日本は戦後に健康に欠かせない「食のしつけ」を忘れてしまった

生活習慣病がこれだけ日本で急増してしまった背景には、食生活の変化があります。多くの家庭では「早く食べて、学校へ、塾へ、会社へ」と時間に追われて早食いせざるを得ない状況が蔓延しています。

やわらかくておいしいものでなければ食べないという軟食グルメ志向も年々強くなってきているようです。そして、間食は食べ放題となってしまった結果、朝昼晩の定時の食事どきに空腹感がない子どもや若者たちが多くなりました。

さらに、一家のだんらんで食卓を囲むことが少なくなり、家族の食事時間がバラバラの「孤食化」傾向が顕著になってきたのです。

実は、これらすべてが生活習慣病の引き金になっているのです。かつて子どもは、食事中におじいちゃん、おばあちゃん、あるいは両親から「よく噛みなさい」「好き嫌いはダメ」「間食は控えめに」などと口うるさくいわれてきたものです。これらは、どの家庭でも大切にした日本の伝統的な「食のしつけ」でした。それと同時に、懐かしくも頑固な親父(母親)の説教のオマケもあったことでしょう。

食卓は、親子がともにコミュニケーションをとり、子どもにとっては倫理観が養われる大切な場であったのです。ところが、今では、昔から私たちの祖先が大切にしてきた食の経験則、「何をどのように食べれば元気に生きられるか」のほか、生きるうえでの人生観や考え方を語り継ぐという「しつけ」を忘れた家庭が増えています。

その結果、正しい食習慣を学習する機会が与えられずにスナック菓子やファストフードで育った若い世代を増やし、やわらかいグルメ食を好む現代人を増やすことになったのです。やわらかい食物が好まれる傾向や早食いは、よく噛まないで食べることにつながります。

そして、よく噛まないで食べると、満腹感が得られず、そのために食べすぎてしまい、肥満へと直結するのです。

また、歯やあごが鍛えられないため、歯が弱くなり、以前にも増して噛まなくなります。さらに、顔の筋肉をあまり動かさないため、脳への信号の伝達が十分に行われず、脳が活発に働かないため、ストレスをためやすくなるのです。

その行き着いた先が、生活習慣病という現代人に特有の病気なのです。このように、家庭での「食のしつけの喪失」こそが、現在の国民病ともいえる生活習慣病をつくり出した「戦後最大の忘れ物」 といえるのではないでしょうか。

そして、「食のしつけ」の中でも重要なのが、「よく噛んで食べる」ことなのです。最近の研究で、食物をよく「噛む」という行動が、実は生活習慣病を予防するのに非常に役立っているということが科学的に解明されてきました。それでは、「よく噛んで食べる」と、どのような効果があるのでしょうか。