ツボの中でも足の指のツボは脳の働きとリンクしている
目の不調、老化の原因が自律神経の不安定さからきていることは紹介しましたが、自律神経が乱れると、疲れ目・ドライアイ・視力低下など「目の心身症」を引き起こしやすく、緑内障になる人も増えているのです。
ツボ刺激の特徴と自律神経の乱れを正す効果について紹介したいと思います。東洋医療では、内臓や器官の働きと深くかかわるツボを結ぶラインが、体の中を走っているという考え方をします。このラインを経絡といい、全部で14本あります。
そして、ある内臓や器官の働きを左右する「気」、つまり一種のエネルギーが経絡を通過するという考え方をします。経絡とツボの役割を電車にたとえれば、経絡は五臓六腑に通じる路線で、ツボは駅といえるでしょう。
14経絡に分類されたツボは正穴といい、全部で360個以上あります。ほかにも奇穴といって、確実な効果が経験から知られたツボも多数あります。
ところで、14経絡のうちの6つは足の指先が起点、残り8つのうち6つは手の指先が起点です。経絡の発着点に当たる足や手の指先のツボは、気の出入り口という意味で井穴と呼ばれています。
井穴は、そこを刺激すれば全身を刺激することのできる、大変便利なツボなのです。特に足の指先の皮膚は、温冷覚・触覚・痛覚・圧覚などのセンサーが数多く集まっていて、非常に敏感な部分です。
足の指先のツボに加えた刺激は、大脳皮質の感覚野という部分に直接送られ、脳の働きが活発になることが研究でわかっています。大脳皮質
の感覚野は、脳の中でも非常に大きい容積を占める部分です。
足の指は手の指に比べて効果が大きく目の不調や老化に有効
自律神経の中枢は、脳の視床下部という部分にあります。足の指先のツボへの刺激が大脳皮質に伝えられると、その部分の神経を介して自律神経が調整され、体の自然治癒力を高める力が働きます。
すると、自律神経の失調によって引き起こされた目の不調や老化をはじめ、さまざまな病気・症状が改善されるのです。また、足の指先には無数の末梢血管が分布しています。指先のツボを刺激すると末梢血管が拡張し、そこへ酸素と栄養をたっぷり含んだ新鮮な血液が流れ込みます。それと同時に、細胞で使用済みになった二酸化炭素や乳酸などの老廃物を含む古い血液は、速やかに回収されて心臓へ返されます。
すると、全身の血行が促進され、血流不足から起こる筋肉のこりが解消されるのです。目の不調や老化も同様のしくみで解消します。足の指先のツボを刺激すると、肩・首を通りないけい顔面や脳に血液を運ぷ内頚動脈の流れが促されます。
つまり、まばたきや涙の分泌などで酷使されている目の周りの筋肉のこりが解消されるのです。同時に、首・肩の筋肉や、頭皮のこりも解消されます。
足の指先のツボは、手の指先に比べて、ものに触れる機会が少ないので、外からの刺激に対して鋭敏です。その分、より大きい効果が得られると考えられます。足の指先にあるツボは、一般の人にも見つけやすいうえ、押したりこすったりする単純な刺激で効果が現れます。目の不調や老化を回復させたり、目の周囲の血行をよくしたりする効果が期待できるのです。
ストレスが原因で疲れ目、ドライアイになる人が急増中
子供のころ、学校で嫌なことがあった翌朝、おなかが痛くなり学校を休んだ経験を持つ人は、誰にでもある経験だと思います。これは決して仮病ではなく、精神的ストレスが原因でほんとうに腹痛が起こることがあるのです。
このように、心の悩みや鬱屈が原因となって現れる体の異常を、心身症といいます。
実際、大人の心身症は、人間関係の悩み、お金の問題、男女問題、仕事の忙しさ、自分に合わない職場や生活環境、将来への不安といった原因が複雑に重なる分、症状も腹痛にかぎりません。
最近増えている目のさまざまな否快症状も、原因は精神的ストレスにある場合も多いのです。具体的には、目が疲れる、目の焦点が合わせにくい、夕方になると視力が低下する、目が乾く、視野が狭くなる、瞳を動かしにくくなる、などの症状となって現れます。
精神的ストレスが原因で起こる目の異常では、頭痛・肩こり・イライラ・消化不良・食欲不振、それに不眠など、目とは直接関係なさそうな症状を伴うのが、大きな特徴です。
また、ワープロやパソコンの画面を見ながら行う日々の業が原因で、目の疲れや痛みが起こるVDT症候群という病気も急増しています。
疲れ目軽減のためにVDT機器を使った作業環境を整える(パソコンのモニターの調節)
このVDT症候群も、ストレスからくる日の異常の1つと考えていいでしょう。
ちなみに現代人に急増しているドライアイも、このVDT症候群が引き金になることがあります。ストレスによって引き起こされる目の異常を、一部の眼科医は「目の心身症」として治療しています。
目の異常は自律神経の異常で起こりツボ刺激が最も有効
最近、目の心身症がクローズアップされる以前から、「目も頭も肩も背中も痛い」「気持ちが落ち込み、目がチカチカしてピントが合わない」「やたらに目が疲れて胃腸の調子も悪い」と、訴えてくる人はたくさんいました。
そうした患者さんは、たいてい仕事や家庭の問題で悩み、大きなストレスを抱えています。 ストレスから自足伴神経のバランスが崩れ、目の異常をはじめ、さまざまな不調を引き起こすケースが急増しています。いわゆるテクノストレスが原因となっているので現代人に多いのも特徴です。
ところで、目の心身症に深くかかわっている自律神経とは、いったいどのような神経なのでしょうか。起きているときだけでなく寝ている問も、心臓は規則正しく収縮と拡張をくり返して、血液を全身に送っています。
肺も、一定のリズムで呼吸活動を行っています。それ以外の内臓や血管・ホルモン腺の働き、発汗・瞳孔の調節、消化液の分泌、皮膚の新陳代謝など。体のあらゆる器官や機能に対して、それぞれのリズムで活動させている神経を「自律神経」といいます。
「心身症」と「自律神経失調症」の異なる点
体の諸器官の働きは、私たちの意思とは無関係に、自律神経によって管理されています。ところが、ストレスがたまると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
自律神経のバランスが乱れれば、体の器官の働きにも乱れが生じて、さまざまな不快症状が現れます。頭痛・肩こり・不眠・胃腸障害などを伴う症状です。
自律神経失調による目の異常は、目薬をさしたり日のマッサージを行ったりしただけでは、なかなか治りません。そんなやっかいな目の異常も、東洋医学のツボ刺激を行えば改善する例が多いのです。