よく噛んで食べると記憶力がアップする

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さて、このような動物実験での変化は、実際に人問でも起きるのでしょうか? そこで、

人問の場合は、実験で歯を削ったり抜いたりするわけにはいきませんから、ガムを2分問噛んでもらい、噛む前後の脳の様子を観察しました。脳卒中や脳の機能障害などを調べるのにも使われる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、岨噂をさせると脳のどの部分が変化するかを研究したのです。

その結果、海馬の領域は、ガムを噛んだあとで明らかに活性化していました。このガム効果は、若者の場合はあまり大きな変化が見られなかったのに、高齢者の場合にとくに顕著で、海馬だけでなく、脳の高度な統合処理機構を持つさまざまな連合野の神経細胞をも活性化させることが明らかになったのです。

若者は、もともと脳の活動レベ〜が高いですから、fMRIの画像の変化としてはそれほど大きく表れません。ところが、高齢者の場合は、海馬が萎縮して情報が入りにくい状態になっているところへ情報が入ってくると、額のすぐ後ろにある連合野などの高度な統合処理機構が処理をして、海馬の働きを助けるのです。

そのため、「噛むこと」によって、海馬だけでなく連合野などにも活性が見られたのだと考えられます。

さらに、ガムを噛む効果について、海馬の機能を見る短時記憶のテストを試してみました。これは被験者に風景を見てもらい、その風景がどのくらい正確に記憶されているかを調べるという方法です。

まず、それぞれの被験者の生活環境になじみのある風景の写真を順番に見せたあと、前回見せた写真の一部を微妙に変化させた風景写真を織りまぜて見せ、前回見た写真かどうかを当ててもらうという実験です。最初に写真を見るときに、ガムを噛まないで見た場合と噛んだあとに見た場合で、記憶力がどう変化したかを調べました。この結果、ガムを噛んだあとでは、すべての被験者において成績がよくなるという結果が得られました。したがって、この方法により、噛むことは認知症の予防に役立つ可能性があると考えられます。この研究結果を臨床に応用するため、今度は高齢者を対象に

  1. よく噛んで食べる
  2. ひとりで食べない
  3. 一品でもいいから食べたいものを食べる

という3点を守って2週問食事をしてもらうという実験を行ってみました。すると、海馬の機能は劇的に高まり、表情がイキイキとしてくることが明らかになりました。

これは、当初の私たちの目論見どおりでした。早期の認知症や認知症予備軍に対して、岨噛という行為をうまく取り入れた予防医療を行えば、海馬の細胞は増加し、症状は改善もしくは発症しないという可能性が出てきたのです。

この「噛むこと」のパワーには驚かされます。しつかり噛んで海馬を活性化し、記憶力をアップさせない手はありません。明日からといわず、今日から1口30回の阻噂とガム(ガム噛み)を実践してみませんか?