食物が口の中に入って阻噛を始めると同時に、唾液の分泌が始まります。その唾液は
- 消化酵素を助ける
- 刺激のあるものが口の中に入ったときに分泌量を増やして刺激を弱める
- 絶えず口の中を流れて、歯や粘膜の汚物を洗い流し、口腔内を清潔に保つ
3つの中で3が一番大事な働きです。唾液腺には三大唾液腺(耳下腺、顎下腹、舌下腺) と、そのほか、口腔粘膜のあちこちに小さな分泌腺が分布しています。
唾液腺でつくられた唾液は、上顎第一大臼歯の頬粘膜、舌の下側の根元のほうにある小さな穴から出ていますが、分泌される唾液は、つくられる腺組織によって性質が異なります。
耳下腺でつくられる唾液は粘り気がなくサラサラしていますが、ほかの腺組織は粘りのある液を分泌します。こHれらの唾液腺は、交感神経と副交感神経に支配されているため、それをつかさどる自律神経と深いかかわりがあります。
食事によって、これらの唾液腺から唾液が分泌される具体的なメカニズムはこうです。
口の中に食物が入ると、食物から溶け出した成分によって、舌の粘膜が刺激を受け、口腔内で一定の食物感覚を得ます。すると、これを知覚する神経が刺激され、情報が脳に伝達されて唾液が分泌されます。
この過程で、自律神経の働きが重要になってきます。唾液腺は副交感神経と交感神経の支配を受けていますが、主に脳にある唾液核(延髄と橋との接合部付近)からの副交感神経の刺激で、唾液分泌の調節を行っています。
味覚や食物を噛むなどの機械的刺激は、この唾液核を興奮させ、唾液を分泌させます。同時に、精神的なイライラや恐怖なども唾液に影響を与えます。
たとえば、「生つばを飲む」という表現がありますが、精神的な緊張によって唾液が出にくくなり、のどが渇くために起きる現象です。これは、従来考えられていたような直接的な交感神経による分泌抑制ではなく、感情や情緒などがかかわる中枢神経系の上位中枢から唾液核への抑制作用によって起きる現象なのです。
さて、「つば」としてあまりイメージのよくない唾液ですが、実は私たちが普段気がつかないすばらしい数々の役目を果たしています。その1つ1つを紹介します。
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