唾液の効能6「細胞を増やし、体が若返る」

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唾液は、消化の働きだけではなく、幅広い領域で、人知れず重要な働きをしています。意識していない中で働いている縁の下の力持ち的存在といってもいいでしょう。

唾液分泌のメカニズムと唾液の効能7項目

宮沢賢治風にいうなら、唾液は「ホメラレモセズ、クニモサレズ」というところですが、実はこういう存在があって、私たちは、雨にも風にもストレスにも病気にも負けない体を維持していられるのです。

これまで唾液腺から導管を通って分泌され、口の中を潤す唾液(外分泌) について述べてきましたが、次に、その途中で血液に取り込まれて全身を回るホルモン(内分泌)について述べたいと思います。もちろん、これも唾液です。

唾液ホルモンには多くの物質がありますが、その代表的なものとして、成長を助けるホルモンである上皮成長因子(EGF)や神経成長因子(NGF)があります。実は、唾液ホルモンの研究は、日本ではすでに1930年代から始められていました。最初にこれに着目したのは、東京大学で病理学を研究していたグループでした。

このグループは、唾液の中にはいろいろなホルモンを制御する中心的なホルモンがあるのではないかと考えて研究を始め、目標のホルモンを発見しました。このホルモンは、耳下腺( バロタイドグランド)にちなんで、「パロチン」と名づけられました。

日本全国の学者がこれに共鳴して、膨大な研究が行われ、唾液の持つ重要性が認識されてきました。一方、同じころかちょっと遅れてアメリカでも、が唾液に含まれる成長因子に着目して研究を始めました。そして、ネズミから唾液腺を取ると、歯が生えなくなり、毛のツヤも悪くなって、まぶたが開かなくなる現象が起きることがわかりました。

体の外側や皮膚の表層にある細胞のことを「上皮細胞」といいますが、歯や毛は一見、何の関係もなさそっな上皮細胞が変化したものです。たとえば歯は、口の中の上皮細胞が増殖し、エナメル質を形成するとともに、粘膜下の結合組織脂肪を誘導して、歯根となる象牙質、セメント質や歯根膜をつくります。

上皮細胞というと、体の外側を覆っている細胞のように思いがちですが、そんなことはありません。食道も、胃も、腸の粘膜も、みんな皮膚なのです。体の表面の皮膚が内側に裏返って入り込んでいると考えればわかりやすいでしょう。血管もそうです。

体のすみずみまで栄養を運ぶ血管の内側にある内皮細胞も皮膚と同系の細胞です。つまり、上皮成長因子は体の内外を問わず、体中の細胞を新しくする新陳代謝にとって、重要な役割を担っているのです。

ネズミから唾液腺を取ると歯や毛やまぶたに悪い影響が出ることから、唾液腺の中には上皮細胞の成長を促進させる因子があると信じて研究を進め、上皮成長因子を見つけました。さらに、唾液腺の神経成長因子を発見しました。この神経成長因子とは、体中に張り巡らされたセンサーで、神経の増殖をつかさどっています。

脳細胞の成長も促進します。ちなみに、この研究については、1968年、ノーベル賞が授与されました。つまり緒方教授グループが世界に先駆けて手がけた唾液由来のホルモンであるパロチンの正体は、上皮成長因子や神経成長因子など多数の生理活性物質の混合物だったのです。

これらのパロチンが血管を通って体じゅうを巡り、成長を促進したり、命を保つために黙々と働いているのです。唾液の成分がしっかりと全身に供給されていれば、若々しい細胞を保つことができます。一言でいえば、唾液には若返りの秘密が隠されているのです。