一口に30回噛む習慣

一口に30回噛む理由を紹介しましたが、実際に一口30回噛んでみましょう。やってみると、案外難しいものだと気づくことでしょう。

自分の身についてしまっている「噛まない」長い長い習慣が、意外に根強いこともわかるでしょう。うまく噛めないという方に聞くと、たいていの場合、噛もうとしても、すぐ飲み込んでしまい、食物が消えてしまうから、という答えが返ってきます。そうした方のために、以下のような食べ方をお勧めします。

その1「口30回噛む食べ方」

  • 食物を口の中に入れたら箸を置く。
  • 右側の歯で5回噛む。舌を使って食物を左側の歯に送り、さらに5回噛む。同じ要領
    でもう一度左右5回ずつ噛む。
  • 最後に、両側の歯を使って、あと10回噛む。

これで、一口30回噛んだことになります。こんなことを一口ごとに行うなんて、とても大変と思われるかもしれませんが、これが最も基本となる噛み方ですので、とにかく慣れるまでは意識してやってみてください。噛み癖というのは幼児期に獲得した食習慣であって、これを矯正するのは大変に難しいことなのです。自らを「洗脳」するつもりで、新しい「噛み方」を脳に記憶させましょう。コツは舌の使い方です。通常、口の中に入った食物が舌の前側にあれば、舌の先端を使って食物を巧みに動かすことができます。しかし、舌の後ろ側に食物が行くと、反射的にゴツクンと飲み込んで(嚥下反射) しまいます。

早食いの人は、食物を舌の奥に置く癖があるので、噛もうと思ったときには、すでに食物は咽頭から食道へ飲み込まれてしまっているのです。したがって、よく噛むためには、食物を意識的に舌の前半部分(舌尖部)に置く必要があるのです。

トレーニング法としては次のような方法があります。水を飲まないように口に含み、舌先を動かしたり、軽く噛む練習をしてください。うがいをするとき、水がのどに人らないよう、舌の奥でのどを閉めますが、そのときの要領で水を飲まずに噛むことができれば、食物は絶対によく噛めるようになります。

この新しい噛み方が実際の食事で3日継続できたら、あなたは確実に肥満解消候補生です。そして、毎日、最低1〜2回体重計に乗り、最初のうちは増加がストップ(減少しなくてもよい) していることを確認できたら大成功です。

必ず2〜3週間後から体重が減少し始めます。ゆっくりと体重を落とし(1か月に1kg以内で十分) 適正体重に調整してください。

それでも、どうしても舌の使い方がうまくできない人は、ガムで練習することも効果的ですが、もっとよいのはおもちを使う方法です。おもちなら、一口30 回どころか、100 回噛みが必要になり、自然とよく噛むことが身につきます。

その2「おもちで「100回噛み」を習う」

  • ひと口大のおもち(約10g)を口の中に入れ、おもちが唾液と混ざり、ペースト状(硬めのお粥状態) になるまで噛む。

硬いおもちなら、電子レンジなどでやわらかくします。好みですが、磯辺巻き(のり巻き)、安倍川餅(きな粉)、ぼたもち(あんこ) あるいは力うどん(おもちの入ったうどん)、何でも結構です。

飲み込んでも安全な状態になるまで噛んでいると、噛む回数は軽く50 回を超え、100回くらいになるはずです。おもちをのどに詰まらせて、苦しい思いをしたり、窒息するのは、高齢者だけではありません。おもちを噛まない不注意な食べ方は命にかかわります。おもちは噛むことの大切さを教えてくれる祖先からの最高の贈り物といえます。

肥満の人は食前、食後にガムを

一口30回の噛み方の応用として、肥満の方のためにとくにお勧めしたい方法がありま
す。肥満指数が25以上の方は、ぜひこの方法を行ってみてください。

BMIと適正体重 - 高精度計算サイト
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732

その3 「肥満症の方のための噛み方」

  • 食事の前にガム1枚(好きなガム) を5〜10分噛む。
  • 食事は、方法1と同じように一口30回噛む。
  • 食後にキシリトール入りガムを5〜10分噛む。

食事の前にガムを食べると十分な満腹感が得られると同時に、(食事量が約20〜30% 減少)食べ過ぎが防げます。また、食後にキシリトール入りガムリトールの割合ができるだけ多いものが望ましい) を食べるのは、(甘味料に占めるキシ口中の発酵を抑制し、口臭、虫歯、歯周病の予防にもなります。これは、とくに肥満の方でなくても、ぜひお勧めしたい習慣です。

その4「肥満で重度の生活習慣病を併発している方のための噛み方」

  • 食前にガム1枚(好きなガム)を5〜10分噛む。
  • 咀嚼記録簿を作成し、食事の問に一口ごとの記録をとる。ノートか記録紙を用意し、一口ごとに目標とした岨囁回数(20〜30回)を設定し、これが実行できた場合は○ 印、できなかった場合は×印を記入する。

さらに、この「咀嚼法」は、食事の開始から終了まで、医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士ならびに関係者が協力し、岨噛状況の確認、励ましや助言を行うことで、よりいっそうの効果が期待できます。このように記録をつける方法は、一口30回の咀嚼を身につけるのには非常に効果的です。肥満の方に限らず、学校などの食育の場面でも応用ができますので、噛み方の改善を望む方は真剣に取り組んでください。必ず効果が現われます。

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