「化学物質が急増した」ことより「ご飯を食べなくなったこと」に問題がある

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この3つの錯覚と、戦後の食生活近代化論や栄養改善普及運動によって、日本の食生活がどう変わったかについて、一般論で言えばこうなると思います。まず、あまりにも食生活が欧米化したこと。次に、あまりにも農薬や食品添加物のような化学物質が増えたこと。ここまで気づけば、かなりまともな考え方をしている人だと思います。
しかし、一番変わったのは、ご飯が減ったことなんです。食品添加物については、今よりひどいころもあったんです。
子供のとき、ジュースの素というのがありました。当時の私はおいしいと思ったんですけどね。うろ覚えなんですが、今考えてみれば、あれは、オレンジ色の着色料と、サッカリンか何かの合成甘味料と、ミカンの香りのする香料だけでできていたんだと思います。
本当のミカンなんてまるで入っていない。つまり、食品添加物のかたまりだったんです。それを水に溶かして飲んだんですよ。それから、これもうろ覚えなんですが、もっとすごいのは、駄菓子屋で売っていた紙に絵が措いてあったお菓子です。ピンクや水色をした紙が、お菓子だったんです。若い人には信じられないでしょうが、それをなめたんですよ。考えられます? 着色料と甘味料をなめていたんです。今はいくら何でもそんなものは売っていません。たしかに、化学物質の総量は今のほうが多いんですが、一つひとつの食品では今より危険なものが昔にはあったんです。
ですから、昔の食生活と比べて一番変わったのは、化学物質のことよりも、やはり、ご飯が減ったことだと思います。昔の日本人はご飯中心の食生活でした。労働量にもよるんですが、一日にご飯を六杯から八杯も食べていたんです。あと主食につきものの、味噌汁、漬物を基本に、副食として野菜、魚を食べるという食事でした。地方によっては、ご飯がイモであったり、麦であったりしましたが、こういう食生活を長い間私たちは続けてきたわけです。ところが、誤った知識が広まって定着した昭和四〇年頃を境に、「ご飯は残してもいいからおかずを食べなさい」という、現在の食生活へと変わってしまったんです。

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