唾液の効能3「消化を助け、病気を防ぐ」

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よく噛んで食べることの基本的な効果に、「食物を細かくすり潰す効果」「唾液と混ぜる効果」の2つがあります。いずれの効果も、胃での消化を助けるためにとても重要です。消化するということは、もともと自分の体をつくつている構成要素ではないものを取りこ
り込んで自分の体の一部にしてしまう作用です。

本来、人問の体には、自分の体の構成要素ではないものが体に入ってくると、それを「異物」とみなして攻撃する働きがあります。これが免疫という生体防御機構で、体を守るための大切な働きの1つです。

この免疫システムは、まず第一に、外部から栄養を摂取しなければなりません。消化するということは、単に食物から栄養を吸収するということだけでなく、「異物」が持っている抗原としての働きが完全に消失するまで、食物を分解することでもあります。

食物の中に存在する分子構造で人にはない構造を抗原性決定群といい、これを破壊することが消化の重要な役割なのです。その大切な働きをする胃腸をしっかり手伝っているのが、歯(咀嚼)と唾液なのです。胃に入るまでに、食物が細かくなっていればいるほど消化しやすくなるというのは、誰でもわかる理屈です。しかもそれが、唾液というネバネバしたオブラートで包まれていれば、食道や胃への刺激も弱くなります。そのオブラート役をしているのが、唾液の成分の1つであるムチンという糖とタンパク質の複合体です。

よく噛めば食物は小さくなりますが、その1つ1つをムチンがきっちり包み込んでいるのです。人が口にする食物はそれぞれ、熱い、冷たい、辛い、苦い、しょっぱいなど、かなりの刺激性を持っています。味覚を楽しむのは脳なので、これらの感覚刺激は食味として脳にとってはうれしい要素なのですが、食物を分解して「自己化」しなくてはならない胃にとってはありがたいものではありません。

むしろ、刺激性の強いものは食道や胃壁を荒らす敵なのです。そこで、胃への刺激を少しでも減らそうと活躍しているのがムチンというわけです。ですから、塩辛とかキムチなどの刺激物が好きな人は、食べる際はとくによく噛むことが大切です。

辛さや苦さを味わうのは、口の中だけにとどめるということです。よく噛めば、脳も十分満足します。しかも、そうしている問に、唾液中のムチンががんばって刺激物をオブラートのように包み、飲み込みやすく、しかも胃に負担をかけないようにしてくれます。こう考えると、よく噛まないで、唾液が分泌されないうちに食物を飲み下してしまうことや、酒類の一気飲みがいかに体に悪いかがわかるでしょう。

また、熱いカレーなどをほとんど噛まずに飲み込み、食道で熱くてたまらず、あわてて冷たい水を飲むような食べ方は、食道がん、胃がんの原因にもなりかねませんし、胃腸の働きを低下させる最悪の食習慣といえます。

歯科医院を訪れた患者が、胃腸を悪くしているケースは少なくありません。歯が悪くなると、「よく噛めない→ 食物の大きな塊が完全にムチンにくるまれずに胃に入る1刺激物が胃壁を荒らす」と、絵に描いたような悪循環の図式ができあがります。

ですから、歯が悪くなれば、当然、胃腸も悪くなるのです。少しくらい歯がうずいても、なかなか歯科医院に行こうという気にならず、しばらく放っておく。するとそのうち胃が悪くなつてくる。それはよく噛めないことが原因だったわけです。歯と胃は連動していて、互いに助け合っていることを忘れてはなりません。

唾液分泌のメカニズムと唾液の効能7項目

唾液の効能2「細菌に対抗」

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唾液には、細菌と闘う成分がいろいろ入っています。食物を通じて人間の体には外から細菌が入り込んで来ますが、唾液には抗菌性のある成分が含まれているため、細菌の発育を抑制して体を守るほか、口臭予防の役割も果たします。

その中の一つにIgA (免疫グロブリンA)があります。唾液に分泌される抗体で、外から入ってくる細菌の発育を初期段階で抑制する作用があります。初乳にとても多く含まれているとされ、生まれたばかりの赤ちゃんを細菌の感染から防ぐという重要な役割を担っているのです。

唾液には、常にIgA (免疫グロブリンA)が分泌されています。動物がケガをすると、よく傷口をなめたりします。唾液には抗菌作用があるということを、長い問の経験で知っているのです。

このほか、唾液には、味覚を敏感にする成分、タンパク質やデンプンを分解する成分なぞ、さまざまな成分を含んでいます。

唾液に含まれる主成分と役割

外分泌

  • ムチン...食物を嚥下しやすくする
  • アミラーゼ...デンプンを分解し、麦芽糖にする
  • リゾチーム...抗菌作用
  • ペルオキシダーゼ...発がん物質の作用を弱くする
  • シスタチン...たんぱく質分解酵素阻害作用
  • スタテリン...カルシウムと歯を強くする
  • ガスチン...亜鉛と結合して味覚感覚をあげる
  • ラクトフェリン...鉄分と結合して作用し、細菌の育成を抑制する
  • アルブミン...口の中を滑らかにして乾燥を防ぐ

内分泌

  • EGF(上皮成長因子)...皮膚、口腔粘膜、胃腸、血管などの細胞の増殖
  • NGF(神経成長因子)...神経節や神経穿刺の発育促進

唾液分泌のメカニズムと唾液の効能7項目

唾液の効能1「再石灰化作用が虫歯を防ぐ」

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最近は歯みがきのCMなどで「再石灰化」という言葉を耳にすることが多くなってきました。

再石灰化というのは、虫歯菌などがつくった酸で溶かされた歯の表面のエナメル質のハイドロキシアパタイト(無機成分)が、唾液などの働きで、再び歯の表面に形成されることです。

食事をとると、歯の表面についたプラーク(歯垢:口の中の細菌がつくり出した物質の塊。歯の表面や根元につくネバネバした皮膜のこと)。

そして、プラークの中の酸性度( pH)がおおむねpH5.4以下と高くなると、ハイドロキシアパタイトが溶け始めます。これを「脱灰」といい、虫歯の始まりとなります。

こうして口腔内は酸性になりますが、なんと唾液の働きによって40〜60分ほどで歯の表面の酸性度は中性になるのです。それで、一度溶かされたハイドロキシアパタイトが歯の表面に戻るのです。これを「再石灰化」といいます。

このように、歯の表面は、常に脱灰と再石灰化を繰り返しているのです。甘いものを好み、問食の多い人に虫歯が多いのは、脱灰されている時間が長く、再石灰化の時問が短くなってしまうためです。

ですから、唾液が十分に分泌できるようにして、「脱灰」と「再石灰化」のバランスを保ち、再石灰化能力を高める工夫をすれば虫歯を防ぐことができるのです。また、唾液中には、歯を強くするタンパク質が含まれています。スタテリンというのですが、これがだんだんと歯にしみ込んでいくと、歯がだんだんと固くなっていきます。

この成分は、酸に対する抵抗力があるので、歯を虫歯になりにくくさせているのです。食事をすると、口の中は酸性になるので、歯の表面が、わずかですが溶けてしまいます。歯のエナメル質はとても固いのですが、困ったことに酸にはめっぼう弱いという弱点を持っているのです。

食事をするたびに溶けていては、すぐに歯がボロボロになってしまいます。これを防いでいるのがスタテリンで、この成分により、唾液は歯を引き締めているのです。

唾液分泌のメカニズムと唾液の効能7項目

唾液分泌のメカニズムと唾液の効能7項目

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食物が口の中に入って阻噛を始めると同時に、唾液の分泌が始まります。その唾液は

  1. 消化酵素を助ける
  2. 刺激のあるものが口の中に入ったときに分泌量を増やして刺激を弱める
  3. 絶えず口の中を流れて、歯や粘膜の汚物を洗い流し、口腔内を清潔に保つ

3つの中で3が一番大事な働きです。唾液腺には三大唾液腺(耳下腺、顎下腹、舌下腺) と、そのほか、口腔粘膜のあちこちに小さな分泌腺が分布しています。

唾液腺でつくられた唾液は、上顎第一大臼歯の頬粘膜、舌の下側の根元のほうにある小さな穴から出ていますが、分泌される唾液は、つくられる腺組織によって性質が異なります。

耳下腺でつくられる唾液は粘り気がなくサラサラしていますが、ほかの腺組織は粘りのある液を分泌します。こHれらの唾液腺は、交感神経と副交感神経に支配されているため、それをつかさどる自律神経と深いかかわりがあります。

食事によって、これらの唾液腺から唾液が分泌される具体的なメカニズムはこうです。

口の中に食物が入ると、食物から溶け出した成分によって、舌の粘膜が刺激を受け、口腔内で一定の食物感覚を得ます。すると、これを知覚する神経が刺激され、情報が脳に伝達されて唾液が分泌されます。

この過程で、自律神経の働きが重要になってきます。唾液腺は副交感神経と交感神経の支配を受けていますが、主に脳にある唾液核(延髄と橋との接合部付近)からの副交感神経の刺激で、唾液分泌の調節を行っています。

味覚や食物を噛むなどの機械的刺激は、この唾液核を興奮させ、唾液を分泌させます。同時に、精神的なイライラや恐怖なども唾液に影響を与えます。

たとえば、「生つばを飲む」という表現がありますが、精神的な緊張によって唾液が出にくくなり、のどが渇くために起きる現象です。これは、従来考えられていたような直接的な交感神経による分泌抑制ではなく、感情や情緒などがかかわる中枢神経系の上位中枢から唾液核への抑制作用によって起きる現象なのです。

さて、「つば」としてあまりイメージのよくない唾液ですが、実は私たちが普段気がつかないすばらしい数々の役目を果たしています。その1つ1つを紹介します。

代表的な7つの唾液の効能

  1. 再石灰化作用で虫歯を防ぐ
  2. 細菌に対抗
  3. 消化を助け、病気を防ぐ
  4. 発がん物質の働きを抑制
  5. 「味がよくわかる」
  6. 細胞を増やし、体が若返る
  7. より女性らしさ、男性らしさを

唾液は人問に には欠かすことのできない極めて重要な体液

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唾液のことを私たちは一般的には「つば」と呼んでいます。この「つば」という言葉には汚いもの、悪いものというイメージがついて回ります。

嫌な相手に「つば」をかけるのは本当に嫌いな意思表示でしょう。ケチな人を指して「つばも出さない」という表現もあります。また、「天につばする」ということわざも、他人を害しようとしてかえつて自分の身を損なう、つまり、上を向いて唾を吐けば唾が自分の顔に落ちてくるというように、「つば」は汚いイメージで捉えられがちです。

「人間の体液で大切なものは? 」こうした質問をすると、、多くの人の順位は、1位、血液、2位、尿、3位、唾液という結果になります。

これは唾液が生体で非常に大切な役目を果たしているのにもかかわらず、一般にはそれが理解されていないことを表しています。私にすれば、単に理解されていないとか評価されていないというより、むしろ「とんでもない冤ざ罪」といえるくらいです。

唾液は汚いものという悪い風評を払拭し、人間にとって重要な役割を担っていることを正しく理解してもらいたいと思っています。

人間にとっての体液で大切なもののナンバーワンは唾液なのです。さて、どなたもご存知のように、血液は、全身の臓器や細胞に栄養や酸素を供給し、老廃物や二酸化炭素を運搬・除去するという重要な働きをする、人問にとって最も大切な体液です。

血液が通わない組織は生きていけません。また、尿は、血液が腎臓の糸球体という毛細血管でろ過された体液で、1日の排泄量は約1000~2000cc程度です。

腎臓から膀胱に流れていく尿細管で、選択的な再吸収によって、主にタンパク質や筋肉の代謝産物である尿素、尿酸、クレアチニンや多の老廃物などが濃縮されています。

尿の基本的成分は血紫(血液から血球成分を除去したもの)と類似しています。いずれも細胞の外側を流れる体液(細胞外液)ですから、血液と尿の共通した性質として、薄めの塩味があるということが挙げられます。

では、唾液はどうでしょうか? もし、「今日の唾液は少し塩味が強めかな? 」などと感じた人は何か体に異常があると考えなければなりません。おそらく、口内に炎症か出血があるものと思われます。

唾液は、血液や尿とはまったく異なる体液です。三大唾液腺である耳下腺(耳の下側)、舌下腺(舌のつけ板)、顎下腺(下あご)から、それぞれの導管( パパイプ) を通って、上顎第一臼歯の頻粘膜、舌の下側のつけ椒近辺から口の中に分泌されます。唾液腺の細胞では、毛細血管から栄養をもらって、唾液をつくります。細胞膜の一部がシャボン玉のようにふくれて、次々に細胞内の体液を取り込み、細胞外に放出したものが唾液の主成分です。

これを体外に放出するので、「外分泌」と呼んでいます。つまり、唾液は自分の細胞内液であり、「液化した自分」ともいえます。次に、唾液の成分の一部は再び毛細血管へ呼び戻され、全身に運搬されていきます。

これは「内分泌」と呼ばれ、唾液由来の重要なホルモンを全身に供給するための非常に大切な仕組みです。ある医学書によると、人間の顎下腺は睾丸とほぼ同じ重量、耳下腺は畢丸の約2倍、舌下腺は畢丸の3分の1なので、こ」れら三大唾液腺は合わせて畢丸の3.78倍の重量になると報告しています。

これは大変興味深い数字です。唾液腺は、生殖やホルモン分泌に大切な役割を果たしている畢丸よりも大きな分泌臓器でありながら、そこから分泌される唾液は、汚いとか、食物を飲み込むための水分程度にしか考えられていないのです。このように誤った歴史的先入観を変えてもよい時代になつてきました。

実際のところ、唾液がなくても、すぐに死ぬことはありません。しかし、ようやく最近の研究で、健康な活力をつくり出すために、唾液は非常に重要な働きをすることがわかつてきました。

唾液は、人体というシステムを円滑に維持・向上させる役割を担っていることがわかってきたのです。とくに、私たちがイキイキとした活力のある健康を維持するためには、唾液は血液や尿と同じように、あるいはそれ以上に重要な体液なのです。唾液が必須の水源地であるということは、強調してもしすぎることはありません。

ヤケ食いでデブにならないためには

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「噛む」とストレス解消になることがわかりました。しかし、悪い応用の仕方をすると「ヤケ食い」になってしまいます。

ストレス解消法の1つとしての「ヤケ食い」についてもしておきましょう。精神的なプレッシャーや障害があると交感神経が緊張しますが、「噛む」ことはストレスを感知する中枢である一局桃体の神経活動を抑制するため、ストレスを和らげてくれます。

そこで、食物なら何でも手当たりしだいに食べまくるのが「ヤケ食い」で、緊張状態から脱出するための行動として知られています。ある製薬会社の調査によると、20〜30歳代の社会人女性の約64% が、ストレスを紛らわすためにドカ食いをしたり、大好きな甘いものへ依存したりすることで、太った経験があると回答しています。

一方、噛むだけでなく、甘いものをとることによってもイライラを解消することができます。イライラすると、脳内のセロトニンという物質が減少します。ところが、甘いものをとることによって、セロトニンは正常レベルにまで回復し、イライラが収まることが動物実験などでわかっています。

つまり、イライラが募ってマイナスの感情がわくと甘いものが欲しくなるのは、自己防衛的な反応でもあるといえます。さて、甘いものの「ヤケ食い」というストレス解消法は安全なものなのでしょうか。「ヤケ食い」はストレス解消には効果がありますが、その反面、「大食い」による胃腸障害や肥満などの多くのマイナス面があるので、絶対に「お勧め」することはできません。

以前に食べてストレスを解消できた、という経験が蓄積され学習されると、それ以後はストレスを感じるたびに、「あのとき、食べてストレスを回避した」という記憶が呼び起こされます。そうして形成される「ストレス→食欲→ストレス→食欲」という悪循環によって、さらに食べたくなり、肥満症への坂道を転がり落ちてしまうのです。

もし、どうしても食べ過ぎてしまった時には、食べなかったことにしてくれる健康食品がありますので上手に活用するといいかもしれません。

「パクパク 酵母くん」これなら!好きなものを思いっきり食べられる

人問が生きている以上、ストレスから完全に逃れることはできません。だからといって、すべての人がその影響で心身を病んでしまうわけではありません。同じ状況でストレスを受けても、その影響を受けやすい人と受けにくい人がいます。

同じ人問関係に身を置いていても、一人で悩んで内に抱え込んでしまうと、うつ病をはじめとする心の病を招きやすくなる傾向があります。また、気分転換がじょうずにできず、四六時中、仕事のプレッシャーを感じていたら、その重さに潰されてしまいます。

また、仕事上のミスや上司の叱責にも、気持ちを切り替えて前向きに立ち向かえないと、さまざまな病気を引き起こしかねません。ストレスに心身が振り回されないような努力や工夫が不可欠です。

そんなとき、「よく噛むこと」を思い出してください。ガムを2分間ほど噛むと、ストレスを感知する中枢である扁桃体の神経活動が抑制されます。したがって、よく噛むとストレスの影響を効果的に和らげることができるので「それ以上のヤケ食い」が起こりにくいのです。

ですから、食事をいつもよりたっぷり時間をかけて、よく噛んでゆっくり味わいながら食べてみる、あるいは、イライラしたりプレッシャーに押し潰されそうになったりしたらガムを噛んでみる、といったことを試してみてはいかがでしょうか。それによって、ストレスを回避できる経験が蓄積されると、「あのとき、噛んでストレスを回避した」という記憶が脳の中で自然に呼び起こされるようになり、「ストレス→噛む→ストレス→噛む」という良好なサイクルをつくれるに違いありません。「食欲」を「噛む」にうまく置き換えることがポイントです。

現代人のストレス

大リーガーや兵士がガムを噛む理由

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ストレスを上手に回避することは、大切な生活の知恵ですが、ストレスを解消するための最も身近で一般的なものにガムがあります。

プロスポーツの選手たちが試合に臨むとき、口の中でガムを噛んでいる姿をよく目にします。プレーヤーたちは、噛むことによって、緊張感やストレスを解消し、気持ちをリラックスさせているのです。

野茂英雄投手がメジャーリーグに入団して以来、イチロー選手、松井選手と次々に日本の優秀な選手が入団したため、アメリカのメジャーリーグのテレビ中継が一気に増えました。

そこで、選手だけでなく、監督までもガムを噛んでいることに気づかれた方も多いと思います。なぜガムなのでしょうか。四六時中、ガムを噛んでいるのは行儀が悪いように感じるかもしれませんが、実はガムをしっかり噛むことによって、緊張を和らげる化学物質が脳内に増加し、ストレスを抑えてくれることが実験によってわかってきたのです。

ガムチューイングには、運動反射能を高める、筋力を高める、ストレスを抑制する、緊張感を和らげるといった多くの効果があります。

大リーガーたちは、極度の緊張状態を和らげ、ベストの運動能力や知力を発揮させる効果を実感しているので、驚くほど懸命にガムを噛んでいるのです。

さらに、兵士の例も挙げておきましょう。湾岸戦争のときのことです。戦闘に突入する際、ガムを噛んで緊張感を和らげた米軍兵士には、海馬の萎縮(その極度な萎縮は認知症につながるとされています) はほとんど見られなかったのに、噛まなかった兵士には著しく萎縮が認められたという驚くべき事実が発表されました。

これは、まぎれもなくストレスによる神経細胞死の結果です。ぁなたも、勝負をかけたプレゼンテーションの前に緊張したり、仕事がはかどらずイライラしたりしたときには、お試しあれ! ガムを噛めば、きっと緊張を和らげ、ストレスを解消することができます。

人間にとってのストレス | 現代人のストレス
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現代人は4方をストレスに囲まれている

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厚生労働症が20〜60歳代の働く人を対象に行った年「労働者健康状況調査」によれば、全体で80.6% が「強い不安、悩み、ストレスがある」と答えています。

そのうち、男女ともに、他の年齢層と比較し、突出しているのが30〜40成代で、男性の30歳代が紳89.6% 、40歳代が90.3 % 、女性の30歳代が93.4 % 、40歳代が94.3% と多くなっています。

ストレスの内容は、仕事の質や量、適性の問題、職場の人間関係、昇進・昇給の問題、雇用の安定性・会社の将来性が目立ちます。

女性の場合は職場の人間関係が圧倒的にトップになっています。対象年齢や職業の有無を限定しない「国民栄養調査」では、ふだんの生活でストレスを感じている人は、男性で76.9 % 、女性で84.2% という驚異的に高い数字が出ています。

そして、そのようなストレスにさらされているときに、男性の3割以上、女性では5割以上の人が、食事量に明らかな変化があるという回答をしています。

また、国民1人1日当たりの栄養素等の摂取状況では、エネルギー摂取量に占める脂質の割合は、20〜40歳代で成人の適正比率の上限とされる25% 上回り、食塩摂取量では15歳以上の男性、20歳以上の女性が成人の目標摂取量「1日10 g未満」を超えているという深刻な結果が出ています。

不安定な社会情勢や急速な科学技術の進歩、ライフスタイルの変化に対応するために精神的、時問的な負担が増えたり、価値観が多様化して他人とのコミュニケーションが難しくなったために人間関係で悩んだり、家族関係が複雑化して悩みを一人で抱え込んだりするなど、確かに現代社会ではストレスを避けて通ることは至難のワザです。

しかし、今、このようなストレスが原因となって、さまざまな病気を引き起こし、とくに全身の不調が気になるという自律神経バランスが乱れる症状を訴える人が増えています。

最近、脳の中の扁桃体がストレスを不快情報として捉える初期発動の座になっていることが、神経心理学的に明らかになりました。この扁桃体は海馬の近くにあり、人間の感情に関係する中枢だと考えられています。

そして、ストレス刺激に応答した扁桃体の活動が、よく噛むことによって抑制されることも明らかになってきました。

つまり、噛むことによって、受けたストレス刺激を軽減することができるのです。脳科学分野と医用工学分野の専門家と連携して、どのようなしくみでよく「噛む」ことが「心を守る」のかという研究に取り組んでいます。

この研究は、心身的ストレスの解消法や社会的ストレスへの対応策、さらに「心を守る」という観点からの育児、そして教育についての有効な助言など、幅広い分野で活用されることと期待されでいます。

現代人のストレス
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前頭前野を知り、育み、脳を鍛える

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最近は、複雑な社会構造から自分で自分の感情をコントロールできない「キレる」子どもたちが、そして大人たちまでもが、大きな社会問題となっています。自分でお腹を痛めて生んだ子供に暴力を振るってしまう母親、父親もいるのです。

大人だけでなく、未成年による凶悪事件の増加は深刻です。赤ちゃんが生まれるときの脳の重さは約4000 g。それが1歳で倍の800 g、3歳では、1000gと急速に発達し、成人になるころには約11400 gとなります。

赤ちゃんのときの脳にはおよそ1000億個の神経細胞がありますが、身体の他の部分の細胞と違い、この脳の神経細胞は減ることこそあれ、増えることはないとされています。脳に刺激や情報が入ってくると、神経細胞にシナプスの芽が生えてきます。その芽に向けて他の神経細胞の神経繊維が伸びてきて、神経細胞同士がくつつきます。

「脳の発達」というのはこのように神経細胞同士がくつついてネットワークが広がっていくことです。さまざまな刺激や情報が与えられることによって、脳は発達していくのです。

脳が発達するうえで最も大切なのは、人間らしい行動をとらせるための司令塔である前頭前野の十分な発達です。人間は本能ではなく、前頭前野で考え、計画を立て、判断し、行動します。

キレるのは、この部分が未熟であるからと考えられます。そうならないために、10歳ぐらいまでに視覚、聴覚、触覚、喚覚、味覚の五感を存分に使った体験をさせることが必要です。

五感を介した刺激は情報となって前頭連合野に送られ、組み込まれます。テレビやゲームなどが視覚や聴覚だけを刺激する遊びであることも問題ですが、その遊び場は室内が中心ということも問題です。

実際に手や足を使って遊ばせて、バランスのとれた五感刺激を与えることが重要です。

さて、テレビゲームをしすぎると、人問らしい行動や判断力にかかわっている脳の前頭前野の機能に異変が起こるのに対して、よく噛むことはそれとは逆に前頭前野を活性化することが実験によってわかってきました。

人間の大脳が右脳と左脳とで働きが異なつていることは、すでによく知られているとおりです。右脳は、直感や情緒、総合的な思考や認識に、そして左脳は言語や計算などの論理的、分析的な思考とかかわっているとされています。

正常な歯の噛み合わせ能力を持つ健康な被検者に2分問、ガムを噛んでもらい、脳のどの部分が活性化するか、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調査すると、人間らしい判断力や感性、情緒をつかさどっている右脳の前頭前野が活性化されるという驚異的な事実がわかりました。

右脳の前頭前野の活性化はすべての年齢にわたって見られましたが、とくに高齢者においで、その傾向が一顕著でした。19〜73歳の男性20名、女性12名を被験者として、脳の働きが活性化した強さを平均値として示すと、子どもから大人、高齢者まで、よく噛んで食べるたびに、右脳の前頭前野がよく働きます。

つまり、よく噛むことは直感や情緒に関係する脳を養うことにもつながっているのです。一家だんらんや学校給食などの現場で、親や先生が子どもたちに独自の考え方、理念、倫理観などの話をしながら「しつけ」を行うことは極めて効果的だということは、この実験事実からもうなずけます。

食事とは食物を摂取することだけではなく、よく噛んで右脳の前頭前野が活性化しているときに、両親、先生や友人との会話がなされることで、子どもたちの情緒、優しさ、独創性などの人格が形成される絶好の機会なのです。

これは子どもに限らず、大人、高齢者でもまったく同じであり、食卓を囲む会話を大事にしていただきたいと思います。

「戟後最大の忘れ物」と呼んだ食のしつけの重要性が、この実験によって科学的に裏づけられた格好になりました。

人問らしく働く脳の仕組み

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いつもイライラしている、すぐキレ、食卓や机をたたいて怒る... ... 。職場や友人に、こんな人は思い当たりませんか?意外にすぐ思い浮かぶのが、身内だったりする場合もあるかもしれません

パソコンやテレビゲーム、携帯電話でのゲーム、ゲームセンターなど、ゲーム機の流行は長年にわたってヒートアップし続けています。

世にこれだけゲームがあふれていたら、子どもや若者に限らず、大人でも熱中せずにはいられませんね。しかし、こんな社会現象に、今、危機感をもって警告が発せられています。これらのゲームには瞭発的な判断が必要ですから、日常的にゲームをすることでそういう面は身についていきますが、知、情、意といった人問性にまつわる判断力は、ゲームでは育ちません。

脳神経科学の専門家は、これらのゲームに長時間熱中していると前頭前野(人間でよく発達している脳の前方部分で、脳にl入った情報を総合的に処理・判断している) がうまく機能しなくなり、認知症の人と類似した状態、若年性痴呆という症状になると報告しています。

脳の活動状態は脳波で調べられます。思考などで頭を使っているときはベータ波、安静時にはアルファ波、眠気がさすとシータ波、深い眠りではデルタ波が出現します。

ところが、認知症になると前頭前野の働きが衰え、ベータ波が低下するのです。そしてなんと、ゲームによって、今、前頭前野に認知症と同じような異変が起きているというのです。ゲームを始めると、約1分後にベータ波が減少し、認知症状態になります。

そして、通常はゲームをやめると20〜30秒で元の状態に回復します。しかし、ゲームを常習し続けると、やめた時点でも、認知症と同じような脳波が持続するという衝撃的なデータがあります。正常な場合の脳の活動から行動に至るまでの過程を説明しておきましょう。

たとえば、目の前のかわいい赤ちゃんを抱き上げるまでのプロセスの場合です。まず、赤ちゃんを見たとき、視覚情報は、最初に後頭部にある一次視覚野に入ります。そして、後顔・側顔連合野で赤ちゃんの姿、色などを認知し、さらに海馬や頭頂連合野で赤ちゃんがいる位置を認知します。

これらの情報は、直ちに前頭前野に送られ、どうやって赤ちゃんを抱き上げるかという行動の判断がなされます。行動への判断情報は脳のほぼ中央にある運動野から運動連合野を介します。その結果として、体を動かし、赤ちゃんを優しく抱き上げるというわけです。

ところが、ゲームで遊んでいると、頻繁に入ってくる視覚情報だけで瞬時に体を動かす習慣は身につきますが、感性、思考、意志といったもっとも人問らしさをつかさどっている前頭前野を働かせる機会がありません。

先ほどの例であれば、赤ちゃんだからこそどのように抱き上げればよいのかを判断するのが前頭前野です。前頭前野は、人問らしさである思考、優しさ、気づかいなど (情緒指数) を形成する重要な役割を担っているところなのに、そこが衰えてしまうとどのようになってしまうのでしょうか。このような現状から、現在、日常の社会生活・学校生括でも、前頭前野を育む環境づくりの必要性が指摘されています。