食物の硬さと噛みごたえ

さて、噛むことは、顔の骨や筋肉の成長に重要な役割を果たしていますが、噛む力(咬合力)というのはいったい何kgぐらいあるものなのでしょうか?

人間の最大咬合力(咀嚼筋の筋力) はおおむね体重程度で、男性の平均瞭合力は1㎠
当たり約60kg、女性は約40kgです。

一般に、私たちが食べやすい食品とは、噛むときに加わる力が最大岐合力の25〜30%に収まっていることが目安となります。普通、食事をするときには、どの程度の力で噛んでいるのでしょうか?

食品ごとに必要な咬合力を数値化すると、たとえば、せんべいで1㎠当たり約14kg、ピーナッツで約12kg。みりん干しを噛むのには36kgの噛む力が必要ですが、ハンバーグやラーメンはそれぞれ2kgと0.6kgとなり、食品によって必要な瞭合力はこんなにも違います。

阻噛するときは、これだけの力が歯と歯ぐきにかかっているわけで、この力に耐えられる歯と歯ぐきの健康を維持しておかなければならないということです。

あごの力が弱くなっていれば、当然、咬合力も低下します。また、自分の歯を失い、総入れ歯になった場合では、咀嚼能力はふだんの35 %程度になってしまい、体重60kgの場合なら、最大咬合力は21kg程度にまで下がってしまうのです。

これでは、硬い食品を避けたくなるのも無理はありません。それでは、咬合力が強ければ、食物をおいしく食べられるのかというと、必ずしもそうではありません。

咬合力はあくまでも口の中に入ってきた食物を粉砕する力です。食物が口の中に入ってくると、前歯で切断する、臼歯ですり潰すなど、多様な咀嚼を展開しておいしさを味わうと同時に、噛んでいるという情報を刻々と脳に伝達します。

そして、その時間が長いほど、あるいは噛む回数が多いほど、脳神経細胞の活性化が効果的に起き、おいしく食べることができるのです。一般に、噛みごたえのある食品のほうが脳への人力情報が多くなり、やわらかくすぐ飲み込める食品は脳の活性化のチャンスを少なくします。つまり、普通の噛みごたえのあるものをよく噛んで食べることが脳の活力を維持するのに大切だということになります。

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