アミノ酸の一種「アルギニン」が肝臓を守る

肝臓の働きが衰えてくると、疲れやすい、肌の色つやが悪くなる、だるいなどといった症状があらわれてくることは、よく知られています。これは、肝臓が担当している、体のすみずみへの栄養の供給が十分に行われなくなることが最大の理由です。

そして、もう1つには、アンモニアなどの有害物質が肝臓で処理されなくなり、体内にたまってしまった場合が考えられます。このアンモニアは、食物としてとった肉や魚などに含まれるタンパク質が、私たちの体内で分解されるときに生じるものです。

たとえば、いかにも元気の出そうな、分厚くて血のしたたるようなステーキを食べたとします。しかし、それがそのまま、私たちの血となり肉となるわけではありません。ステーキ肉のタンパク質は、胃や腸でこまかく消化・分解されたあと、肝臓で人間の体に合う形に再合成されます。こうして、はじめて私たちの血や肉となっていくのです。そしてこの代謝の過程で、体に不必要なタンパク質は、有害なアンモニアに変わります。このアンモニアを無害な尿素に変えるのもまた、肝臓の重要な働きの1つなのです。

肝臓が元気に働いているときには、アンモニアを尿素に変える仕組み(尿素サイクルといいます) がスムーズに働き、できた尿素は腎臓に送られて尿の中に排出されます。さて、尿素サイクルが肝臓内でスムーズに行われるために、欠かせない栄養成分があります。それは、アミノ酸の一種、アルギニンです。

アルギニンはアンモニアを尿素に変えるときに必要な、いわば潤滑油であると考えるとよいでしょう。アルギニンが不足すると、アンモニアは尿素に変換されないため、肝臓にたまりだし、肝臓を害して、冒頭でお話ししたような症状を引き起こすのです。

つまり、肝臓をいたわり、十分に働いてもらうためには、アルギニンが必要不可欠なのです。特に酒好きの人は、酒量を守り、休肝日を設ける「2週間の禁酒が脂肪値を半分に」と同時にアルギニンの補給のために、これをたっぷり含んだ食品を積極的にとりたいものです。

食品100g中のアルギニン含有量

  • 精白米(550mg)
  • 落花生 乾(3200mg)
  • 大豆 乾(2800mg)
  • あじ 生(1100mg)
  • 本まぐろ 赤身(1500mg)
  • さわら 生(1300mg)
  • 和牛・サーロイン 脂身なし(1200mg)
  • 若鶏胸肉(1500mg)
  • 豚ロース肉(1300mg)

落花生がダントツでアルギニン含有量が多いのはピーナッツバターは肝臓にグッド!でも紹介されているとおりです。

アルコールは体内に吸収されると、ほとんどが肝臓で分解されます。このため酒飲みはふだんから肝臓の働きを強化させる栄養素を十分にとって、アルコールがスムーズに処理されるようにしておく必要があります。特にお酒を飲む機会が多く月に4回以上接待や飲み会がある人は要注意です。

そんな栄養素の中で、とりわけ不足しないように心がけたいのが、必須アミノ酸の一種であるメチオニンです。必須アミノ酸とは、人間の体で合成することができないため、必ず食物から摂一取しなくてはならない8種類のアミノ酸をさします。なぜ特にメチオニンが必要かというと、アルコールが肝臓で分解されるとき、直接その働きを行う酵素の主な原料になるのがメチオニンだからです。

肝臓にメチオニンが不足していると、アルコールの分解がスムーズに行われません。実際、二日酔いの薬には必ずメチオニンが入っているほどです。おまけにメチオニンは、アルコールが分解されきれずに脂肪となったものを、皮下の脂肪組織に運ぶ役目をも果たしているので、脂肪肝を防ぐうえでも特に欠かせないアミノ酸といえます。

ところで肝臓では、全身の細胞をつくるのはもとより、肝臓そのものをつくるタンパク質をも合成しています。よく肝臓の機能が低下するといいますが、これは、このようなタンパク質の合成能力の低下といいかえてもいいでしょう。

実は、メチオニンはこの働きを正常に保つうえでも欠かせない存在なのです。このように、肝臓が正常な働きをするうえでいかにメチオニンが重要な役割を果たすか、よくおわかりいただけたことと思います。事実、肝臓をおかされた患者さんの血中濃度をはかってみると、メチオニンが著しく減っていることがわかっていますし、障害が強いほどその減り方はひどくなっているものです。

そして、こうした人にメチオニンを補給しっづけると、肝機能がどんどん回復することも確認されています。メチオニンは毎日の食事から手軽に肘摂取できますので、酒飲みを自認するかたは日ごろからしっかり補給しておきたいものです。メチオニンは鶏肉、牛肉、豚肉などの肉類や卵に多く含まれます。

真っ白になった脂肪肝の肝臓も「しじみ」で元気いっぱいに!リアルメイトのしじみエキスW(ダブル)のオルニチン

野菜の中にも、肝臓を守ってくれるものが幾つかあります。その1つは、かぼちゃです。昔から冬至にかぼちゃを食べる習慣がありますが、昔の人たちも寒くてお酒の進む時節にかぼちゃが疲れた肝臓をいやすということを知っていたのかもしれません。

かぼちゃは緑黄色野菜の代表選手です。ビタミンA効力を持つカロチンが非常に豊富なうえ、ビタミンEも多く、C も含まれています。ビタミンAは欠乏するとガンが起こることがあるともいわれ、ビタミンCとともにガン抑制に役立つと考えられる重要なビタミンです。

カボチャのビタミンE含有量は野菜の中ではトップクラスですが、このEとβカロチンは、ガンをはじめとする万病の一因される活性酸素除去する作用に優れています。ちなみに「わた」の部分にはカロチン含有量が果肉の5倍もあります。煮物やスープなどに入れて大いに活用するのがおすすめです。また、「わた」と同様に捨ててしまいがちな種子ですが、漢方では「南瓜仁」と言われて、回虫やギョウ虫の駆除薬として古くから使われてきた歴史があります。

肝臓病になると特にビタミンAは不足がちになるので、積極的に摂取する必要があります。そしてビタミンEとCには、肝細胞の膜を傷つける過酸化脂質の生成を防いだり、できてしまったものを分解したりする働きがあります。

ビタミンEは、肝臓病や動脈硬化の治療にも使われています。肝臓にとって、A 、C 、E はまさにエースのビタミンです。肝臓が気になり始めた中年世代の人は、かぼちゃ料理のバリエーションを工夫して、もっと食卓にのせる回数をふやしたいものです。なお、かぼちゃのビタミンA は、油で調理すると5倍以上も有効に働くので、植物油でじょうずに料理するのがポイントです。

かぼちゃとシジミが肝臓には必要。

ビタミンA にも肝臓を守る作用があります。特にビタミンAに前の物質であるβ-カロチンには、肝障害の原因となる活性酸素を抑える働きがあります。そのうえビタミンAは、肝臓ガンを防ぐ働きをも持っています。Aが働くのは主に目や皮膚の細胞ですが、貯蔵されるのは肝臓です。

アルコールによる肝障害が進行して肝細胞の数が減ってくると、Aの貯蔵場所も少なくなります。そこで、Aも十分補給してやらなくてはなりません。ビタミンAは、レバーやうなぎ、卵黄、バター、牛乳などのほか、β-カロチンとして、色の濃い野菜、たとえばほうれんそうやブロッコリー、にんじんなどに豊富に含まれています。

なお、急性肝炎のときには、β-カロチンは十分にとってもかまいませんが、ビタミンA は補う程度にしてとりすぎないようにします。

ビタミンB群やビタミンC に加え、肝臓にとって強力な助っ人となってくれるビタミンがあります。その助っ人の名は、ビタミンE。アルコールの分解工場である肝臓を保護する作用を発揮します。

なぜ、ビタミンEが肝臓を守ってくれるのでしょう。まず、ビタミンEには抗酸化作用があることがあげられます。すなわち、肝細胞の膜を傷つける過酸化脂質ができるのを防いでくれる働きです。過酸化脂質とは、脂肪を構成している成分の一種である不飽和脂肪酸が酸化されてできる物質で、細胞膜を傷つけ、その働きを低下させるため、量がふえれば肝細胞も障害を受けます。ところがビタミンEをとると、その抗酸化作用をフルに発揮して、過酸化脂質ができるのを防いでくれるのです。

ビタミンE にはもう1つ、脂肪の代謝を高める作用もあります。脂肪の代謝がうまく.いかないと、肝臓には処理しきれない脂肪がたまって、脂肪肝を引き起こす原因にもなりかねません。

事実、脂脂肪肝の人たちの血液を調べてみると、ビタミンEが減少していることがわかります。

このようにビタミンEが不足すると、体内に過酸化脂質がふえて肝細胞も障害を受けやすくなり、しかも脂肪肝を起こしやすくなるのです。

ところで最近、薬剤性肝障害と呼ばれる問題が大きくクローズアップされてきています。抗生物質、血圧降下薬、鎮痛消炎薬、便秘薬、抗結核薬などの薬のうち、ある種のものは人によって肝障害を起こすことがあるのです。この薬剤性肝障害には先ほどの過酸化脂質が関係していることは、いまではもう学会の定説となっています。

実際、障害のある患者さんの血液を調べてみると過酸化脂質が多く、障害が改善されるとそれが少なくなってきます。ネズミを使った実験でも、ビタミンE が不足したネズミに肝障害を起こす薬を与えていると肝障害を起こし、一方その薬を与えてもEをいっしょに飲ませると過酸化脂質がふえないことが確かめられています。いいかえれば、薬を飲むときには、ビタミンE をいっしょに服用すると肝障害を未然に防ぐことができるというわけです。

さて、では肝臓保護のためにはどれくらいの量のビタミンEをとればよいのでしょうか。よく1日に8~10 mg程度がビタミンE の最低必要量といわれます。しかし、これは必要にして十分な量というにはほど遠い量で、少なくとも3けた、つまり100mg以上はとらなければ期待するほどの効果は望めません。ビタミンEはとりすぎても過剰症の心配はありませんから、お酒を飲む機会が多い年末年始などは、1日謝300~600mgはとって肝臓をガッチリとガードしたいものです。

抗酸化作用の定番ビタミン

ビタミンB群とともに、酒飲みの心強い味方となってくれるのがビタミンCです。お酒を飲むと、吸収されたアルコールは肝臓に行きます。肝臓でのアルコール処理能力は、1時間に8~10g程度。日本酒に換算するとコップ土2杯、ビールならコップ1杯程度です。

これを超える量を飲んだ場合、余分なアルコールは血液中に残ってしまいます。さて肝臓へと行き着いたアルコールは、すぐに分解され始めます。アルコールはまずアルコール脱水素酵素によっていったんアセトアルデヒドという物質になり、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素によって水と炭酸ガスにまで分解されます。

1本数十万円の高級ブランデーも、行く末はただの水と炭酸ガスになって排泄されてしまうというわけです。しかし、ここで問題なのは、先ほどのアセトアルデヒドが私たちの体に有害な物質であるということです。というのも、この物質は毒性が強く、血液中に残っていると頭痛や吐きけなどの二日酔い症状を引き起こすからです。

こんな二日酔いを避けるには、いうまでもなく、このアセトアルデヒドをすばやく処理することがいちばんです。ビタミンCが効力を発揮してくれるのはまさにこの段階です。

というのも、ビタミンCには先ほどふれた二つの分解酵素の働きを高める作用があり、アルコールの分解排泄を強力に推し進めてくれるからです。つまり、アルコールの分解が滞るためにできる有害物質が肝臓に害毒を与えたり、悪酔いや二日酔いを起こしたりする危険を、かなり防止してくれるのです。

肝臓にはまた、チトクロムP450と呼ばれる酵素が含まれています。この酵素もやはり肝臓の解毒作用に重要な働きを持っています。ビタミンCはこの酵素の働きを高めることが知られています。この点でも、ビタミンCは肝臓の解毒作用に大きく寄与しているわけです。

そのうえCには、二日酔いのもう1つの原因物質であると考えられるフーゼル油(風味を高めるために酒に添加される物質) の分解を早めるという効果もあります。さらには、食べ物に含まれる食品添加物などの毒物や、アスピリンなどの薬物の無毒化( つまり副作用の防止) のためにも、ビタミンC は有効に働きます。

このようなビタミンCのすぐれた効果を得るためには、お酒を飲む前に3g、飲み終わったあとに3gのビタミンC をとることがおすすめです。これだけとっておけば、悪酔いはもちろん、二日酔いをすることは少ないでしょう。しかも、飲酒前にC をとっておくと、アルコールの分解が早まり、あまり酔わなくなります。ただし、そのためにかえって飲みすぎてしまうおそれもあるので、量を過ごさぬようくれぐれも気をつけてください。

ビタミンCについてはこちら。

ビタミンCは柑橘類やパイナップル、イチゴ、キウイなどのフルーツや、ブロッコリーやピーマンなどに多く含まれています。

肝臓には欠かせない特効成分「コリン」

コリンはビタミンB群の仲間なのですが普通の食事をしている限り欠乏症になることはないため、ビタミンとは呼ばず、「ビタミン様物質」と呼んでいます。このコリン、酒量の多い人には、とても頼もしいビタミンです。コリンには、脂肪肝を防ぐ働きがあるからです。

脂肪肝とは、肝細胞の中に多量の脂肪がたまることをいいます。これは、アルコールの飲みすぎや脂肪の多い食品のとりすぎによって起こる病気ですが、コリンが不足しても起こるのです。というのは、アルコールや脂肪が肝臓で代謝されるときに、コリンが十分ないと、それが円滑に行われないからです。

いわば不完全燃焼を起こすようなもので、そのため使いきれない脂肪が肝臓にたまると考えてよいでしょう。このことはすでに、マウスを使った実験でも証明されています。マウスに低タンパク低コリンのえさと水にアルコールをまぜたものを与えると、脂肪肝になってしまいます。ところが、脂肪肝になったネズミにコリンを多量に与えると、肝細胞が正常に戻ることが実証されています。

コリンは人間の体内でもある程度はつくることができます。しかし、脂肪肝になるほど多量のお酒を飲む人には、食品からも積極的にとる必要があります。コリンは、ピーナッツ、枝豆、大豆などの豆類、レバー、卵などにたくさん含まれています。ちなみに大豆の場合は、100g中に2255mgものコリンが含まれます。

また牛のレバーには、牛肉と比較すると約4倍ものコリンが含まれています。コリンは水にとけやすい性質がありますが、枝豆をゆでる程度なら問題ありません。熱には強いので、大豆などはゆで汁や煮汁ごと食べるようにすると十分に摂取できます。幸いなことに、これらコリンを多く含む食品は、酒の肴に最適なものばかり。お酒を飲むときには、ぜひ一品とり入れると肝臓にいいでしょう。

ピーナッツ、アーモンドなどのナッツ類は酒飲みにおすすめの酒の肴

肝臓のスムーズな代謝にはビタミンB1が必要

肝臓の働きにとってたいせつなのは、タンパク質だけではありません。各種ビタミンも欠かすことのできない栄養素です。

肝臓では、たとえばデンプンをブドウ糖につくりかえるなど、栄養素のつくりかえ作業や新しい物質の合成、また不要な物質の分解・解毒などを行っています。それらは主に酵素の働きによるもので、ビタミンは、その酵素の働きになくてはならない存在なのです。

このため、肝臓に何か障害があると、たとえば体内でのビタミンの合成などはうまく行われません。ビタミンの中でも、とりわけ肝臓と深い関係にあるのは、B群ビタミンです。これは、B1、B2、、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などをさします。

これらのB群は、体内の代謝をスムーズにし、糖質や脂質、タンパク質などをエネルギー源に変えるのに欠かせないビタミンです。そして体の中では、肝臓の細胞のミトコンドリアという小器官に多く含まれています。ビタミンB群が不足すると、肝細胞の機能はたちまち低下し、代謝障害を起こして、だるさや食欲不振といった症状があらわれてきます。

逆に、お酒の飲みすぎなどで肝臓に障害が起きると、多くの場合、ビタミンB群欠乏症が同時に進行します。

最近、アルコール飲料の需要は増加の一途ですが、アルコールの害とビタミンB群の関係については次のような実証例があります。

毎日5合以上のお酒を飲む120人を調べたところ、約6割がアルコール性肝硬変や肝炎、脂肪肝など、なんらかの肝臓障害がありました。そして、血液中のビタミン濃度を調べてみると、潜在的なビタミンB群欠乏症の人が非常に多いという結果が出たのです。

では、なぜアルコールによる肝機能障害のある人に、ビタミンB群欠乏症が多く起こるのでしょうか。ビタミンB群はすべて小腸で吸収されて、肝臓でビタミンとして働くようになります。ところがアルコールをとりすぎると、腸粘膜に障害が起こり、まずこの吸収が妨げられるのです。そして第二に、たとえ小腸でなんとかビタミンB群が吸収されても、肝臓の機能が落ちていると、せっかくのビタミンB群も働くことができないのです。ビタミンB群が働かなければ、肝臓の細胞に影響して、B群の欠乏はいっそうひどくなります。

その結果、この悪循環がどんどん広がっていくというわけです。これでビタミンB群の肝臓にとって必須ビタミンなのです。

実際、アルコール性肝炎や脂肪肝などの治療では、ビタミンB群を大量に補給する方法がとられています。代謝のかなめである肝機能の乱れを修復するには、どうしてもB群が必要なのです。酒飲みを自認しているかたは、日ごろからビタミンB群不足に陥らないよう食生活に注意を払い、お酒のおつまみにもB群を多く含む食品をたっぷりとるように心がけましょぅ。

玄米菜食は現代人に不足しがちなビタミンB群がしっかり摂れる

私たちの体に欠かせない栄養素には、タンパク質、炭水化物(糖質)、脂肪、ビタミン、ミネラルなどがあります。中でも肝臓を強くするのにいちばんたいせつな栄養素はなんといってもタンパク質です。なぜタンパク質がそんなにたいせつかというと、タンパク質は主に次のような重要な働きを持っているからです。

酵素をつくる材料になる

肝臓は、食べ物からとったいろいろな栄養素を体内で利用したり蓄えたりするために、用途に応じてつくりかえる働き(代謝) をしています。

また有害な物質を分解して無害な物質につくりかえる仕事(蟹噂) も行っています。ところが、このような肝臓の仕事を請け負っているのが、タンパク質からできている数多くの酵素であるため、タンパク質が十分にないと肝臓の機能を正常に保つことができないのです。

お酒を飲む人は、アルコールを分解するために多くの酵素が必要ですから、その分よけいにタンパク質を補給しなければなりノません。

肝細胞の修復に必要

アルコールを多量に飲むと、肝臓の細胞が壊されます。肝臓は、細胞が壊されてもすぐに細胞がふえて元に戻るという不思議な臓器ですが、細胞自体はタンパク質が主材料となって構成されているため、肝細胞の破壊と修復を繰り返している人は、タンパク質がたくさん必要です。

かつては、肝臓病になったら低脂肪、低タンパクの食事にしなければならないといわれていた時期もありました。しかし、タンパク質には以上のような役割があることがわかり、いまでは肝臓障害で肝細胞が壊されている人の治療には高タンパクの食事が与えられるようになっています。

ところで、食べ物からとったタンパク質は、そのままの形で体内で利用されるわけではありません。タンパク質は腸から吸収されるときにアミノ酸という物質に分解され、肝臓でアルブミンをはじめとするさまざまなタンパク質に組みかえられます。というのも、肉や魚のタンパク質はそれぞれ特有のアミノ酸の組み合わせから成り立っていますが、私たちは人間ですから独自のアミノ酸の組み合わせによって人間特有のタンパク質がつくられるのです。

さて、このタンパク質は、人体のほとんどの器官に使われ、肝臓自体もタンパク質からできています。しかし、肝臓の機能が低下するとタンパク質をつくることができず、体の中でそれが減少してしまいます。そこで肝臓の働きを強くして、タンパク質を積極的につくらせるよう栄養を補給してやらなければなりません。

では、どのような食品を食べて栄養を補給すれぼいいのでしょうか。肝臓がアミノ酸からタンパク質をつくるとき、すべての種類のアミノ酸が欠かせません。一部のアミノ酸は体の中で合成できますが、ほかに体内では合成できず、どうしても食べ物からとらなければならないアミノ酸もあります。これを必須アミノ酸といい、8種類あります。

つまり、人間に必要なタンパク質を得るためには、これらの必須アミノ酸を必要十分に含んだタンパク質をとることが望まれます。必須アミノ酸をバランスよく含んでいる食品かどうか、それをはかる尺度にアミノ酸価があります。最も産想的なのは、アミノ酸価が畑かそれに近い価を示すもので、畑に該当する食品は卵や牛乳、肉類などです。

体重60kgの男性で1日74.4gのタンパク質が必要としていますが、肝臓を強化するためには下の表に示したタンパク質量を目標としてください。そしてそのうち5割くらいは、動物性タンパク質にするのが理想的です。

年齢体重(kg)エネルギー(kcal/日)タンパク質(g/日)動物タンパク質(g/日)
30~39歳5520809455
60228010260
65248011165
40~49歳5520008550
6021609354
65236010159

50~59歳

5518807744
6020408448
6522009152
60歳~5016006335
5517606939
6019207542

現在、肝臓病の治療の柱となっているのは、食事療法です。治療というと、い浮かぶのは薬ですが、肝臓病に限っては、薬物療法が中心にはなりません。なぜなら、薬という異物を代謝(体内にとり込んだある物質を他の物質に変化させること) するのも肝臓の役目の1つだからです。

薬はカゼ薬であれ、胃腸薬であれ、いったん肝臓で代謝され、それが全身に運ばれてはじめて薬としての効果をあらわします。しかし、肝臓に障害があるということは、すでに肝臓が弱っていて、本来の働きさえおぼつかなくなっているということです。

体を維持するための栄養代謝や解毒作用だけでフーフーいっているところへ薬を送り込めば、肝臓はさらに無理を重ねなければなりません。しかも、人体にとっては、薬物もいわば「毒」の1つです。そんなわけで、肝臓病の場合はむやみに薬を使用できないのです。

結局、現在のところ、食事療法にまさる療法は開発されていません。この食事療法とは「高タンパク・高ビタミン・適正カロリー」食をとることです。実をいうと、ひと昔前までは、肝臓病の食事療法では「高タンパク・高カロリー」食がすすめられていました。しかし、最近の日本人の食生活を見ていると、明らかにカロリーのとりすぎが目立ちます。

現に、肝臓病が肥満や脂肪肝から起こるケースもふえており、糖尿病との合併も見られます。したがって、あえて高カロリー食を心がける必要はありません。それよりも良質のタンパク質とビタミン類をたっぷりとり、カロリーオーバーにならない食生活が望まれます。

基本的には、栄養のバランスのとれた食事が第一です。そして、このことは肝臓病の人のみならず、肝臓の健康を心がける人にもそのままあてはまります。肝臓に不安のある人は、次の点に留意して、食事面から肝臓の強化をはかりましょう。

シジミを飲む前に疲れた肝臓を元気にする、より強化するのは食事療法なのです。

  • 1日の必要エネルギー(=カロリー)を過不足なくとる
  • 良質のタンパク質をと
  • ビタミン類をたっぷりとる
  • 食物繊維をしっかり摂る
  • 食事は規則正しく3回摂る