強迫性障害

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自分で自分を追い詰めてしまうこだわり病を克服する行動療法

「なんてバカバカしいことをやってるんだ!」と、自分でもよくわかっている。だけど、やめられない。やめようと思えば思うほど、くり返し頭に浮かび、逃げても、逃げても、追いかけてくる、執念深いストーカーが頭の中にすみついている。

「強迫性障害」と呼ばれる、自分で自分を追い詰めてしまう究極のとらわれ・こだわり病は、人問という、この弱く愛しいものの奥深い真実を教えてくれる。それを克服し、強く立ち直るための行動療法「エクスポージャlと儀式妨害」は、感動の医術である。

何度も執拗に手を洗わないと気が済まない!
『やめたいのに、やめられない』のさまざまな症例に、ただただ驚き、痛ましく感じながら、ふと、自分の中にも同じような性向が潜んでいるのではないか? と思いました。

強迫性障害は、だれもがかかりうる病気です。皆さんの周囲にも、玄関のカギをかけたか何回もチェックする人や、手洗いに時間のかかりすぎる人、「ちょっと考えすぎでは?」と心配になるぐらい縁起をかつぐ人が、いるのではないでしょうか。そうした人たちのすべてが、強迫性障害だとはいえません。しかし、将来そうなるかもしれないし、すでに発症し、日常生活に多少の支障を来しているかもしれません。

それは、性格とか性癖とは違うのですか?
違います。強迫性障害は思考や行動にかかわる心の病気です。心の中では「なんて無意味でバカげたことをしているんだ」とわかっていて、やめたいけれど、ある「考え」(強迫観念) にとらわれて、そこから生まれる恐怖や苦痛、嫌悪感から逃げるための「行動」(強迫行為・儀式)がやめられません。
くり返し浮かぶ考えや行動によって、日常生活が立ち行かなくなる、あるいは人生の大きな部分を奪われることすらあります。「やめたいのにやめられない病」というのが、いちばんわかりやすい表現でしょう。そのとらわれ方は人さまざま。

強迫性障全日には、いくつかのタイプがあります。大きく分けると、

  1. 不潔恐怖・洗浄強迫
  2. 加害恐怖・確認強迫
  3. 縁起強迫
  4. 収集癖
  5. 不完全恐怖
  6. 強迫性緩慢

の6つで最も多いのが1と2す。

不潔恐怖・洗浄強迫は、手や体を何度洗っても汚れが気になり、手洗いや入浴などの洗浄行為が頻繁になったり、時間がかかったりする強迫性障害です。

加害恐怖・確認強迫は、例えば外出前にガスコンロの火を消したかどうかが気になり、何度も家に戻って確かめるなど、確認をくり返す強迫性障害です。

縁起強迫は、縁起の悪いことが頭に浮かぶと、それを打ち消す儀式に明け暮れ、生活が立ち行かなくなる強迫性障害です。

収集癖は、集めた物をどうしても捨てられず、部屋の中が足の踏み場もなくなる。あるいは今ゲットしておかないと2度と手に入らないかもと、不要な物をどんどん集めてしまう強迫性障害です。

不完全恐怖は、名前のとおり、すべてが完壁でないとダメな強迫性障害です。

強迫性緩慢は、不完全恐怖の確認を頭の中だけで行っているような強迫性障害です。すべてを完壁に行動するための事前確認や、ひとつひとつの動作の終了の確認を、納得いくまで守るため、行動を実行するまでに長い時問がかかります。

ある不潔恐怖・洗浄強迫の人は、少しでも手に汚れが付着したと思うと、執拗に手を洗い、ときには1時問も洗い続けます。
手洗いが終わると、あらかじめ準備しておいた新品のビニール手袋を、外側にさわらないようにしながらはめます。そこまでこだわるのは、絶対に汚れをつけたくない「聖域」があるからです。それは宝物だったり、自分の部屋だったり、ベッドだったりと、いろいろです

加害恐怖・確認強迫にもさまざまなタイプがありますが、共通しているのは、自分の過失による加害を恐れるあまり、無意味な確認を続けることです。

縁起強迫の人によく見られるのは、数字に関する縁起かつぎです。4は「死」、9は「苦」につながるからと、こうした数字を目にして不吉な予感を覚えると、それを打ち消すための強迫儀式を行い、行動が前に進まなくなります。

収集癖の人は、ため込んだ物を「あとで後悔するのでは? 」と捨てられなかったり、「今、手に入れておかなければ一生後悔するかもしれない」と不要な物まで集めてしまったり、収集癖というよりも「後悔恐怖」と呼ぶほうがしっくりくるかもしれません。

不完全恐怖の人は、自分で決めたルールや秩序が乱れることを極端に嫌い、わずかなズレや誤差も許しません。うまくいかないと何度も1つの行動をやり返したりします。自分が正しいことをしているかの確認をくり返し行います。

強迫性障害は、以前は精神科医の問でも、「治らない病気」とされていましたが、症状を正しく見きわめ、正しい治療を施すことで、強迫儀式をへらしたり、緩和させたりできることがわかってきました。
その治療法が「エクスポージャーと儀式妨害」と呼ばれる行動療法です。
1980年代から海外で研究が重ねられ、強迫性障害の中心的な治療法として確立されてきました。しかし、日本では、手間をかけずにおおぜいの患者さんに対応できる薬物療法が主流となり、精神科医の問になかなか広がらないのが現状です。

エクスポージャーはどんな意味でしょうか?
恐怖や不安を呼び起こす体験に、あえて身をさらすこと曝露」と訳されますが、正確には「さらす」という意味です。
儀式妨害とは、強迫儀式を妨害することです。特有のこだわりが強すぎる「強迫性障害」

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