普段、私たちが口にする牛乳は大部分が高温殺菌処理された牛乳であることをお話しましたが、こうした高温長時間処理の問に、牛乳の内容には重大な変化が生じてしまいます。

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まずは、タンパク質ですが、タンパク質の中でも水に溶けていて消化吸収のよい「ホエー・タンパク質」の75~80% ほどが変性してしまいます。

ホエー・タンパク質が、免疫グロプリンやアルブミンなどといった成分を含んでいて、その成分のおかげで「牛乳を飲むと免疫力が高まる」と説明されることがあるのですが、加熱によってそれが変性してしまうのです。

したがって高温殺菌の牛乳を飲むことで免疫力を高める効果は期待できないというべきでしょう。また、カルシウムと結合しているタンパク質のカゼインも一部分変性し、タンパク質の構成要素であるリジンやメチオニンやシステインといったアミノ酸も減ってしまいます。

それでも他のアミノ酸は減らないのだからかまわないだろう、と思うと大間違い。人間が体内で合成できないアミノ酸は8 種類がありますが、その8種類のアミノ酸をバランスよく含んでいる食品こそが、本当の意味で良質なタンパク質食品です。

ごく簡単に説明すれば、体内に入った8種類のアミノ酸は、その8種類の内でもっとも量の少ないアミノ酸のレベルでしか利用できないからです。したがって、アミノ酸の内の何かを欠いているタンパク質食品は、無駄の多い、利用効率の悪い食品だということになります。

高温殺菌牛乳は、そうした食品だと考えておくべきでしょう。ここでは、面倒な説明を避けておきますが、「ホモジナイズド」という加工が必要になるのも、高温殺菌をした必然だと知っておいてください。このホモジナイズドによって、脂肪分子やタンパク質の分子は物理的に切断されてしまい、これによっても、牛乳の質は低下してしまいます。

つけ加えておけば、原乳中には含まれているビタミンC 、D 、E なども、加工の過程ではとんど破壊されてしまいます。こうしたすべてを総合したところからみて「現在の高温殺菌の牛乳は、牛乳の死骸であり、タンパク質のカスです」とまで表現する専門家がいるのです。

「それでもカルシウムが不足しがちだと( 厚生省が) いう日本人にとって、牛乳は重要なカルシウム源ではないか」という意見も聞こえてきそうです。しかし、高温殺菌された牛乳の中のカルシウムは、本来の牛乳のように消費吸収のすみやかなカルシウムでなくなっています。原乳中のカルシウムは、その40
%が水に溶けている消化吸収しやすいカルシウムで他の60%はコロイド状で分散しています。

ところが加熱という過程で、せっかく水に溶けているカルシウムが、コロイド状に変化してしまい、水に溶けている分が40% 近くも減ってしまうのです。ここまでを読んでくださったあなたにお願いしましょう。もし可能なら、すぐにスーパーマーケットの牛乳売り場をチェックしにいってください。

その売り場には、「常温保存できる」と記された「ロングライフミルク」 もみつけられるはずです。これは、普通の高温殺菌よりもさらに高い140度の熱処理をされた牛乳です。これはどの高温処理を経たものでは、カゼインと結びついてるカルシウムの一部が燐酸カルシウムに変化してしまっています。

燐酸カルシウムとは、私たちの骨の中のカルシウムと同じ状態です。たとえば魚の骨を水につけておいてみましょう。カルシウムが溶け出すでしょうか。たしかに微々たる量は溶けるかもしれませんが、はとんどは骨の形のままです。骨として組織化された燐酸カルシウムとは、とても水に溶けにくいカルシウムなのです。

だからこそ、骨は化石として何千年・何万年の時を経た印を残しもするのです。私たちが消化吸収するのは、基本的に水に溶けた物質であることを知っておくべきでしょう。腸壁は、あらゆる栄養素を水に溶かした状態、つまり水溶液として吸収するのです。逆にいうとなら、水なしに、また水に溶けない物質を、私たちは吸収して利用することなどできないということです。

低温殺菌牛乳もあります。栄養成分が変化しない低温殺菌牛乳 牛乳で下痢をする人も試してほしい牛乳です。

最近の牛乳は大半が高温殺菌

赤ちゃんを無事に産んだ後、お母さんなら誰でも「この子を健康に、幸せに育てたい」と強く願うことでしょう。そのための努力を怠らないお母さんが、どこにいるというのでしょう。しかし、せっかくの努力が方向違いだったとしたら、努力すればするほど悪い結果を招いてしまうということさえあり得るのです。

母乳の出がよくないから牛乳をたくさん飲むというお母さんがいます。母乳の代わりに牛乳を飲ませるお母さんさえいます。こうした発想はおかしいのだということを知っておいてください。何よりも、牛乳とは「牛という動物の乳」です。牛の赤ちゃんが必要とする栄養素は、人間の赤ちゃんが必要とするものとは違います。これはどんな動物であってもそうです。ヤギの乳、犬の乳、猫の乳、ハムスターの乳などなど、すべて、その動物の赤ちゃんにこそふさわしい成分になっているのです。

たしかに、他に代用がないときには、同じ哺乳類の乳なのだから次善の選択となります。しかし他に選ぶべき道があるときに、盲目的に頼ってはいけません。まして牛乳は、決して「完全栄養食品」ではありません。

現在、スーパーマーケットなどで売られている牛乳の大半および学校給食で出される牛乳、さらには宅配されている牛乳までも含めて、まずは「高温殺菌」の製品が幅をきかせていることにお気づきかと思います。あなたの冷蔵庫の中の牛乳をたしかめてみてください。すでにこの間題を知っていて「低温殺菌」の製品を選んでいる方の場合を別にすれば、冷蔵庫内の牛乳パックなどには「130度 2秒殺菌」と記されているはずです。

この高温殺菌=130度2秒殺菌というところに、まずは問題があります。日本でこの殺菌方法による牛乳が市販されるようになったのは1961 年のことでした。それ以前の牛乳は、後にお話しする「低温殺菌」を経て製品化されたものでした。中年以上の方なら思い出すかもしれません。

昔の、子ども時代に飲んだ牛乳は、今の牛乳に比べてとても美味しかったではないですか。たしかに今のように簡単に大量には飲めない貴重なもの( バナナもそうです) だったから、なおさらに美味しく感じたという面もあるでしょう。しかし現在でも、高温殺菌のものと低温殺菌のものとを飲み比べてみれば分かります。低温殺菌の牛乳のほうがはるかに美味しいのです。

この「莫昧しい」ということの意味は、決して軽くありません。本当の意味で美味しい、人間本来のたしかな味覚が判断する美味しさとは、そのまま体にとってよりよいものであるというものさしなのです。さて、高温殺菌は「130度2秒殺菌」とされていますが、実情は違います。たしかに130度の状態は2秒間しか保たないのですが、常温の牛乳をいきなり、瞬間的に130℃ などという高温にできるはずがないことくらい、常識的に考えてもすぐに分かります。

では、一般メーカーの「牛乳加工工程」では、どのようにして「高温殺菌」が行なわれているのでしょうか。まず産地から冷蔵で輸送されてきた原乳を10秒間ほど加熱して85度にします。この85度 を280秒、つまり5分間弱保っておいて後、さらに加熱して130度に高め、そこで2 秒間保った後に温度を落とすのです。

いかがでしょう。高温殺菌の牛乳とは、総計5分間はど、コトコトと煮立てたに等しい「加工された牛乳」だということです。

牛乳は完全栄養食品であるという誤り

妊娠中の栄養補給・授乳中の栄養補給を考えるとき、第一に思い浮かべる食品といえば何でしょう。おそらく牛乳ではないでしょうか。50年前、あの大戦争に負けてしばらくしてからの日本は、アメリカ合衆国の豊かな文明生活に憧れました。その憧れの生活の象徴が牛乳であったこともあるでしょう。

この50年間、牛乳は「完全栄養食品」 の代表として奨励されてきました。妊婦や授乳中のお母さんにも、やはり「たくさん飲みなさい」と奨励されてきたものです。

妊婦・授乳婦のみなさんは、ずいぶん一生懸命に牛乳を飲んでいる傾向があるのが分かっています。出産後に母乳の出をよくしたいと、かなり大量の牛乳を飲んでいたお母さんだけに限っても、20%以上に達しました。しかし、牛乳は本当に「完全栄養食品″」なのでしょうか。

牛乳をたくさん飲むことは、胎児にもよく、また母乳にもよい影響を与えるのでしょうか。これを否定する強力な意見をご紹介します。

牛乳の優れた面までも否定する気持ちはありません。しかし「牛乳は「完全栄養食品だ」とする盲信は、昨今のように飲もうと思えばいくらでも牛乳が飲めるようになった「豊かな日本」では、大変に好ましくない結果を招いていると思われるからです。

「どうも牛乳は怪しいぞ」と感じて研究を重ねてきた専門家のお話です。『送料無料/牛乳は完全栄養食品ではない/岩佐京子』という著書にまとめられています。彼女の見解は、私たちの意見とも大変に合致しているものです。

そこで、以下は「牛乳は完全栄養食品ではない」の内容を参考にしながら話を進めることにしましょう。まずは、同書の冒頭「ほじめに」の全文を引用させていただきましょう。戦後、消費が非常に増えたものに、牛乳があります。これは、戦前の御飯に、みそ汁、野菜、魚中心の日本の食事の欠点を補う物として、牛乳を飲むとよいと奨励されたからです。

特に、妊産婦や幼児にとっては、骨を作るカルシウムがたっぷり含まれているし、タンパク90質も脂肪もあるから、成長には欠かせない食品である、ぜひ毎日飲ませてくださいといわれてきました。保健所でも、妊婦前期には200cc、妊婦後期には400cc、授乳中には400cc、幼児期には100cc以上、できれば400~500ccは飲ませてはしいという指導をしているようです。

こうした指導を受けて、母親の中には、牛乳を飲ませないと、子どもは発育しないかのように思いこんでいる人がいます。さらには、、2歳、3歳まで牛乳のみで育てている母親さえいるのです。ところが、こうした牛乳信仰によって育てられた子どもの中から、まったくことばを持たない子どもが出てくるケースを数多く見るにつけ、現在の日本の牛乳には、何か問題があるのではないかと思うようになりました。

この前文の中には、いくつか重要なポイントがあります。その部分に傍線を引かせていただきました。彼女の主張は明確です。牛乳が必ずしも悪いといっているわけでほありません。しかし牛乳は、それだけを飲んでいれば事足りるような「完全栄養食品」ではなく、大量に飲めば弊害もあるというのです。さらに現在ごく一般に市販されている牛乳の多くは、本来の牛乳としての価値のないことに気づいてはしいともいっています。

いい母乳の質を悪くする要因 妊婦さん必読!

「母乳の質」について目を向けてみます。お母さん方( になろうとしている方も含め) は、いささかショッキングな事実に直面することになるかもしれませんが、赤ちゃんの健康な発達を願うなら、正面から受け止めてはしいことばかりです。

たばこと母乳

タバコを吸うことが母乳にどんな影響を与えるかに触れる前に、タバコと妊娠の関係につい知っておいたほうがよいようです。妊娠中の喫煙が胎児の発育を阻害し、出産時の体重が軽い赤ちゃんの増加を招いてしまうことは、すでに1957 年にシンプソンという研究者により報告されていて、以後、同種の報告は数限りありません。

シンプソンによれば、1日あたりの喫煙本数と未熟児の発症率についてこう説明しています。たばこの本数が増えれば増えるほど未熟児が産まれる確率は増加しています。

健康な赤ちゃんに恵まれるために、タバコがいかに大きな障害になるかがお分かりでしょう。妊娠中のタバコの害は、未熟児の増加だけにとどまりません。自然流産、早産( 対照の1 ~14% とは、タバコを吸わないお母さんの場合です)、果ては死産や新生児死亡、胎児奇形までも招きがちなのです。

こうした異常が発生するメカニズムは、今のところこれと確定されるものが明らかにされているわけではありません。しかし、まずはタバコの煙の中に含まれるニコチンによって血管が収縮し、そのために胎盤の血行障害が招かれて胎児への栄養供給に支障が生じることが考えられます。またタバコの煙の中には大変に有害なガスである一酸化炭素が含まれていて、これが胎盤機能に影響を与えたり、ベンツビレソという物質による催奇形性なども考えられます。いずれにしても、妊娠中のタバコは厳禁というほかないでしょう。とはいえ、これはとても幸いなことなのですが、母親とは本当に強いもので、妊娠に気づくと同時にスッパリとタバコをやめることができる人が少なくありません。

タバコの持つ強い習慣性も、お母さんの慈愛に富んだ心にはかなわないということでしょうか。ではタバコと母乳の問題に入りましょう。まずほっきりしているのは、授乳期のお母さんがタバコを吸うなら、タバコによって血中に入ったニコチンは、小量とはいえ、必ず母乳に入りこむということです。これは広く認められています。

では、その母乳中のタバコが赤ちゃんにどんな影響を与えるのでしょう。ビスダムという研究者の1973年の報告によれば、1日に20本以上タバコを吸うお母さんの母乳を飲む赤ちゃんでは、不眠・下痢・嘔吐・頻脈・循環障害などの症状が現れたといいます。

その後の研究では、1日に吸うタバコが20 本以下のお母さんでは、母乳中のニコチン濃度は赤ちゃんに影響を与えるはどでほないという報告も出ています。したがって一般論としてほ、20本以下の契煙量のお母さんなら、ことさら授乳を禁止する必要もないだろうとされています。しかし、よく考えてみてください。「20本以下なら、授乳を禁止する必要はない」というのは「20本以上吸うお母さんの母乳ほ、赤ちゃんにとって明らかに有害となる心配がある」ということにほかなりません。

なお、小さな赤ちゃんは、たとえ母乳からニコチンの害を受けなかったとしても、家の中にタバコの煙が立ちこめていれば、もっと悪い影響を受けかねません。これについてはキヤメロンという研究者が「両親の契煙と小児の呼吸器障害の関連」について報告して以来、小児の受動喫煙(自分は吸わないが、結果的に他の人の吸う煙を吸ってしまうこと) は死亡率・発育障害・突然死症候群と関係があることが数多く報告されています。

アルコールと母乳

胎児性アルコール症候群(FAS) という言葉があります。これは、ごく乱暴にいうなら、胎児時代にアルコール中毒になってしまったような、まことにかわいそうな赤ちゃんに現れる症状のことです。これらは、いかに深刻な症状であるかが分かります。アメリカでは、赤ちゃん1000人のうち1~2 人にこのF ASが発見されています。もちろん、これはど深刻な症状の赤ちゃんを産んでしまうお母さんは、かなりの量のアルコールを飲んでいたに違いありません。しかし継続的に大量のアルコールを飲んではいないにしても、特に妊娠早期に相当量のアルコールを飲んでしまうと、この症状が出てしまうことがあるといいます。

FASの赤ちゃんは、生後6時間から8時間くらいするとアルコール禁断症状が現れるというのですから悲惨です。振戦・益刺激性・緊張克進・多呼吸・けいれん様発作・腹部膨満・嘔吐など、その禁断症状は、まさにアルコール中毒の禁断症状になぞらえるものです。

いうまでもありません。FASの赤ちゃんに現れる禁断症状は、一切本人の責任ではありません。アルコールに頼らざるを得ないような、いかなる理由があったとしても、全面的にお母さんの責任なのです。FASの症状まで心配するほどではないまでも、アルコール中毒( 医学的にはアルコール依存症) のお母さんでは、自然流産(普通の2倍)・先天性奇形(4倍)・新生児仮死(l・5倍) などの深刻な影響が考えられます。

アルコール飲料、つまりお酒とは本当に厄介な飲み物です。私たちも決して嫌いではありませんから、その厄介さは重々承知しています。最初はたった1 杯のつもり、はんの少量でやめるつもりが、いつしかヨレヨレになるほど飲んでしまうのがアルコールの秘め持つ魔力です。したがって、妊娠に気づいたら、いえいえ、妊娠の可能性のある女性ほ、心してアルコールをひかえるようにしてください。むろん、飲まないに越したことはありません。では授乳中はどうでしょう。実はこれもかなりの問題です。

母乳中のアルコール濃度は、血中のアルコール濃度とはば同等になることが分かっています。つまりお酒を飲んで酔っ払った(血中アルコール濃度が高い状態) お母さんの母乳を飲む赤ちゃんほ、やっぱり酔っ払ってしまうということです。こうしたことが日常だとすると、低プロトロソビン血症・キャッシング症候群(体重の増加・身長の伸びの低下・円形顔貌) などの深刻な影響があるという報告もあり、お母さんが酔っ払って授乳するのが1 回だけとほいえ急性アルコール中毒(深い眠り・呼吸数減少・徐脈) などを引き起こすことがあります。むろん、授乳期ということであれば、少量の楽しいアルコールなら問題ないでしょう。

むしろ毎日、日夜を違わず忙しく赤ちゃんの世話をする疲れを、いくらかなりとも解消してくれるかもしれません。しかしあくまでも少量です。酒好きの私たちがこんなことをいっても説得力がないかもしれません。また男の身勝手といわれても言い訳のしようがありません。しかし赤ちゃんの今と将来のためです。世のお母さん方にお願いします。アルコールほ、ぜひとも遠ざけてください。

カフェインと母乳

コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ類など、私どもの周囲にはカフェインを含む飲料が数多くあります。また、妊娠中の女性であっても、こうした飲料にことさら注意を払わない方は少なくありません。カフェインは、脳や心臓の筋肉の新陳代謝を促進します。

また利尿作用があります。大量に飲むなら、不安・興奮・幻覚・振戟・不整脈なども引き起こします。またカフェインは胎盤を簡単に通過してしまいますから、羊水や胎児にも影響を与えると考えられます。とはいえ、動物実験においてはカフェインの催奇形性が報告されていますが、人間においてほいまだそのような報告はありません。しかしお母さんの血液中のカテコラミソを増加させるために胎児の血管の収縮を招き、低体重児増加を招くとする意見もあります。

母乳への影響ということなら、あまり心配はないだろうというのが一般です。すなわち、お86母さんの血液中のカフェインは母乳中にも分泌されるものの、その濃度が低いために、赤ちゃんに直接の影響を与えることはないだろうというのです。しかし、大量のコーヒー( 1 日に20 杯ほど) を飲むお母さんに授乳された赤ちゃんでは不穏症状(落ち着きなく不安状態になる) が認められたという報告もあります。

生まれて間もない赤ちゃんでは、カフェインの半減期(代謝排泄されて血中濃度が半分になるまでの時間)が大人の17倍にもなるということも考えておくべきでしょう。やはり、妊娠中・授乳中にカフェイン含有飲料を飲む量は、少ないに越したこことはありません。

薬物と母乳

授乳中の母親に投与された薬物は、量的に多少はあるものの、そのはとんどが母乳を通じて乳児に移行するが、大量あるいは長期間の服用でもない限り、乳児に問題を惹起するものほ少ないとされてきた。しかし、少量短期間の使用でも乳児に悪影響を与えるものもあり、薬物の使用に際しては注意が必要である。

つまり、授乳中に薬を飲むことは、少量で短期間であっても赤ちゃんに影響がないとはいいきれないので、よく注意することが必要だということです。皆さんもよくご存じのように、妊娠中の薬物投与については、医師も大変に注意深く対応しています。

また一般のみなさんも、どうしても飲まなければならない薬があるとしても、その薬の胎児への影響についてほきわめて慎重に検討するでしょう。いうまでもなく、一般の薬店で売られている薬にしても、影響が心配されるものにはその旨が明記されています。

しかし授乳期となると、それほど慎重ではなくなるのかもしれません。いずれにしても、妊娠・授乳期を通じて、薬には十二分の注意を払うのが原則でしょう。

とはいえ、お母さんの体を守るために、赤ちゃんへの影響の懸念がありながらも飲まなければならない薬もないとはいえません。そうした点については、かかりつけのお医者さんに十二分に相談して、その指導にしたがってください。くれぐれも素人判断は避けること。これは、赤ちゃんの生命を託されたお母さんならばこそ、なおさらの大原則です。

水にこだわるといい母乳がでる

母乳の状態(=お母さんの健康状態) と飲み水(調理用の水を含む) の関係をみるために、次の研究例をご紹介することにしましょう。

  • Aさん(出産時36歳)
  • Bさん(出産時32歳)

2人は、出産直後から「生命体に調和する水」の1 つであるミネラルウォーターを、1 日あたり1.5~2Lほど飲みほじめました。

Aさん

乳糖 440 446.2 296.5 352.0 357.2 373.7 373.3
コリン 2.89 2.35 2.15 1.56 2.48 2.78 2.04
クエン酸 5.63 4.74 2.48 2.71 2.29 2.401 2.24
脂肪 33.3 40.9 15.9 10.3 35.1 46.1 18.7

Bさん

乳糖 345.0 372.8 243.8 199.7 371.3 551.3
コリン 1.92 2.38 2.6 3.81 1.77 2.3
クエン酸 1.55 1.34 1.54 1.28 0.81 2.98
脂肪 14.6 31.9 27.9 41.4 69.4 31.0

Aさんの乳糖濃度が、平均に比べてかなり高いレベルを維持していることが分かります。対して脂肪の濃度は平均値の上下で変動をくり返しています。しかし授乳期全体を通じてみれば、平均濃度を維持しています。

Bさんの各成分濃度がより安定して高いレベルを維持しているのが分かります。総じてみれば、お二人の母乳の状態は、きわめて良好であったといえるでしょう。

ちなみに、お二人とも8月の母乳濃度がそろって低下傾向を示していますが、これは暑さにともない水分摂取量が増えることと関係があると考えられます。

なお、この母乳の濃度などの状態について注目するべき時期が、出産後6ヶ月目くらいまでであるのほ、いうまでもありません。普通なら、その時期から離乳食がはじまり、赤ちゃんは、より積極的に母乳以外の「食べ物」から栄養を吸収するようになるからです。

若干の栄養不良で、もともとが低血圧・貧血傾向があり、さらに高齢になってからの初産ということで、担当医にも十分な注意をするように指示されての出産でした。しかし彼女の場合、妊娠にいたる1年以上前から生活水( 飲用・調理用)をアルカリイオン水に撤するようにしたのが幸いしたのかもしれません。

すでに妊娠したころには、低血圧・貧血も明らかに改善していたといいます。Bさんのお子さんは、間もなく3歳になろうとしていますが、アトピー性皮膚炎などの慢性疾患もなくきわめて健康で、また賢く順調に育っています。

活泉水

母乳はひとりひとり成分が異なる

母乳の主成分は、栄養源となる乳糖、エネルギー源となる脂肪、脂肪の代謝を調整するコリソ、そして血液の凝固を防ぐクエン酸です。もちろん成分としての比率は少ないのですが、他にも欠かすことのできない重要な物質が多数含まれています。

しかしここでほこの4 成分に注目して、母乳の「質」ということを考えることにしましょう。出産後5日目の母乳の成分を分析です。母乳の場合、1 ccほどのサンプルであれば、2 分間はどで分析が終了してしまいます。お母さんの出産後5 日目の母乳成分の総合的全体像です。100名弱の統計になります。

乳糖は、平均値が222.9mM。100名弱の中には128.6mMという低値を記録したものもありました。対して、最高は、335.3mMです。この差の大きさに注目してください。

どの成分をとっても、最高値と最低値の間にきわめて大きな差がありました。たとえば脂肪( これほ濃度が高ければよいということではありませんが) などは。何と10 倍以上もの開きがありました。「母乳は完全栄養食品である」という先入観があったのですが、これでは状況は異なります。しかしこの結果をみれば、その先入観は捨てるべきだと強調せざるを得ません。

母乳の濃度・状態ほ、母体の健康状態によって大きく変化するのですから、場合によっては必ずしも、赤ちゃんにとって望ましい「完全栄養食品」ではないということです。仮に量は十分だったとしても、内容的には心配な母乳である場合も少なくないというべきでしょう。

一般の産婦人科医たちは、普通、産後すぐの赤ちゃんの健康状態を黄痘症状から判断し、人口栄養( 粉ミルク) やブドウ糖の投与を検討します。母乳濃度を調べることが一般化するなら、より早く、適切な対応ができるようになるでしょう。

赤ちゃんにとって最高の栄養源である母乳と水の関係について考えてみたいと思います。全国どこでもそうでしょうが、無事に出産されたものの、母乳の出が悪いと悩むお母さんは少なくありません。しかし十分に出ているほずの母乳でも、その成分を分析してみると、必ずしも栄養的に安心できない場合もあり得ます。

何が何でも母乳で育てなければいけないわけではないのですが、基本的にはお母さんの母乳で育てるメリットを世論は推奨しています。

授乳期の赤ちゃんは母乳で育てるのが理想であるのは事実です。それはほ乳類の歴史にまでさかのばって人類が培ったものであり、自然の摂理なのですからしかたありません。そこで、母乳が十分に出ないと悩むお母さんには、こう提案することにしましょう。

あなたのこれまでの「水生括」 と「食生活」を見直してみてはいかがでしょうか。母体であるあなたの体がより健康になるなら、母乳の出もよくなる可能性があるからです。また同じ母乳にしても、赤ちゃんの健康な発育にとってよりよい質のものになるからです。

人間の血液を構成する成分の内の82.5 %は、水です。血は水よりも濃いといいますが、17.5% が水以外の物質なのですから、その意味でたしかに濃いですね。では血液が形を変えたものといえる母乳ほどうでしょう。母乳も水よりも濃いのでしょうか。

結論をいえば、たしかに「濃い」のです。しかし濃いにしても、血液はど濃くはありません。母乳に占める水分比率は平均的にみて88.5% にもなるからです。つまり、水以外の成分の比率は約11.5 % でしかないということです。

では生まれるまでの赤ちゃんの環境であった母体の状態は、母乳の状態にどのような影響を与えているのでしょうか。また、母乳成分の何らかの変化と赤ちゃんの発育には相関関係があるのでしょうか。

活泉水