次世代ロボット

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人と共存し、人のために働く次世代ロボットが急に現実味を増してきました。実際、自動運転を搭載した車などもこうした分野に分類されるのでしょう。

 

欧米ではグーグルやベンチャー企業らが本格的な開発に着手し、日本でもソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」など次世代ロボットへの関心が高まっています。従来のロボットは、自動車や電化製品などの工場で稼働する「産業用ロボット」がほとんどでした。これは製造ラインでスポット溶接や樹脂成形など単調作業を繰り返す、一種の製造用装置とえいるでしょう。

 

これに対し現在、開発が進んでいる次世代ロボットは、病院や介護施設などで患者の世話をしたり、倉庫や配送センターから荷物を送り届けたり、家庭で掃除や芝刈りをしたり、ときには私たち人間の話し相手になつてくれるロボットです。つまり過去にSF作家のアイザック・アシモフや手塚治虫らが思い描いたロボットが今、本当に現れよ、うとしているのです。

 

日本では、以前からホンダの「ASI MO (アシモ)」など、次世代ロボットの開発が進められてきました。しかし、ここに来て人問の頭脳を構成する神経回路網を工学的に模倣した「ニュートラルネットワーク」など超先端技術の活用と、巨額の資金力を兼ね備えた米グーグルが参入してきたことで、この分野の研究開発が一気に加速すると見られています。検索技術が頭うちになっているとは思えませんが資金力のある企業はやはりすごいです。

 

社会的な背景もある。日本や欧州など先進諸国では、少子高齢化の影響で今後、長期にわたる構造的な人手不足が懸念されています。特に医療・介護や流通・倉庫・宅配、さらに建設産業などでは既にその様相を呈しているのは周知のとおりです。

そこで人に代わって、あるいは人と協調して働く次世代ロボットが必要になつてくるのです。

 

この分野で最近、活発な動きを見せ始めたのがグーグルです。グーグルは昨年後半、日本の「シャフト」や米国の「ボストン・ダイナミクス」など気鋭のロボット・メーカーを次々と買収しています。ここにグーグル自身が得意とするAI (人工知能)を搭載して、次世代ロボットを実現しようと研究中です。

 

グーグルだけではありません。米国防稔省傘下のDARPA (国防高等研究計画局)は、原発事故現場のような危険な環境下で作業する次世代ロボットの開発コンテストを実施中です。また欧州でもロボット関連企業180社と欧州委貝会が共同で、「SPARC」と呼ばれる次世代ロボットの開発プロジェクトを立ち上げました。

ここでは2020年までに28億氾ユーロ(約4000億円)を投じて、医療や介護、家事、農業、輸送など広範囲の分野で次世代ロボットの研究開発を進める。これに関連する産業も含め、ビジネスの拡大により全体で24万人の雇用創出を狙うとされます。こうした巨大プロジェクトに刺激され、今、欧米のベンチャー企業を中心に、次世代ロボットの研究開発が熱気を帯びているのです。

 

そこでは次世代ロボットの頭脳となるAIに熱い視線が集まっています。特に「ディープラーニング」と呼ばれるAI技術は、最近ブレークしたばかりなので技術者の人材不足が深刻。現在、本格的なディープラーニング・システムを開発できるエンジニアの数は世界全体でも100人に満たず、その多くはまだ大学院生です。このため企業各社の問で人材獲得競争が過熱しており、その第一線で活躍するAIエンジニアには、NFL (ナショナル・フットボール・リーグ)プレーヤー並み、つまり最低でも数百万ドル(数億円)の年俸が提示されているようです。

 

ディープラーニングは、前述したニューラルネットの最新型です。そこには人間の脳の認知機構に基づく、「スパースコーディング」と呼ばれるアルゴリズムが実装されている。これまでにコンピューターの画像認識や音声認識、つまり「視覚」や「聴覚」の能力において、ずば抜けた性能を示してきました。今後は自然言語処理、つまり「言葉を操る能力」へと応用できることが、ほぼ問違いないと見られています。このディープラーニングは従来、ソフトウェアとして実現されてきたが、最近、これをプロセッサー、つ・まりハードウエアとしてチップ化する動きが盛んになってきました。

 

これは「ニューロモーフィツタ・チップ(脳を模倣したチップ)」と呼ばれ、米IBMが最近製品化したほか、米クアルコムなどライバル企業も急ピッチで開発を進めています。このプロセッサーを搭載すれば、外界の出来事を認識して器用に動けるばかりか、人とコミュニケーションもできる次世代ロボットの開発が可能になると見らているのです。

 

さまざまな仕事の現場から家庭、自動車まで、あらゆる社会・生活空間に次世代ロボットやそれに準ずる製品を投入し、そこから無数のユーザーの日常データを大量に取得。それをAIの一種である機械学習で解析することにより、ターゲティング広告の精度を高めたり、新たなサービスの開発に結び付けるのがグーグルの最終目標です。

 

また日本のソフトバンクも、ほぼ同じことを考えているようです。一方、日本の大手ロボット・メーカーは今のところ、従来の産業用ロボットがビジネスの中心です。。これを中国や東南アジアなど新興国市場に売っていくのが今後のメインで、逆にAIを搭載した次世代ロボットヘの関心はそれほど高くありません。が、ここで油断をすれば次世代ロボット市場をグーグルなど欧米勢に奪われる危険性がある。これを避けるには、今からディープラーニングなど次世代AI技術の開発体制を整えておく必要にせまられそうです。

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