イヤだと感じる仕事から解消していく

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外資系企業で英語を使って仕事をした経験が長い身としては、「モチベーションが上がる、下がる」という表現は、言葉の使い方が間違っていると思います。「To Be(なりたい自分)」を持っていれば、それに向かっていこうとする意欲が生まれる。それがモチベーションです。元気が出ないとか、仕事が嫌だとかいうのは、体調や気分、感情の問題であって、モチベーションとは別物です。

残念ながら、今の日本には〝TO Be〞を持っている人が少ない。これは大きな問題です。「To Be(なりたい自分)」がないということは、自分で自分をデザインできていないということ。「みんながそうするから」「そうするのが普通だから」という理由で、仕事をし、生活をしてしまっているのです。これでは当事者意識を持つことができません。「上司が悪い」「部下が悪い」「会社が悪い」「景気が悪い」と、被害者意識で物事を考えてしまいます。確かに、完全に自分で自分をデザインすることは難しい。会社に勤めるということは、会社の「To Be(なりたい自分)にぶら下がって生きるということです。

私がアップル・ジャパンの社長だったときは、スティーブ・ジョブズの「To Be(なりたい自分)にぶら下がって仕事をしていたわけです。独立した今から振り返ると、そう感じます。それでも、自分の置かれた環境のなかで、身の丈に合った「To Be(なりたい自分)を持つべきです。心得ておくべきなのは、「To Be(なりたい自分)に向かって直線的に進むことはできないということ。道筋は無数にあります。近づいているという実感が得られない、遠ざかっているように感じることも多いのです。ですから、「To Be(なりたい自分)に近づかないからといって、気落ちしたり、焦ったりすることはありません。また、人間の能力も、直線的に成長するものではありません。努力をしたら、そのぶんだけ成長を感じられるわけではないのです。あるとき、後ろを振り返つてみたら、自分の成長に気づく。そういうものです。

ところで、日本語で一般的に「モチベーション」と言われる、気分や感情について、次にお話ししましょう。


通信が発達している現在、気分や感情に影響する大きな要因の一つは、情報に埋もれてしまうことのストレスでしょう。これを解消するためには、仕事を速くして、嫌なことから先に、問題が大きくなる前に解決してしまうことです。たとえば、メールボックスを開いてみると英文のメールが届いていて「嫌だな」と感じる。そうしたら、後回しにするのではなく、真っ先に読んで返信するのです。そうすると、嫌な気分が少なくて済みます。また、仕事とは別に楽しみを持つことも大切。格好をつけることなく楽しめる趣味です。

それから、感情の振幅を小さくすることも重要で残嬉しいことがあったときに喜びすぎる人は、嫌なことがあったときに落ち込む度合いも大きいのです。喜びすぎないことが、落ち込みすぎないために必要だと思つています。振幅は小さく、トータルしてみると少しプラスの感情が上回る、というのが理想です。他人への嫉妬が、気分を悪くしていることも多いでしょう。そういうときは、こう考えてみてください。「あの人も、自分の知らないところで、大変なことを抱えているんだろうな」。おそらく、実際、そのとおりでしょう。そのことに気づけば、嫉妬も消えるのではないでしょうか。

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