大リーガーや兵士がガムを嚙む理由

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ストレスを上手に回避することは、大切な生活の知恵ですが、ストレスを解消するための最も身近で一般的なものにガムがあります。

プロスポーツの選手たちが試合に臨むとき、口の中でガムを噛んでいる姿をよく目にします。プレーヤーたちは、噛むことによって、緊張感やストレスを解消し、気持ちをリラックスさせているのです。

野茂英雄投手がメジャーリーグに入団して以来、イチロー選手、松井選手と次々に日本の優秀な選手が入団したため、アメリカのメジャーリーグのテレビ中継が一気に増えました。

そこで、選手だけでなく、監督までもガムを噛んでいることに気づかれた方も多いと思います。なぜガムなのでしょうか。四六時中、ガムを噛んでいるのは行儀が悪いように感じるかもしれませんが、実はガムをしっかり噛むことによって、緊張を和らげる化学物質が脳内に増加し、ストレスを抑えてくれることが実験によってわかってきたのです。

ガムチューイングには、運動反射能を高める、筋力を高める、ストレスを抑制する、緊張感を和らげるといった多くの効果があります。

大リーガーたちは、極度の緊張状態を和らげ、ベストの運動能力や知力を発揮させる効果を実感しているので、驚くほど懸命にガムを噛んでいるのです。

さらに、兵士の例も挙げておきましょう。湾岸戦争のときのことです。戦闘に突入する際、ガムを噛んで緊張感を和らげた米軍兵士には、海馬の萎縮(その極度な萎縮は認知症につながるとされています) はほとんど見られなかったのに、噛まなかった兵士には著しく萎縮が認められたという驚くべき事実が発表されました。

これは、まぎれもなくストレスによる神経細胞死の結果です。ぁなたも、勝負をかけたプレゼンテーションの前に緊張したり、仕事がはかどらずイライラしたりしたときには、お試しあれ! ガムを噛めば、きっと緊張を和らげ、ストレスを解消することができます。

人間にとってのストレス | 現代人のストレス
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現代人は4方をストレスに囲まれている

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厚生労働症が20〜60歳代の働く人を対象に行った年「労働者健康状況調査」によれば、全体で80.6% が「強い不安、悩み、ストレスがある」と答えています。

そのうち、男女ともに、他の年齢層と比較し、突出しているのが30〜40成代で、男性の30歳代が紳89.6% 、40歳代が90.3 % 、女性の30歳代が93.4 % 、40歳代が94.3% と多くなっています。

ストレスの内容は、仕事の質や量、適性の問題、職場の人間関係、昇進・昇給の問題、雇用の安定性・会社の将来性が目立ちます。

女性の場合は職場の人間関係が圧倒的にトップになっています。対象年齢や職業の有無を限定しない「国民栄養調査」では、ふだんの生活でストレスを感じている人は、男性で76.9 % 、女性で84.2% という驚異的に高い数字が出ています。

そして、そのようなストレスにさらされているときに、男性の3割以上、女性では5割以上の人が、食事量に明らかな変化があるという回答をしています。

また、国民1人1日当たりの栄養素等の摂取状況では、エネルギー摂取量に占める脂質の割合は、20〜40歳代で成人の適正比率の上限とされる25% 上回り、食塩摂取量では15歳以上の男性、20歳以上の女性が成人の目標摂取量「1日10 g未満」を超えているという深刻な結果が出ています。

不安定な社会情勢や急速な科学技術の進歩、ライフスタイルの変化に対応するために精神的、時問的な負担が増えたり、価値観が多様化して他人とのコミュニケーションが難しくなったために人間関係で悩んだり、家族関係が複雑化して悩みを一人で抱え込んだりするなど、確かに現代社会ではストレスを避けて通ることは至難のワザです。

しかし、今、このようなストレスが原因となって、さまざまな病気を引き起こし、とくに全身の不調が気になるという自律神経バランスが乱れる症状を訴える人が増えています。

最近、脳の中の扁桃体がストレスを不快情報として捉える初期発動の座になっていることが、神経心理学的に明らかになりました。この扁桃体は海馬の近くにあり、人間の感情に関係する中枢だと考えられています。

そして、ストレス刺激に応答した扁桃体の活動が、よく噛むことによって抑制されることも明らかになってきました。

つまり、噛むことによって、受けたストレス刺激を軽減することができるのです。脳科学分野と医用工学分野の専門家と連携して、どのようなしくみでよく「噛む」ことが「心を守る」のかという研究に取り組んでいます。

この研究は、心身的ストレスの解消法や社会的ストレスへの対応策、さらに「心を守る」という観点からの育児、そして教育についての有効な助言など、幅広い分野で活用されることと期待されでいます。

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前頭前野を知り、育み、脳を鍛える

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最近は、複雑な社会構造から自分で自分の感情をコントロールできない「キレる」子どもたちが、そして大人たちまでもが、大きな社会問題となっています。自分でお腹を痛めて生んだ子供に暴力を振るってしまう母親、父親もいるのです。

大人だけでなく、未成年による凶悪事件の増加は深刻です。赤ちゃんが生まれるときの脳の重さは約4000 g。それが1歳で倍の800 g、3歳では、1000gと急速に発達し、成人になるころには約11400 gとなります。

赤ちゃんのときの脳にはおよそ1000億個の神経細胞がありますが、身体の他の部分の細胞と違い、この脳の神経細胞は減ることこそあれ、増えることはないとされています。脳に刺激や情報が入ってくると、神経細胞にシナプスの芽が生えてきます。その芽に向けて他の神経細胞の神経繊維が伸びてきて、神経細胞同士がくつつきます。

「脳の発達」というのはこのように神経細胞同士がくつついてネットワークが広がっていくことです。さまざまな刺激や情報が与えられることによって、脳は発達していくのです。

脳が発達するうえで最も大切なのは、人間らしい行動をとらせるための司令塔である前頭前野の十分な発達です。人間は本能ではなく、前頭前野で考え、計画を立て、判断し、行動します。

キレるのは、この部分が未熟であるからと考えられます。そうならないために、10歳ぐらいまでに視覚、聴覚、触覚、喚覚、味覚の五感を存分に使った体験をさせることが必要です。

五感を介した刺激は情報となって前頭連合野に送られ、組み込まれます。テレビやゲームなどが視覚や聴覚だけを刺激する遊びであることも問題ですが、その遊び場は室内が中心ということも問題です。

実際に手や足を使って遊ばせて、バランスのとれた五感刺激を与えることが重要です。

さて、テレビゲームをしすぎると、人問らしい行動や判断力にかかわっている脳の前頭前野の機能に異変が起こるのに対して、よく噛むことはそれとは逆に前頭前野を活性化することが実験によってわかってきました。

人間の大脳が右脳と左脳とで働きが異なつていることは、すでによく知られているとおりです。右脳は、直感や情緒、総合的な思考や認識に、そして左脳は言語や計算などの論理的、分析的な思考とかかわっているとされています。

正常な歯の噛み合わせ能力を持つ健康な被検者に2分問、ガムを噛んでもらい、脳のどの部分が活性化するか、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調査すると、人間らしい判断力や感性、情緒をつかさどっている右脳の前頭前野が活性化されるという驚異的な事実がわかりました。

右脳の前頭前野の活性化はすべての年齢にわたって見られましたが、とくに高齢者においで、その傾向が一顕著でした。19〜73歳の男性20名、女性12名を被験者として、脳の働きが活性化した強さを平均値として示すと、子どもから大人、高齢者まで、よく噛んで食べるたびに、右脳の前頭前野がよく働きます。

つまり、よく噛むことは直感や情緒に関係する脳を養うことにもつながっているのです。一家だんらんや学校給食などの現場で、親や先生が子どもたちに独自の考え方、理念、倫理観などの話をしながら「しつけ」を行うことは極めて効果的だということは、この実験事実からもうなずけます。

食事とは食物を摂取することだけではなく、よく噛んで右脳の前頭前野が活性化しているときに、両親、先生や友人との会話がなされることで、子どもたちの情緒、優しさ、独創性などの人格が形成される絶好の機会なのです。

これは子どもに限らず、大人、高齢者でもまったく同じであり、食卓を囲む会話を大事にしていただきたいと思います。

「戟後最大の忘れ物」と呼んだ食のしつけの重要性が、この実験によって科学的に裏づけられた格好になりました。

人問らしく働く脳の仕組み

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いつもイライラしている、すぐキレ、食卓や机をたたいて怒る... ... 。職場や友人に、こんな人は思い当たりませんか?意外にすぐ思い浮かぶのが、身内だったりする場合もあるかもしれません

パソコンやテレビゲーム、携帯電話でのゲーム、ゲームセンターなど、ゲーム機の流行は長年にわたってヒートアップし続けています。

世にこれだけゲームがあふれていたら、子どもや若者に限らず、大人でも熱中せずにはいられませんね。しかし、こんな社会現象に、今、危機感をもって警告が発せられています。これらのゲームには瞭発的な判断が必要ですから、日常的にゲームをすることでそういう面は身についていきますが、知、情、意といった人問性にまつわる判断力は、ゲームでは育ちません。

脳神経科学の専門家は、これらのゲームに長時間熱中していると前頭前野(人間でよく発達している脳の前方部分で、脳にl入った情報を総合的に処理・判断している) がうまく機能しなくなり、認知症の人と類似した状態、若年性痴呆という症状になると報告しています。

脳の活動状態は脳波で調べられます。思考などで頭を使っているときはベータ波、安静時にはアルファ波、眠気がさすとシータ波、深い眠りではデルタ波が出現します。

ところが、認知症になると前頭前野の働きが衰え、ベータ波が低下するのです。そしてなんと、ゲームによって、今、前頭前野に認知症と同じような異変が起きているというのです。ゲームを始めると、約1分後にベータ波が減少し、認知症状態になります。

そして、通常はゲームをやめると20〜30秒で元の状態に回復します。しかし、ゲームを常習し続けると、やめた時点でも、認知症と同じような脳波が持続するという衝撃的なデータがあります。正常な場合の脳の活動から行動に至るまでの過程を説明しておきましょう。

たとえば、目の前のかわいい赤ちゃんを抱き上げるまでのプロセスの場合です。まず、赤ちゃんを見たとき、視覚情報は、最初に後頭部にある一次視覚野に入ります。そして、後顔・側顔連合野で赤ちゃんの姿、色などを認知し、さらに海馬や頭頂連合野で赤ちゃんがいる位置を認知します。

これらの情報は、直ちに前頭前野に送られ、どうやって赤ちゃんを抱き上げるかという行動の判断がなされます。行動への判断情報は脳のほぼ中央にある運動野から運動連合野を介します。その結果として、体を動かし、赤ちゃんを優しく抱き上げるというわけです。

ところが、ゲームで遊んでいると、頻繁に入ってくる視覚情報だけで瞬時に体を動かす習慣は身につきますが、感性、思考、意志といったもっとも人問らしさをつかさどっている前頭前野を働かせる機会がありません。

先ほどの例であれば、赤ちゃんだからこそどのように抱き上げればよいのかを判断するのが前頭前野です。前頭前野は、人問らしさである思考、優しさ、気づかいなど (情緒指数) を形成する重要な役割を担っているところなのに、そこが衰えてしまうとどのようになってしまうのでしょうか。このような現状から、現在、日常の社会生活・学校生括でも、前頭前野を育む環境づくりの必要性が指摘されています。

よく噛んで食べると記憶力がアップする

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さて、このような動物実験での変化は、実際に人問でも起きるのでしょうか? そこで、

人問の場合は、実験で歯を削ったり抜いたりするわけにはいきませんから、ガムを2分問噛んでもらい、噛む前後の脳の様子を観察しました。脳卒中や脳の機能障害などを調べるのにも使われる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、岨噂をさせると脳のどの部分が変化するかを研究したのです。

その結果、海馬の領域は、ガムを噛んだあとで明らかに活性化していました。このガム効果は、若者の場合はあまり大きな変化が見られなかったのに、高齢者の場合にとくに顕著で、海馬だけでなく、脳の高度な統合処理機構を持つさまざまな連合野の神経細胞をも活性化させることが明らかになったのです。

若者は、もともと脳の活動レベ〜が高いですから、fMRIの画像の変化としてはそれほど大きく表れません。ところが、高齢者の場合は、海馬が萎縮して情報が入りにくい状態になっているところへ情報が入ってくると、額のすぐ後ろにある連合野などの高度な統合処理機構が処理をして、海馬の働きを助けるのです。

そのため、「噛むこと」によって、海馬だけでなく連合野などにも活性が見られたのだと考えられます。

さらに、ガムを噛む効果について、海馬の機能を見る短時記憶のテストを試してみました。これは被験者に風景を見てもらい、その風景がどのくらい正確に記憶されているかを調べるという方法です。

まず、それぞれの被験者の生活環境になじみのある風景の写真を順番に見せたあと、前回見せた写真の一部を微妙に変化させた風景写真を織りまぜて見せ、前回見た写真かどうかを当ててもらうという実験です。最初に写真を見るときに、ガムを噛まないで見た場合と噛んだあとに見た場合で、記憶力がどう変化したかを調べました。この結果、ガムを噛んだあとでは、すべての被験者において成績がよくなるという結果が得られました。したがって、この方法により、噛むことは認知症の予防に役立つ可能性があると考えられます。この研究結果を臨床に応用するため、今度は高齢者を対象に

  1. よく噛んで食べる
  2. ひとりで食べない
  3. 一品でもいいから食べたいものを食べる

という3点を守って2週問食事をしてもらうという実験を行ってみました。すると、海馬の機能は劇的に高まり、表情がイキイキとしてくることが明らかになりました。

これは、当初の私たちの目論見どおりでした。早期の認知症や認知症予備軍に対して、岨噛という行為をうまく取り入れた予防医療を行えば、海馬の細胞は増加し、症状は改善もしくは発症しないという可能性が出てきたのです。

この「噛むこと」のパワーには驚かされます。しつかり噛んで海馬を活性化し、記憶力をアップさせない手はありません。明日からといわず、今日から1口30回の阻噂とガム(ガム噛み)を実践してみませんか?

海馬の脳細胞は年をとっても増やせる

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一般に、人間の大脳皮質の神経細胞の数は140億個とも言われています。中枢神経全体では、神経細胞の数は1000億と2000億の問と推定されています。

膨大な数であるような印象を受けますが、私たちの脳の神経細胞は1日10万個という猛スピードで死に、老化とともに脳が萎縮し、機能が低下していくといいます。

そして、このような脳神経細胞のシナプス(ネットワーク)を介して、人間が五感(視覚、聴覚、喚党、味覚、触覚) から得た情報は、海馬に一時的に記憶として保管され、その記憶は海馬が判断し、適切な保管場所に移されます。

海馬は、記憶をつかさどるだけでなく、ものや自分の位置関係を知るための大変重要な役割(空間認知能)を担っています。ところが、年齢とともに、人問誰しもが避けて通ることができないのが海馬の萎縮なのです。

海馬は、認知症(痴呆症)になる、ならないにかかわらず、小さくなつてしまいます。そして、これが極端に薄く、紙切れのようになってしまうと、認知症に陥ります。

ですから、老眼になるのと同様に、記憶力が年齢とともに低下するのは、中高年者の脳に起きる自然な老化現象であり、憂慮すべきことではありません。しかし、ここで注目すべき事実があります。減少するだけの脳のほかの領域の神経細胞とは反対に、海馬の神経細胞は鍛えれば増加するのです。

しかも、それは「噛む」ことによって活性化させることができます。「本当に? 」という疑問が聞こえてきそうですね。「歯は食物を噛むためのもので、頭をよくするなんて信じられない」と。果たして本当に「歯」と「海馬」に関係などあるのだろうかと半信半疑でした。

ところが、実際に研究を進めてみると、次々と興味深いことがわかってきたのです。最近では、よく噛むと海馬の神経細胞の活性を向上させるという事実が証明されました。人の年齢に換算すると65歳くらいの老齢期マウスを使い、学習・記憶力を測定するために、水迷路テストを行いました。

小さなビーズで水面下を見えなくしたプールで、マウスを遊泳させます。水面下には一部、マウスの足が届く高さに小さな休憩台が隠されています。すると、正常なマウスを使った実験では、マウスは最初、遊泳を始めて休憩台を見っけるまでに60秒程度かかりました。が、スイミング学習を1日に4回、1週問続けさせると、数秒で出発点からほとんど直線的に休憩台に到達するようになりました。

つまり、老齢期のマウスでも、規則正しく学習をすれば、自分の位置と周囲の景色から休憩台の位置を確実に学習し、記憶能力(空間認知能) を向1 させることが示されたのです。

次の実験では、奥歯( 顎臼歯)を削り取り、噛みにくい状態にしてみました(臼歯切削群)。すると、このマウスは1週問学習しても目的地を覚えられず、迷い、到達時間を謝秒以下に短縮することはできませんでした。

白歯を削られたマウスの記憶力は、健全なマウスの5分の1 程度に低下していたのです。

さらに、次の実験では驚くべき事実が観察されました。この実験では、削り取った白歯を1週間後に治療して、よく噛める状態にしました(歯冠修復群)。

すると、学習・記憶力が日ごとに向上し、1週間後には劫秒前後で休憩台に到達するようになったのです。づまり、歯の治療が、記憶力を釣50% 回復させたと考えられます。

これらの学習・記憶力の評価は、マウスの遊泳時間を基準にした観察結果ですが、果たして、本当に脳の海馬の神経細胞にも変化があったのでしょうか? このことを科学的に証明するために、学習を終えたマウスの脳を採取し、海馬の切片をつくり、神経細胞の数を測定しました。

すると、海馬の神経細胞の数は、実験の奥歯が正常なグループは1 2m当たり約900個で、実験の歯を削られたグループは約500個と、実験の約56%まで減っていました。

そして、実験3の歯の治療をして噛める状態にしたグループでは約700個で、約78% まで回復していたことが確認されたのです。

これは、歯がよく噛めなくなると、記憶を失ったり、迷子になったりの認知症状態になり、歯の治療をすると、記憶力が回復しうることを示しています。

また、噛めないマウスが自分の位置を覚えられない原因として、噛めないことによって慢性的にストレスがかかり、脳内の神経伝達物質が少なくなり、障害を起こしていることが考えられるということもわかってきました。

顎を動かすということは脳のジョギングと一緒

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さて、認知症を考える前に、「運動と脳」の関係について考えてみましょう。

子ども時代に野球、サッカー、鬼ごつこなど、外で遅くまで遊びすぎ、「遊んでばかりいないで、少しは勉強しなさい」と、お母さんに叱られた思い出はありませんか?

ところがこの母親の常識、半分は正解ですが、半分は間違いなのです。つまり、勉強しなければよい成績にならないのは本当です。しかし、遊びを通した運動は、筋肉や骨を鍛えるだけでなく、頭をよくすることも科学的に証明されているのです。

24年ほど前(1995年)、米国カリフォルニア大学心理生物学部のS・A・ニーパー氏らは、ラットの運動量を増やすと記憶をつかさどる海馬の神経活動が活発になることを世界ではじめて証明しました。

つまり、運動(走る)は記憶力の向上に密接に関係していたのです。しかも、走ることによってとくに活性化される部位は、海馬の自分の居場所を認知する能力に関係する領域や大脳皮質連合野(情報を統合、整理する能力)の領域でした。

さて、ここでちょっと考えてみてください。走ることは手足の運動で、噛むことは下あごを上下左右に動かす運動です。

私は、同じ運動ならば、噛むことも脳に刺激を与えて脳を活性化しているのではないか、その科学的根拠をつかめないか、と考えました。脳神経科学研究グループとの共同研究がスタートしました。ここで、このグループと多くの研究協力者の真摯努力によって発見されたすばらしい成果を紹介してみましょう。

嚙むときの口を動かす脳の領域

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1938年、カナダの神経生理学者ペンフィールドはてんかん患者の了承を得て、開頭手術を行い、大脳皮質のさまざまな部位に電気的な刺激を与えて、患者がどのような刺激を感じているのかを聞き取りながら調査しました。

これは、脳のどの部分を刺激すると身体のどの部位が動くか(運動野)、そして、どのような感覚を感じるか(体性感覚野)を明らかにした貴重な人体実験です。

現在、このような実験は到底許されるものではありませんが、脳の働きを理解するための、脳治療の発展に直結する重要な基礎的情報として、医学生の教科書にも掲載されています。

手足を動かす領域は頭頂部と側頭部の上部側に存在し、下部側は顔と口の動きを支配していますが、その領域の割合は、ま半々になっています。体性感覚野(中心溝の後側)は全身からの感覚情報(冷、寒、痛、触など) の受け皿になつていますが、支配領域の広さも、運動野とほぼ同じ比率になっています。

脳の表面に描かれた奇妙な顔と手足を持つ絵はホムンクルス(「小さな人間」の意)と呼ばれ、脳が身体を支配する領域の大きさに応じて体の部位を誇張して描いたものです。

ホムンクルスの身体は相当ゆがみ、手指は大きく長く、顔や口も異常に大きく描かれています。とくに、運動野での咀嚼、飲み込み(膝下)、唾液分泌、発声などにかかわる部位の働きと体性感覚野での歯、上下唇、舌、のど、顔、鼻、目などの働きが連動している様子がうかがえます。

そして、これらの占める割合が運動野や体性感覚野のほぼ2分の1程度にもなり、噛むという行為が脳に与えている影響の多大さを示唆しています。さて、脳の血液量は、全体的に増えるのではなく、手が動くときには脳の手の領域で、足が動くときには脳の足を動かす領域で増えていきます。

口と関係する脳の部位は広いので、口を動かすと、効率よく脳の血流をよくすることができるといえます。つまりよく噛んで口を動かすだけで、脳の血流が増え、脳は活発に働き出すのです。口というのは、髪の毛がl本人ってきても感じるくらいに非常に敏感な器官で、岨喝して食物を飲み込むだけでなく、味を感知したり、舌や唇を動かしてしゃべったり、表情をつくつたり、実にさまざまな働きをします。

体性感覚野における口の占める割合が非常に大きいのは、人力される情報量が他の感覚器に比べて格段に多いからであるといえるでしょう。

「食べること=脳を活性化すること」なのです。歩くのが嫌い、車の送り迎えが好き、鉛筆も自分で削れない、体を動かすのが苦手( 体育が不得意)、コンビニエンスストアやファミリーレストランでやわらかくおいしいものを好んで食べる、いつでもどこでも間食する、そして肥満傾向がある、そんな児童は脳神経細胞の発達に不利な生活習慣が身についていると断言できます。

また、一度食べたものは味も舌ざわりも覚えているように、噛むことは記憶とも大いに結びついています。

たとえば、高齢の入院患者が口からものを食べられなくなつたとき、鼻から管を通して栄養を与える経管栄養や点滴に替えたとたん、認知症(痴呆症)になりやすいことは、噛むことと脳の働きのつながりが非常に強いということを示しています。

そこで、さらに一歩進めて私たちの研究グループが着眼したのが脳と岨噂の関係で、とりわけ脳の中でも記憶をつかさどる海馬という部位と岨噂の関係でした。

脳と岨噂の密接な関係を見出すことができれば、岨噂という刺激によって、脳の神経細胞を刺激して活性化させ、認知症を防ぐことができるのではないか、そう仮説を立てたのです。もし、日常、誰もが行っている「噛む」という行為によってそれが可能になれば、初期の認知症患者や予備軍にとって大きな福音となります。

咀嚼が変えた脳の重さ

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人類が誕生してから400万年といわれていますが、それ以前、人類が人類になるずっと以前から、「嚙む」という行為は行われてきました。地球上の動物は、例外なく何かを食べなければ自分の生命を維持できません。

つまり、噛むことは、人類の生きるための本能として、悠久の時問の流れの中で、しっかり体の遺伝子に組み込まれています。

サルからヒトへの進化にも長い過程があります。その問には多くの環境変化がありましたが、食生活が脳の重量を400g 前後から1400g へと変化させたのです。人類の祖先としてルーシーという名前がつけられた350万年前の女性の猿人は、身長110cm、体重27kg、脳の重さ400gでした。

猿人は食物を牙で引き裂いて食べていましたが、その後、道具をつくり、火を使えるようになった原人は、火で焼いて細かく噛み砕いて食べるようになりました。

原人の脳は前頭葉がそそり立ち、猿人の2倍以上の1000~1200gになりました。さらに、器用に進化した手足を使ってさまざまな道具や調理法も編み出し、あごの微妙な動きと、舌と鼻からの味と匂いの情報を大量に脳に送り込むようになつたことにより、牙を食物をすり潰すことのできる歯に変化させ、現代人の1400g の脳への発達に拍車をかけました。

以上のように、進化の過程で「噛む」ことが脳の重さを増やしていった、ということです。

老化防止は噛んで脳に「喝」

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『高齢社会自書』によると、今から16年前の2003年10月1日には、65歳以上の高齢者人口は2431万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)は19.0% でした。

2050年には、35.7% (3人に1人) になるとの予測。いよいよ「超」高齢社会に突入しますが、同じ長生きをするなら、病身で生き永らえるより、健康で豊かな高齢期を迎えたいものです。

そのために今、求められているのは、自分自身の生活習慣の改善ではないでしょうか。そして、それは、誰にでも今すぐ実行できることです。そして健康で丈夫な老後を迎えるためにとても大切なことなのです。

生活習慣を見直すにあたり、まず考えたいのが食事。どれだけ楽しく食事をしているか、食べる量は適量か、この2点が健康のバロメーターになります。無理をせず、年齢に応じた自分なりの生活リズムを守る。そして、栄養バランスがとれた「おいしい」と思える食事を選んで、楽しみながら、よく噛んで食べているなら、あなたは最高の健康法を獲得している達人といえるでしょう。

人問は誰しも、加齢とともに「食べる機能」も徐々に衰えてくることは避けられません。高齢になるにつれて、

  1. 歯が悪くなり、うまく噛めなくなる
  2. ご飯よりお粥、やゎらかいものを食べたい
  3. 味を感じにくくなる(とくに塩味、甘味)
  4. 唾液の分泌が少なく食べにくくなる
  5. どに食物が残った感じがする

などの変化は、いずれも自然な老化過程の初期症状です。しかも、噛まないようになると、いっそう急速に老化が進み、認知症(痴呆症) へと至る可能性も高くなります。ですから、このような症状に気がついたときが老化防止のチャンスです。

早めに専門医や関連する専門家と相談しながら、これらの症状の改善に気を配ることが賢明です。神様が教えてくれる「初老の兆し」を放置することが「老化と病気の始まり」になります。

また、高齢期における孤独感や疎外感、生きがいの喪失などは、食欲低下の原因になり、食欲低下は筋力、気力の衰えへと進み、さらに食べることが困難な状態になるという悪循環に陥ってしまいます。

さて、「食べる機能」はすべて脳で統合されています。口は手や足と同様に、大脳を前後に分けている中心溝のすぐ前にある大脳皮質運動野の指令によって動かされています。

そして、中心姓溝の後ろにある体性感覚野が触覚、圧覚、痛覚などの感覚をつかさどり、さらに、食物を目で見て、匂いを喚いで、味を調べて、食べてもよいかどうかを判断します。

そして、食事を介した楽しい思い出や、おふくろの味を懐かしむ人問らしい情緒感、また政治や歴史、人生観についての議論などの高次精神機能も含め、このように口は、実に多くの脳神経細胞と連動する脳神経ネットワークを形成しているのです。

だからこそ、老化に気づいたら、「食べる機能」、とくに「噛むこと」を介して、自分の脳の働きに「喝」を入れることが必要です。肉、魚、野菜などの食物の持つ栄養といぅ面ももちろん大切ですが、食物が持つ固有の「歯ごたえ」や「噛みごたえ」を堪能(脳に入力) することが脳の活性化、すなわち老化や認知症の防止、記憶力の強化に不可欠であることが、科学的に証明されてきました。

若々しい活性化した脳の健康を取り戻すために極めて効果的な手法が「よく噛んで食べる」ことである、そういっても過言ではないのです。