早期発見、早期治療が失明を防ぐ
緑内障と開くと、すぐに失明を連想し、恐怖にかられる人が少なくありません。確かに、緑内障は失明の可能性もある病気です。ただ、それは治療もせずに放置していた場合のことです。
現在の緑内障治療は、以前に比べて薬物治療の面でも手術の面でもずいぶん進んでいます。何より重要なのは早期発見。できるだけ病気を早く見つけ、適切な治療を受ければ、簡単に視力を失うことはありません。早期発見の大切さは、どの病気にもいえることですが、緑内障の場合はほかの病気に比べて、その意味合いがやや異なります′。病気には、治療によって侵された細胞や症状が元の正常な状態に戻るものと、戻らないもの(不可逆性) とがあります。緑内障は、戻らないタイプの代表的な病気です。
緑内障は、眼圧の圧迫によって視神経がこわれることから起こるもので、症状が進むにつれ視野(見える範囲) が狭くなっていきます。そして、いまの医学では、失われた視野を復元させることはできません。
しかし、視野が失われる前ならば、薬や手術などで残された視野を保持する、進行を遅らせることは十分可能です。
それをどの段階でスタートさせることができるか?緑内障の治療では、これがいちばんの勝負どころになるのです。
現在、早期の発見率は徐々に向上しているものの、眼科における緑内障検査の受検者数から見ても、全体としてはまだまだ遅れているのが実状です。
日本緑内障学会が行った大規模な疫学の結果によれば、わが国では40歳以上の20人に1人が緑内障で、その90% が未発見と推定されています。
早期発見率が伸びない主な理由としては、以下の理由があげられます。
- 緑内障の大半を占める慢性緑内障には、自覚症状がほとんどない。たとえあっても、片側に120万本もある視神経が少しずつこわれていくために変化が緩慢で、あまり気にならない。
- 片方の視野に異常が出ても、もう片方の目で無意識にカバーしてしまうので、日常的に不都合を感じない。
それでは、緑内障をできるだけ早い段階で発見するにはどうしたらいいのでしょうか。
40歳を過ぎたら健診を受ける
ひとくちに早期発見といっても、厳密にはいくつかの段階があります。
最も早い段階でチェックできるのは、眼科で視神経の状態を検査してもらうことです。線内み障専門医が診れば、緑内障にかかっているかどうか、すぐにわかります。
視神経に異常が見られても視野検査で異常がなければ、病気とまではいえません。いわば緑内障予備軍ですが、この段階から経過観察を行い、ごく早期で発見されれば安心です。
よく、「自分で緑内障を早期発見できないか? 」という質問を受けますが、私は自己チェックを基本的に賛成できません。どんな病気でも素人診断は危険ですし、急がば回れで、少々めんどうでも医師の検査を受けるほうが、けっきょくは早くて正確だからです。とくに緑内障の場合は、それがいえます。
ただ、しいてあげれば、テレビノイズによるチェック法があります。
テレビ( アナログ) をあきチャンネルに合わせると、ザーという音とノイズとともに、白黒の細かい粒子が画面いっぱいに流れています。
このノイズの点滅速度や、白黒のコントラストが緑内障で最も傷つけられやすい視神経細胞の異常を検出するうえで、すぐれた方法であることは、すでに確認されています。
ノイズ画面が均一に見えない、ノイズが見えない部分がある、あるいは雲や水がかかったように見える、などがあれば、視野が障害されている可能性が高いといえます。
この方法は、元々は自覚症状のない早期緑内障の患者さんに、自分の視野がどのように変化しているかを、できるだけ具体的に自覚していただくために、研究・開発したものですが、早期発見にも十分役立つでしょう。ただし、これで得た結果はあくまでも目安であり、決して確実とはいえません。少しでも異常を感じた場合はもちろんですが、何もない人でも40歳を過ぎたら1~2年に1度は検診を受けるよう にし た いも のです 。
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