唾液の効能3「消化を助け、病気を防ぐ」

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よく噛んで食べることの基本的な効果に、「食物を細かくすり潰す効果」「唾液と混ぜる効果」の2つがあります。いずれの効果も、胃での消化を助けるためにとても重要です。消化するということは、もともと自分の体をつくつている構成要素ではないものを取りこ
り込んで自分の体の一部にしてしまう作用です。

本来、人問の体には、自分の体の構成要素ではないものが体に入ってくると、それを「異物」とみなして攻撃する働きがあります。これが免疫という生体防御機構で、体を守るための大切な働きの1つです。

この免疫システムは、まず第一に、外部から栄養を摂取しなければなりません。消化するということは、単に食物から栄養を吸収するということだけでなく、「異物」が持っている抗原としての働きが完全に消失するまで、食物を分解することでもあります。

食物の中に存在する分子構造で人にはない構造を抗原性決定群といい、これを破壊することが消化の重要な役割なのです。その大切な働きをする胃腸をしっかり手伝っているのが、歯(咀嚼)と唾液なのです。胃に入るまでに、食物が細かくなっていればいるほど消化しやすくなるというのは、誰でもわかる理屈です。しかもそれが、唾液というネバネバしたオブラートで包まれていれば、食道や胃への刺激も弱くなります。そのオブラート役をしているのが、唾液の成分の1つであるムチンという糖とタンパク質の複合体です。

よく噛めば食物は小さくなりますが、その1つ1つをムチンがきっちり包み込んでいるのです。人が口にする食物はそれぞれ、熱い、冷たい、辛い、苦い、しょっぱいなど、かなりの刺激性を持っています。味覚を楽しむのは脳なので、これらの感覚刺激は食味として脳にとってはうれしい要素なのですが、食物を分解して「自己化」しなくてはならない胃にとってはありがたいものではありません。

むしろ、刺激性の強いものは食道や胃壁を荒らす敵なのです。そこで、胃への刺激を少しでも減らそうと活躍しているのがムチンというわけです。ですから、塩辛とかキムチなどの刺激物が好きな人は、食べる際はとくによく噛むことが大切です。

辛さや苦さを味わうのは、口の中だけにとどめるということです。よく噛めば、脳も十分満足します。しかも、そうしている問に、唾液中のムチンががんばって刺激物をオブラートのように包み、飲み込みやすく、しかも胃に負担をかけないようにしてくれます。こう考えると、よく噛まないで、唾液が分泌されないうちに食物を飲み下してしまうことや、酒類の一気飲みがいかに体に悪いかがわかるでしょう。

また、熱いカレーなどをほとんど噛まずに飲み込み、食道で熱くてたまらず、あわてて冷たい水を飲むような食べ方は、食道がん、胃がんの原因にもなりかねませんし、胃腸の働きを低下させる最悪の食習慣といえます。

歯科医院を訪れた患者が、胃腸を悪くしているケースは少なくありません。歯が悪くなると、「よく噛めない→ 食物の大きな塊が完全にムチンにくるまれずに胃に入る1刺激物が胃壁を荒らす」と、絵に描いたような悪循環の図式ができあがります。

ですから、歯が悪くなれば、当然、胃腸も悪くなるのです。少しくらい歯がうずいても、なかなか歯科医院に行こうという気にならず、しばらく放っておく。するとそのうち胃が悪くなつてくる。それはよく噛めないことが原因だったわけです。歯と胃は連動していて、互いに助け合っていることを忘れてはなりません。

唾液分泌のメカニズムと唾液の効能7項目