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仕事にゲームのような楽しさわくわく感を取り入れる

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マネジメント手法のひとつとしてよく挙げられる「見える化」や「可視化」これはだいぶ前から重要性が言われている。しかし、最近ではそれらをさらに進化させた「ゲーミフィケーション」 という手法を提案しています。これは、端的に言えば、「仕事のゲーム化」です。もちろん、ただ遊ぶのではありません。ゲームの持つ要素を上手く仕事に取り入れ、とかく怠慢になりがちな日常業務におけるモチベーションアップに役立てようというわけです。

発想の起点となったのは、街でスマートフォンを使ってソーシャルゲームに興じる女性を見かけたときでした。スーツを着た、いわゆる「デキる女性」といった風情の方が、一心不乱に遊んでいるのです。そして、家に帰ると、自分の息子もゲームに夢中になっている。「やるな」と注意しても聞く耳を持ちません。決して、その女性や息子が特別なわけではありません。その証拠に、ソーシャルゲームの市場はここ数年で急激に伸びています。ゲームには、間違いなく、老若男女を夢中にさせるパワーがあるのです。

そこで思ったのが、「人を夢中にさせるゲームの要素を、仕事に取り入れられないか? 」ということでした。もともと仕事というものは、「目標達成に喜びを見出だす」という点で、ゲームに似ています。では、ゲームにしかない要素とはなんだろうか? それを研究し、体系化したのが、ゲーミフィケーションです。すでに会社では、ゲーミフィケーションを支援するソフトを開発するなどして、多くの企業に採用していただき、結果を出しています。ここでは、簡単に仕事をゲーム化する方法を紹介しましょう。

ゲームの楽しさは、プレーするのが個人であっても、仲間と競い合える点にあります。その意味で、仕事のゲーム化は、複数人数でするほうが、効果が表われやすいと言えるでしょう。仕事をゲーム化するに当たっては、まず、絶対条件として4つの項目が挙げられます。
  1. 目標や課題を明確にする
  2. 進捗状況がわかるよう「見える化」する
  3. アクションに対する即時フィードバックを用意する
  4. 目標や課題達成時に報酬を用意する


1は容易に納得できると思います。そもそも向かっている先がわからなければ、仕事もゲームも成り立ちません。

工夫が必要なのは2以降です。たとえば、ただただ目の前の課題をこなすだけのゲームでも、点数化することによって、楽しさが増します。仕事も同じです。仕事の進捗状況を全員で共有できるようにエクセルでグラフ化するだけでも、モチベーションアップの効果があります。これが2です。「見える化」 するのは、必ずしも数字でなくてもかまいません。数字を示しにくい仕事内容であれば、ランキングをつけるなどといった方法も考えられるでしょ、つ。多くの仕事では、結果がついてくるのに時間がかかります。

一方、ゲームでは、アクションに対してすぐに成果が見えるフィードバックがあり、それが人を夢中にさせます。これを仕事に取り入れるのが3です。1日単位で、「一定のタスクをこなしたら、晩酌でビールを一杯飲む」など、簡単なことでかまわないので、短い期間で成果を感じられるような工夫をしてください。

そして、4 。これも3と同じく金銭的なものではなく、もっとカジュアルな報酬、たとえば食事などのほうがいいでしょう。ゲーミフィケーションで大事なのは、プレイヤーの成長実感です。報酬が金銭になると、義務的な仕事になってしまいます。それではゲーム化の意味がありません。重要なのは、仕事のゲーム化は、最終結果ではなく、プロセスを楽しむものだということです。つまり、仕事が営業だとすれば、売上げなどの結果ではなく、「何件お得意先を回ったか」といったような、努力すれば努力したぶんだけ必ずついてくる数字を競うことが大事です。売上げには偶然性も反映されますから、ゲームとしての楽しみが損なわれてしまうのです。新規開拓のように、成果に至るまでのプロセスが長い仕事をするためには、成果が出ない長い期間、モチベーションを保ち続ける必要があります。そんなときに、ゲーム化はとくに有効です。

苦手な仕事、イヤな仕事こそ100%以上の力で

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まず、中長期的な予定を立てることをお勧めします。時期を決めて、たとえば年の瀬が迫ってくる時期に、来年の年間のプランを立ててみてはいかがでしょうか。今年一年を振り返りつつ、来年はどんな年にしたいか、イメージを膨らませるのです。仕事の計画も大切ですが、このときばかりはプライベートの計画を中心に考えてみてください。私のお勧めは家族と一緒にこの計画を考えることです。なぜ何カ月も先のプライベートの予定を立てるのかというと、辛い局面になっても、「必ずここで休める」という予定があれば、頑張ることができるからです。

また、どんなに忙しい方でも、閑散期を狙って何カ月も前から「この日は休暇を取る」と宣言しておけば、職場も休める体制を準備することができます。予定は休暇だけでなく、1ヶ月に1回は食事に行く、マッサージへ行くなど、なんでもかまいません。年間スケジュールを組むと、計画を実行するにはお金が必要だと気がつくと思います。

年間を通じてプライベートを楽しむにはいくら必要なのかを計算してみると、お金のやりくりもうまくなりますし、働く必然性も見えてくるのではないでしょうか。しかも、楽しみを実現させるためと思えば、モチベーションも維持できるはずです。さらに長期的な予定を立ててみることも効果的です。将来どのような生き方をしたいか、ライフプランを立てるのです。将来やりたい仕事や家族のありよう、老後までを思い浮かべてください。すると、身につけるべきスキルや、保つべき家計のレベルなどが明確になってくると思います。高い目標を掲げると、今日上司に怒られたことなど、小さなことに思えてくるはず。目線を高くすると、小さなことで落ち込むことは少なくなります。

いくら中長期の目標を立てていても、挫けそうになることはあります。自分のやりたい仕事が担当できないなど、思いどおりにいかないこともあると思います。目標と現実が尭離すると、意欲が削がれることもあります。しかし、目標と違っているとしても、現状を楽しむほうが得をするのです。こういうときに私が意識していることはク一二〇% 理論〞と呼んでいる方法です。やりたくない仕事にこそ、120% の力で取り組むのです。面白くない仕事にこそ、真っ先に全力で取り組んでみると、仕事のスピードの速さや質の高さを評価されて、「この人にこんな程度の仕事を任せていてはもったいない」と周囲に思わせることができます。周囲の人は意外と見ているものです。イヤイヤやっていたら、「この程度の仕事でこのレベルの完成度の人」という評価しか受けられなくなり、自分の希望の仕事からも遠のいてしまいます。今の職場で成長の実感がなければ、視線を変えてみることも大事です。全力で仕事を終わらせたあと、定時に帰り、プライべートを充実させるといいでしょう。仕事以外の時間をつくることで明日への意欲につながります。

目の前の仕事だけでなく将来を見る

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仕事をしていれば、ミスやトラブルなどで心が折れそうになることはいくらでもありますが、「次にやることがある」と思えば、すぐに気持ちを立て直すことができます。つまり、「目の前にある今日の仕事」という小さなところだけにフォーカスしていると、そこでつまずいたときにモチベーションを回復するのが難しくなってしまうということです。

私は会社員時代から、社外の人たちとの勉強会を主宰したり、本の執筆をしたりしていました。会社での仕事がうまくいかなかった日でも、「自分が役に立てることは社外にもある」と考えることで、気持ちを切り替えることができました。また、会社員時代は商品開発をしていたので、「1年後には自分の作ったものが世の中に届いて、お客様の喜ぶ顔が見られる」といった、将来成功した場面をイメージしていました。つねに〝今日の仕事の先にある未来″ を思い描くようにしているのです。すると、目の前にある課題や困難は大局の一部に過ぎないと思える。自分が今いる場所を、少し引いた視点から客観的に見ることができるのです。

会社員であれば、やりたくない仕事を与えられることもあります。もちろん、会社の命令ですから、まずはやってみる。それでも「この仕事は自分にとって意味がない」と思ったら、「自分がやらなくて済むにはどうすればいいか」を考えるようにしていました。

たとえば、私が洗剤の商品開発をしていた頃、実験に使う大量の洗剤を計量する仕事を与えられました。計量は、私には「やりたくないこと」で、自分はその時問を研究に使いたいと思っていました。その実験は、普段は別の製品を作っている現場の機械を借りて行なうので、私が計量しているあいだ、現場の担当者たちは手が空いていました。だったら、計量はこの人たちに任せればいいのではないか。彼らにとって、計量は「いつもやっていること」ですから、任せても大きな負担にはなりません。そう思って現場の担当者と交渉すると、最終的には引き受けてもらえました。最初は断わられたのですが、現場が欲しがっている道具を、私が上司に許可をとって研究の予算で買うことで、引き受けてもらうことができのです。このように、自分がやりたくない仕事を他人に渡し、なおかつ相手もハッピーになる方法を考えれば、お互いにモチベーションを下げずに仕事ができます。

仕事上の必要に迫られて、苦手なことを勉強しなくてはいけないこともあります。そんなときは、自分の好きなことと組み合わせる方法がお勧めです。私も、講演や執筆をするうえで、歴史の知識を身につける必要性を感じたのですが、歴史は苦手でした。そこで、「知らない場所へ行くことが好き」という自分の晴好と組み合わせて、「1年間で日本百名城をすべて見に行く」という目標を立てました。ポイントは、とりあえずスケジュールを組んで宿や交通手段を予約してしまうこと。城に行くなら、その背景を知っておいたほうが楽しめるので、「この日までに」関連する本や資料を読まなくては」と自分を追い込むことができます。

本当に必要かどうかの見極め

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仕事や勉強をするとき、やる気が湧いてこないなら、まず、ほんとうにやる必要があるのかを考えてみることも大切です。たとえば、語学ができたら情報収集の幅も広がるし、仕事で活かせることもあると思って勉強をしてみても、モチベーションが上がらないことがありますⅦそこで、「勉強しなくても困らないのではないか?」と思い直し、実際にやめても困らなかった、というようなことがよくあります。

ほんとうに必要があるのかどうかの見極めが重要です。また、たとえば、企画書を書かなければならないとしましょう。そのとき、パソコンで何となくインターネットを出見ていると、「情報を探している」という自分への言い訳ができてしまいますが、実際は時間を使うばかりです。すると、企画書のことが気になって仕方がなくなり、企画書に向き合わざるを得なくなります。は、パソコンの電源を切り、紙のうえで企画書の内容を考えるほうがいい。それでもなかなかモチベーションが回復しないのなら、さっさと帰って布団をかぶるのがいい。布団の中で何もしない。他のことを自分にやらせてはいけません。

直近に締め切りがある仕事や勉強は、モチベーションの管理がしやすい。大きな仕事や資格取得の勉強のように、締め切りが直近ではない場合は、やるべきことを小さく区切って締め切りを作ることで、モチベーションを維持できます。それでもダメなら、その日にやるべき仕事を机の上やパソコンのデスクトップ上に開けておく。
そして、それに必ず触れるようにするのです。そのままエンジンがかかることもありますし、意識の片隅にでも置いておくことで、ふと良いアイデアが浮かび、モチベーションを回復する手がかりになることもあります。やる気になるまで放置して、自分を追い込むのも手です。持ち時間が厳しくなると、ほんとうに必要なところだけを効率的にやるようになるものですから。

仕事のやりがいは、舌只献か成長かのどちらかを実感することです。前者は、会社の同僚や顧客の役に立っているという実感。後者は、昨年より今年の自分のほうが成長しているという実感です。このいずれかの実感があれば、仕事のモチベーションが維持できるでしょう。どちらもない職場なら、転職を考えましょう。だいたい2年単位くらいで、自分がどれだけ仕事で貢献や成長をすることができるかを考えるようにしてみましょう。仕事を通じた責献や成長は成功体験になり、自信にもつながります。仕事で不愉快なことがあってモチベーションが下がったときに、趣味やお酒などで気晴らしをする人も多いでしょう。しかし、これらで仕事の憂さ晴らしをするべきではありません。一時の気晴らしになったとしても、仕事の状況が変わらなければ、時間を空費し、くたびれ、場合によっては散財してしまい、徒労感だけが残ることになります。仕事の問題はあくまでも仕事の中で解決し、モチベーションを回復させるべきです。あるべき自分と現実の自分とのあいだにごまかしを挟むと、不全感が余計に残ってしまいます。

GIVE&TAKEではなくTAKE&GIVEのワークスタイル

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なぜ、モチベーションが下がるのか。答えは簡単です。「欲」で仕事をしているからです。評価されたい、もっとお金が欲しい、名声が欲しいといった欲が満たされないときに、人は挫折し、モチベーションが下がるのです。人間には「求める生き方」「尽くす生き方」があります。

欲ではなく、尽くすために仕事をしている人には、モチベーションの低下はない。そして、世のため、人のために尽くせるのが、プロです。だから、私はよく「仕事を恋愛に変えろ」と言います。恋人に対していろいろなことをするのは、相手に尽くしたいからであって、見返りを求めてではないでしょう。

新製品の開発を行うときには見返りを求めるのは、歪んだ恋愛です。仕事も同様で、お客様や世の中に尽くすもの。そこに働きがいがあるのです。自分の社内でのポジションや評価などを気にしていたらやっていられません。自分が頑張った先にはお客様がいると思うから耐えられる。逆に、叩かれて挫折してしまう人は、社内だけを見ているのです。提案を通せた、役員に褒められた、人より早く昇進した。そんなことを基準に生きているからいけないのです。

お客様を喜ばせたいという思いで、それまで誰も想像もしなかったような商品を世の中に出す。そんな使命感を持って生きるのがエンジニアです。どんな仕事をするにしても、社会的使命のために働くのが人間らしさじゃないでしょうか。会社はその使命を果たすための手段です。会社での評価が人生の目標に置き換わってしまうから、モチベーションが落ちるのです。もちろん、私も最初から使命感で仕事をしていたわけではないですよ。

モチベーションが上がらない、という人は、まずは「なんのために仕事をしているのか」を問い直してみること。会社というスケールではなく、社会のために仕事をするという原点を思い出すことが大事です。

イヤだと感じる仕事から解消していく

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外資系企業で英語を使って仕事をした経験が長い身としては、「モチベーションが上がる、下がる」という表現は、言葉の使い方が間違っていると思います。「To Be(なりたい自分)」を持っていれば、それに向かっていこうとする意欲が生まれる。それがモチベーションです。元気が出ないとか、仕事が嫌だとかいうのは、体調や気分、感情の問題であって、モチベーションとは別物です。

残念ながら、今の日本には〝TO Be〞を持っている人が少ない。これは大きな問題です。「To Be(なりたい自分)」がないということは、自分で自分をデザインできていないということ。「みんながそうするから」「そうするのが普通だから」という理由で、仕事をし、生活をしてしまっているのです。これでは当事者意識を持つことができません。「上司が悪い」「部下が悪い」「会社が悪い」「景気が悪い」と、被害者意識で物事を考えてしまいます。確かに、完全に自分で自分をデザインすることは難しい。会社に勤めるということは、会社の「To Be(なりたい自分)にぶら下がって生きるということです。

私がアップル・ジャパンの社長だったときは、スティーブ・ジョブズの「To Be(なりたい自分)にぶら下がって仕事をしていたわけです。独立した今から振り返ると、そう感じます。それでも、自分の置かれた環境のなかで、身の丈に合った「To Be(なりたい自分)を持つべきです。心得ておくべきなのは、「To Be(なりたい自分)に向かって直線的に進むことはできないということ。道筋は無数にあります。近づいているという実感が得られない、遠ざかっているように感じることも多いのです。ですから、「To Be(なりたい自分)に近づかないからといって、気落ちしたり、焦ったりすることはありません。また、人間の能力も、直線的に成長するものではありません。努力をしたら、そのぶんだけ成長を感じられるわけではないのです。あるとき、後ろを振り返つてみたら、自分の成長に気づく。そういうものです。

ところで、日本語で一般的に「モチベーション」と言われる、気分や感情について、次にお話ししましょう。


通信が発達している現在、気分や感情に影響する大きな要因の一つは、情報に埋もれてしまうことのストレスでしょう。これを解消するためには、仕事を速くして、嫌なことから先に、問題が大きくなる前に解決してしまうことです。たとえば、メールボックスを開いてみると英文のメールが届いていて「嫌だな」と感じる。そうしたら、後回しにするのではなく、真っ先に読んで返信するのです。そうすると、嫌な気分が少なくて済みます。また、仕事とは別に楽しみを持つことも大切。格好をつけることなく楽しめる趣味です。

それから、感情の振幅を小さくすることも重要で残嬉しいことがあったときに喜びすぎる人は、嫌なことがあったときに落ち込む度合いも大きいのです。喜びすぎないことが、落ち込みすぎないために必要だと思つています。振幅は小さく、トータルしてみると少しプラスの感情が上回る、というのが理想です。他人への嫉妬が、気分を悪くしていることも多いでしょう。そういうときは、こう考えてみてください。「あの人も、自分の知らないところで、大変なことを抱えているんだろうな」。おそらく、実際、そのとおりでしょう。そのことに気づけば、嫉妬も消えるのではないでしょうか。

1週間ごとでなく1日ごとにストレスを解消する方法

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「やる気が出ないときのメンタルコントロール法」というのはかなり難しい。それは「やる気が出ない状態にまで陥ってから、やる気を出そうとしたって、それは大変だ」ということです。やる気の出ない状態でやる気を出そうというのは、ガス欠の状態でクルマを走らせようとするのと同じですから。ですから大切なのは、やる気が出ない状態に陥るようなことがないように、普段から心と身体のマネジメントをしっかりと行なっておくことです。

私は、心身ともに健康的な生活は、運動、労働、睡眠、休養、食事、会話をバランスよくとることによって成り立つと考えています。しかし多くの人は、平日は労働と睡眠だけの生活になっているのが現実です。仕事しかない毎日だと、人の心は枯れていきます。そのため誰もが、「平日は仕事一色になっているぶん、せめて休日ぐらいはリフレッシュよう」と考えるわけですが、これが難しい。

1日中寝てしまって、気がつけば何もしないままに週末が終わってしまったりします。「いろいろやろうと考えていたのに、結局何もできなかさいなった」と思うと、後悔の念に苛まれます。そして、「明日からまた仕事一辺倒の生活が待っているのか」と考えると、さらに気分が重くなる。これが「ブルーマンデー」のメカニズムです。

そこで私が推奨しているのが「一日決算主義」です。週末にまとめてストレス解消をしようとするのではなく、その日のストレスはその日のうちに解消するのです。具体的には、運動、睡眠、休養、食事、会話の時間を毎日、確実に確保すること。すると、精神的に充足した状態で翌朝を迎えることができます。こんな話をすると、「毎日仕事だけで精いっぱいの生活なのに、そんな非現実的な」と思われるかもしれませんが、私は無理難題を言っているわけではありません。たとえば、ミステリーを読むのが好きな人であれば、毎晩寝る前の二十分間、好きな小説家の本を開いて読む。これだって立派な休養です。あるいは、起床時間を15分ほど早くして、毎朝夫婦で一緒に散歩を楽しむ。これで会話と運動の時間が確保できます。

こうやって、ほんの短い時間でもいいから、1日の中に休養や運動や会話を入れることで、仕事一辺倒に陥らないように気をつけるのです。なかには「ほんの数十分の運動や休養や会話の時間をとるのも困難」という人もいるかもしれません。しかし、だからといって仕事一辺倒の生活を続けていたら、心の中のエネルギーがどんどんなくなり、やる気も低下していきます。やる気が出ないと生産性が落ちるので、長時間労働を続けなくてはいけなくなります。すると、ますます仕事一辺倒の生活になり、さらにやる気が低下していく、という悪循環に陥ってしまいます。ですから、毎日の生活の中に運動や休養や会話を盛り込んでいったほうが、長い日で見れば、仕事にもプラスになるのです。


とはいえ、どんなに普段から運動、労働、睡眠、休養、会話をバランスよくとっていたとしても、それでもやる気が出なくなるときはあるものです。

上司やお客からこっぴどく叱られれば、誰だって落ち込んで、前向きな気持ちが保てなくなるでしょう。また、自分の実力ではとてもできないと思えるようなハードルの高い仕事を与えられたときに、「何とかやり遂げてやるぞ」という気持ちよりも、逃げたくなる気持ちのほうが強くなることがあります。こんなときに一番いいのは、自分のやる気をなくしている原因を取り除くことです。たとえば、仕事で難しい問題に直面していて後ろ向きな気持ちになっているとしたら、「今できることは何か」を冷静に考えてみたり、問題を具体的に紙に書き出して優先順位をつけてみたりするのです。

また、信頼できる人に解決策を相談すると、やるべきことが見えてきて、再び仕事への意欲が湧いてきます。発想の転換も大切です。難しい仕事を与えられたときに、「なんて損な役回りなんだ」と思うのと、「上司はチームの中でも自分にしかできない仕事を与えてくれた。これは私にとってとてもよい経験になるはずだ」と思うのとでは、取り組む意欲がまったく違ってきます。ただ、ほんとうにやる気をなくしてしまっているときは、問題解決の方法を考えたり、発想の転換をしたりする元気さえ出なくなっているものです。私は、こういうときには、もし可能であ
るのなら、思い切って休んでしまうのもアリだと思っています。やる気が出ない状態で無理をして残業をするのではなく、明日できることは明日に延ばしてしまうのです。人には元来、自然治癒力が備わっています。少しぐらいの風邪であれば薬を飲まなくても寝ていれば治りますが、これは心についても同じ。どうしてもやる気が出ないときには、早めに会社を出てジムで汗を流したり、趣味に没頭したりすればいい。すると、自然に心が回復に向かい、翌日から前向きな気持ちで仕事に取り組むことができるようになるのです。

メンタルヘルスで大切なのは、たとえやる気の出ないときがあったとしても、その状態を長引かせないことです。長引かせば長引かせるほど、うつ病につながっていきます。難しいのは、人間関係が原因でやる気が出ない状態が続いている場合です。直属の上司とソリが合わなくて、上司は自分を評価してくれず、また自分も上司を尊敬できないとなると、毎日会社に行くのが憂鬱になります。前向きな気持ちを保つのも困難になります。

残念ながら、私たちは、他人と過去は変えることができません。上司に対して「もっと私に対する態度を変えてください」と要求しても、変わってくれることはないでしょう。ですから、人間関係で悩んでいる場合、下手をするとやる気が出ない状態がずっと続くことになってしまいます。しかし、他人と過去は変えられなくても、自分と未来を変えることは可能です。

つまり、自分の上司に対する見方、接し方を変えればいいわけです。どんな人でも、必ず、長所もあれば欠点もあります。嫌いな上司でも、きっとどこか良いところがあるはず。そもそも、欠点だらけの人間であれば、上司に昇進しているはずがありません。だから、その人の長所を見つけて、その部分を好きになればいい。不思議なことに、こちらが相手を好きになると、相手もこちらを好きになってくれるものです。難しいかもしれませんが、ぜひ試してみてください。