼させて、体温の低下を防ぐことができるのです。

このような場合、肥満体の 人のほうが、体内に脂肪という「携帯食」をたくさん持ち歩いているのだといえます。 同様の観点から、人間以外の動物に目を向けてみましょう。 胃袋が空っぽの飢えた動物は、獲物を見つけて跳びかかっていきますが、相手に噛み つくことによって、体内に蓄積されている糖質や脂肪を血液中に放出させ、激しい運動 を可能にするエネルギーをつくり出しています。この際に消耗した栄養物質は、相手に勝ち、それを食べることによって補給することができるわけです。

このように、噛むことは、自分で自分の体を食べること、といってもよいかもしれません。最新の研究では、大分医科大学名誉教授の坂田利家民らが、阻噛が脳内のヒスタミン神経系に作用し、これによって体内の内臓脂肪が燃えることを明らかにしています。

神経性ヒスタミンは、重要な生理活性物質(身体の正常な働きを促す物質) として炎症や免疫系の調整などにも影響を及ぼしますが、「噛む」ことによって神経性ヒスタミンが量産されると、満腹信号として働くだけでなく、食事の速度を調整する(がつがつ食べなくなる)ことがわかりました。

さらに、神経性ヒスタミンは交感神経の中枢核に働き、末梢でのエネルギー代謝を促進して、白色脂肪に作用することにより、脂肪を分解してくれることも明らかになつています。白色脂肪というのは、全身にありますが、とくに下腹部、お尻、太もも、背中、腕の上部、内臓の周りなどに多く、体内に入った余分なカロリーを中性脂肪の形で蓄積する働きがあります。体重がそれほど重いわけではないのに、下腹部やお尻などが太っている体型の方は、この部分に白色脂肪が多いことが原因です。

このように、噛むことで量産された神経性ヒスタミンは、食欲抑制、内臓脂肪分解に寄与し、肥満防止に大きな効果があるのです。しっかりよく噛んで食べることは、特別なダイエット法を講じることなく、また特殊な健康器具を使うこともなく、誰もができる一番簡単な究極の健康法であり、究極のダイエット法といえるでしょう。

骨の密度が低下し、ちょっと転んだだけでも骨折してしまうというのでは、健康な生活は望めません。そこで、カルシウムの重要性が見直され、カルシウム入りの食品やサプリメントがちょっとしたブームになっています。

このような風潮を冷静に見ると、現代人の安直さを感じ、残念でなりません。カルシウムが不足して骨が弱くなったのだから、カルシウムを補えばいい... 。確かに小学生でもわかる理屈です。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか。たとえば、寝たきりの高齢者にカルシウムを大量投与すれば、シャキッと立ち上がって歩けるようになるのでしょうか。ことはそう簡単ではありません。いくらカルシウムを摂取しても、骨のほうに「その気」がなければ何の役にも立ちません。骨が「その気になる」とはどういうことでしょうか?

それは、骨がカルシウムを受け入れる態勢をつくつているということです。そのためには、「運動」、つまり骨をつくる細胞に物理的な力(ストレス)が加えられることが必要なのです。昼食を立ち食いそばなどですませ、いくらなんでもこれでは体に悪いだろうと思い、カルシウム飲料やサプリメントで補う。これでは気休めになっているだけです。「しっかり噛んで食べないし 運動もしない」という悪循環を断たないと骨は育ちません。

よく噛んで食べれば、「さあやるぞ」という元気が生まれ、体は動くものです。そして、動いているなかで、骨もその気になってきます。骨にも代謝があり、だいたい90日くらいで半分ほどがつくり替えられます。このくらい激しい代謝をするわけですから、運動で負荷を与え、カルシウムなどをうまくとるようにすれば、骨の密度は高くなり、丈夫な骨になるわけです。

カルシウムが腸で吸収されるためにはビタミンDも必要です。これは小魚などに豊富に含まれています。小魚をしっかり噛んで食べていれば、サプリメントに頼らなくてもすむわけです。また、骨をつくっているのはカルシウムだけではありません。タンパク質やリンも含まれています。

サプリメントの補給で満足してしまうのではなく、おいしい食事を豊富に食べるほうが骨のためにはよいのです。体を動かしていれば食事はおいしくなります。そして、よく噛んで、あれこれの食材をまんべんなくとれば、カルシウムはもちろん、タンパク質やリンなどの骨をつくる成分は十分にとれ、骨粗鬆症も予防できるのです。骨粗鬆症は「予防にまさる治療法なし」とされる病気です。

よく噛んで、おいしく食事をして、体を動かす... 。食生活と生活習慣を見直すことで未然に防ぐことができるのです。そして、将来の骨量の目減りを踏まえ、若いころから十分な量の骨を貯えておくことが最大の予防です。骨の若さを保つため、今から密度の高い骨をたくさんつくっておき、「貯骨」を心がけましょう!

骨粗鬆症に食べたい食品
https://health-memo.com/?s=%E9%AA%A8%E7%B2%97%E9%AC%86%E7%97%87

骨粗鬆症は、これらの食材、食品をよく嚙んで食べることが結局,いちばんの近道だったりするのです。

年齢を重ねるにつれ、人から「老け込みましたね。どこかお悪いのですか? 」とか、逆に「何で、そんなに若々しいの? 」といった何気ない問いかけにギクッとしたり、うれしく思ったりした経験はありませんか?

老化の徽候は誰にも避けられないもので、顔にもはっきり表れてきます。とくに、お年寄りになると、口元がくぼみ、唇を中心として縦敏が放射状に増えてきます。これは「老人しわ性顔貌」と呼ばれ、通称、「皺顔」とか「梅干し顔」ともいわれています。

実は、この皺ができる大きな原因が歯にあるのです? 歯がなくなると、歯を支えていたあごの骨が大量に消失し、皮膚にたるみが生じ、これが黒褐色の皺になるのです。

ですから、お年寄りのあごの骨を守るためにも、バランスがとれた栄養物質やカルシウムをとるだけでなく、よく噛む習慣が大切であり、これらが皺の目立たない若々しい顔を維持する秘訣といえます。

寝たきりの方にも同じことがいえます。介護する場合、手足のストレッチやマッサージと同様に、しっかり「噛む」ことも、せめて歯とあごを守るためにも心がけておきたい重要なポイントです。

また、高齢者の方のなかには、はっきりとした発音がしづらく、言葉がこもりがちになる方がいらっしやいます。しかし、噛むことで、あごの骨がしっかりとし、そのまわりの筋肉がつくと、表情だけでなく、言葉も明瞭になります。

噛む行動と話す行動では使う脳の中枢は異なっているので、噛むことで言葉に関する脳の働きがよくなることまでは期待できませんが、噛んで飲み込むまでの問に、唇、舌、のどを使った複雑な運動が行われるために各部位が鍛えられるので、言葉を発するときも、口のまわりの各器官が動かしやすくなります。だから、「よく噛む」と、はっきりとわかりやすく話すことができるようになるのです。

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