イカやタコはコレステロールを下げるのか?あげるのか?

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3つ目は、「栄養素を考えて食事をすることが科学的で正しい」という錯覚です。これが非常に食生活をわかりにくくしているんです。
たとえば、患者さんと接していると、まるで猫を育てるように、朝から晩まで、子供に煮干しを食べさせているお母さんがいます。そういう人は、まじめなお母さんなんです。
要するに、カルシウムを子供に与えようと思って、煮干しを食べさせているんです。ところが、そういうお母さんは熱心ですから、今度は、過酸化脂質のことを本で読んでしまうんです。
そうすると、「干した魚は脂が酸化しているから危険だ」と書いてあるものですから、今度はあわてて子供に、「煮干しはやめなさい」と言うことになるんです。
子供は猫ではないと気がつくんですね。あるいは若い女性の中にこういう人もいます。「おたくのお母さんやおばあさんは、チンパンジーかオランウータンだったんでしょうか」と聞きたくなるような食生活の人です。
そういう女性は、ご飯を食べないで、果物を主食にしているんです。好きで食べているのなら、まだ理解できるんです。
ところが、一生懸命考えて、そんなことをやっている人がいるんです。つまり、ビタミンC ということを考えているわけです。ところが、そういう人が、しばらくして果糖についての本を読んでしまうんですね。
すると、「果物をとり過ぎると太る」と書いてあるのを読むと、途端に果物をやめるんです。栄養素を考えるとこうなつてしまうわけです。
同様の例を、いくつかお話しします。たとえば、お茶についてです。患者さんの中には、お茶をたくさん飲む人がいます。ご飯に緑茶をかけて食べている人までいます。
お茶っ葉をミキサーにかけて、粉末にしてご飯にかけて食べる人までいるんです。理由は、お茶にはビタミンC が多く、ガンにいいという理屈です。
ところが、緑茶のようなタンニンの多いものを毎日飲んでいると、鉄がタンニンとくつついて出てしまい、貧血になるという本もあるんです。両方耳に入ってきたら、混乱しますね。みんなそうなつてしまうんですよ。また、イカ、タコはコレステロールが多くて、体によくないというのもあります。これは、昭和四〇年代頃に盛んに言われていました。ところが、最近では、イカやタコには、コレステロールを下げてくれるタウリンが多いから、体にいいと言っています。そうすると、それまでイカやタコは絶対食べなかった人が、急に食べ出すんですよ。栄養素に気をとられると、良し悪しの意見がころころと変わるんです。

さらに例を挙げます。「野菜は生でしか食べません」と言う人がいます。火を通すとビタミンCが壊れるからというのが理由なんです。馬のまねをして、みんな生で食べるわけです。ところが、そういう人は、「おもいッきりテレビ」か何かでこう聞かされるわけです。ベータカロチンという非常に大切なビタミンがある。
これは脂溶性ビタミンだから油で妙めたほうがいい。これを聞くと今度は野菜を全部妙めるようになるんです。これらの例でもう十分だと思いますが、栄養素を考える人は、ころころ態度が変わつてしまうんです。栄養素を考えていると、食生活をどうすればいいのか、本当にわからなくなりますよ。忘れたほうがいいというのが私の結論です。そのほうが、食生活はすっきりとわかりやすくなるんです。

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