「煮干し=カルシウム」といった短絡的発想はNG

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
栄養素を考えることが正しい食生活だという錯覚で、一番被害を受けた食品が卵です。卵ほどかわいそうな食べ物はありません。昔は、、病院にお見舞いに行くときは、新聞紙に卵を10個包んでお見舞いに持っていったものです。
また、風邪を引くと卵酒を飲まされた経験がある人もいるかと思います。
遠足へはゆで卵を持って行き、弁当のおかずは卵焼きでした。お母さんたちの中には、何を勘違いしたか、お父さんに生卵を飲ませている人までいました。よからぬことを考えて飲ませていたんですね。なぜ、これほど卵が好まれていたのかというと、タンパク質が豊富だからという理屈だったんです。
ところが、昭和40年代頃から脳や心臓の血管が詰まる病気が増えてきて、その原因としてコレステロールが話題になってきました。そうすると、卵の黄身にコレステロールが多いから、卵を食べると体によくないということにされてしまったんです。
すると今度は、卵が急に売れなくなってしまいました。
意見をころころ変える栄養学は、卵をもてはやしたり、けなしたりと、散々に振り回してきたんです。それでは、栄養学では今、何と言っているかというと、コレステロールにも善玉と悪玉があると言っているんです。さあ、今度は卵はどうされてしまうんですかね?

くもう1つ例を挙げます。患者さんの中には、味噌汁を1日7杯ぐらい飲む人と一切飲まない人がいるんです。一切飲まない人は保健所や厚生省(現厚生労働省)の意見に従っているんですね。「塩分が多いから、高血圧、脳卒中になる」という意見です。味噌汁を食塩水と勘違いしているんでしょうね。
一方、7杯飲む人は、国立がんセンターの平山先生という人の意見を信じているんです。平山先生が、「味噌汁を飲む人には胃ガンが少ない」と発表したんですね。何を言いたいかというと、栄養学に振り回されると、味噌汁を飲むこと一つにしても、胃ガンか脳卒中か、自分で選ばざるを得なくなるということなんです。それが現状なんです。なぜそうなってしまうのか、少し失礼なたとえで言うと、こういうことだろうと思います。
1人の女性を見て美人かどうか考えるときに、Aさんは、手だけを見て美人だと言つているわけです。B さんは、足だけを見て美人ではないと言っているわけです。
つまり、AさんもB さんも、手と足だけを見て、その人の全体を見ていないんですよ。
煮干しの例について言えば、ある人は煮干しは骨だけで泳いでいると思っているんでしょう。カルシウムしか見ていないわけです。ところが、過酸化脂質という本を読んだ人は、煮干しの皮だけしか見ないんです。
でも、私たちは、煮干しの皮も骨も全部食べるんですよ。卵を食べるときに、タンパク質だけ飲み込んで、コレステロールだけ鼻から出すなんてことはできないんですよ。良いものも悪いものも含めて、1つの食べ物を全部食べているんです。もっとわかりやすく言えば、ビタミンC という食べ物を食べたことがありますか?
カルシウムという食べ物を食べたことがありますか? ないんですよ、そういう食べ物はないんですよ、そういう食べ物は。もちろん薬にはありますよ。
でも、そういう食べ物はありません。食べ物にはビタミンC やカルシウムが、成分として含まれているだけなんです。ところが、いつの間にか煮干しがカルシウムの代名詞になつてしまうわけです。ですから、栄養素を考えると、何を食べていいかわからなくなるんです。栄養士などの仕事をする人は別です。

仕事にしている人は栄養素のこともしっかり勉強しなければいけないと思いますが、普通の人が明日からの食生活の改善を考えるなら、コレステロールとかタンパク質とかを忘れたほうがいいんです。
そうすれば、食生活は非常にわかりやすくなります。ここで、3つの錯覚を整理しますと、1つ目が、肉を食べたからといって筋肉もりもりになるわけではないということですね。
2つ目が、欧米の食生活が理想ではないということです。欧米の人には理想かもしれませんが、日本人にとっての理想ではないんです。
3つ目が、栄養素を考えると食生活はわからなくなるということです。おそらく、皆さんには、錯覚されていた人もいるだろうと思います。

関連ページ