前頭前野を知り、育み、脳を鍛える

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最近は、複雑な社会構造から自分で自分の感情をコントロールできない「キレる」子どもたちが、そして大人たちまでもが、大きな社会問題となっています。自分でお腹を痛めて生んだ子供に暴力を振るってしまう母親、父親もいるのです。

大人だけでなく、未成年による凶悪事件の増加は深刻です。赤ちゃんが生まれるときの脳の重さは約4000 g。それが1歳で倍の800 g、3歳では、1000gと急速に発達し、成人になるころには約11400 gとなります。

赤ちゃんのときの脳にはおよそ1000億個の神経細胞がありますが、身体の他の部分の細胞と違い、この脳の神経細胞は減ることこそあれ、増えることはないとされています。脳に刺激や情報が入ってくると、神経細胞にシナプスの芽が生えてきます。その芽に向けて他の神経細胞の神経繊維が伸びてきて、神経細胞同士がくつつきます。

「脳の発達」というのはこのように神経細胞同士がくつついてネットワークが広がっていくことです。さまざまな刺激や情報が与えられることによって、脳は発達していくのです。

脳が発達するうえで最も大切なのは、人間らしい行動をとらせるための司令塔である前頭前野の十分な発達です。人間は本能ではなく、前頭前野で考え、計画を立て、判断し、行動します。

キレるのは、この部分が未熟であるからと考えられます。そうならないために、10歳ぐらいまでに視覚、聴覚、触覚、喚覚、味覚の五感を存分に使った体験をさせることが必要です。

五感を介した刺激は情報となって前頭連合野に送られ、組み込まれます。テレビやゲームなどが視覚や聴覚だけを刺激する遊びであることも問題ですが、その遊び場は室内が中心ということも問題です。

実際に手や足を使って遊ばせて、バランスのとれた五感刺激を与えることが重要です。

さて、テレビゲームをしすぎると、人問らしい行動や判断力にかかわっている脳の前頭前野の機能に異変が起こるのに対して、よく噛むことはそれとは逆に前頭前野を活性化することが実験によってわかってきました。

人間の大脳が右脳と左脳とで働きが異なつていることは、すでによく知られているとおりです。右脳は、直感や情緒、総合的な思考や認識に、そして左脳は言語や計算などの論理的、分析的な思考とかかわっているとされています。

正常な歯の噛み合わせ能力を持つ健康な被検者に2分問、ガムを噛んでもらい、脳のどの部分が活性化するか、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調査すると、人間らしい判断力や感性、情緒をつかさどっている右脳の前頭前野が活性化されるという驚異的な事実がわかりました。

右脳の前頭前野の活性化はすべての年齢にわたって見られましたが、とくに高齢者においで、その傾向が一顕著でした。19〜73歳の男性20名、女性12名を被験者として、脳の働きが活性化した強さを平均値として示すと、子どもから大人、高齢者まで、よく噛んで食べるたびに、右脳の前頭前野がよく働きます。

つまり、よく噛むことは直感や情緒に関係する脳を養うことにもつながっているのです。一家だんらんや学校給食などの現場で、親や先生が子どもたちに独自の考え方、理念、倫理観などの話をしながら「しつけ」を行うことは極めて効果的だということは、この実験事実からもうなずけます。

食事とは食物を摂取することだけではなく、よく噛んで右脳の前頭前野が活性化しているときに、両親、先生や友人との会話がなされることで、子どもたちの情緒、優しさ、独創性などの人格が形成される絶好の機会なのです。

これは子どもに限らず、大人、高齢者でもまったく同じであり、食卓を囲む会話を大事にしていただきたいと思います。

「戟後最大の忘れ物」と呼んだ食のしつけの重要性が、この実験によって科学的に裏づけられた格好になりました。